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【保存版】死亡労災事故等が起こったときに担当者がやるべきこと
お通夜・告別式、弔問、事実関係の説明、資料の交付、労災申請等

弁護士

岡 正俊(狩野・岡・向井法律事務所)

7. 事実関係の説明、資料の交付

(1)事実関係を説明する際の注意点

遺族が、なぜこんなことになったのか知りたいと思っている場合は、遺族から事故状況や亡くなった従業員の死亡前の勤務の様子等について説明を求められることも多いです。会社からの説明が不十分、曖昧だったり、変遷したりすると、遺族は会社に不信感を持ったり、感情的になってしまったりして、こじれてしまうこともあります。

一方で、よく調査したにもかかわらず事実関係が不明な点について、遺族に十分説明しようとするあまり、会社側の推測を交えて伝えることはよくありません。推測ではあっても、それは会社から報告を受けた内容に変わりはありませんし、それが一人歩きして誤解される危険性もあります。

また、事実ではない評価的な内容もできる限り避けるべきだと思います。評価的な記載は、それを見る人によって評価が変わる場合もあります。可能な限り、評価的な記載はなくし、事実を客観的に記載するべきだと思います。

(2)事故報告書について

前述の通り、死亡労災事故があった場合、社内で事故報告書が作成されるのが通常だと思いますが、遺族に対して事故報告書そのものを見せなければならないわけではありません。ただし、労働基準監督署に提出した資料として、文書送付嘱託の申立て等により、裁判所に証拠資料として提出されることはあります。事故報告書には、事故状況、事故の人的要因・物的要因・管理的要因、再発防止策といった記載がなされるのが通常だと思います。

事故報告書は、会社として事故の原因を突きつめて検討し、二度と同じような災害が発生しないために作成するものですから、被災者のみに責任があったかのような事故報告書では意味がありません。遺族側から、事故報告書の記載をもとに、会社側も落ち度があったことを認めている、はじめから再発防止策をとっていれば事故は起こらなかった、それを怠っていたのは会社の安全配慮義務違反だと主張されることがありますが、そのような場合は上記のような事故報告書の趣旨を説明して反論しています。

トラブルケース(3)

以前に説明した事故当時の状況について、遺族から再度説明を求められたので、説明したところ、「どうして今まで説明してくれなかったのか?」と言われた。

⇒ 遺族は家族を亡くしたショックで、精神的に不安定になっている場合もあります。言った、言わないの話にならないように、文書で伝えたり、同じことを聞かれても丁寧に答えるといった対応が必要だと思います。

(3)労働時間に関する資料について

(3)労働時間に関する資料について【保存版】死亡労災事故等が起こったときに担当者がやるべきこと

過労死・過労自殺の場合には、タイムカード等の労働時間に関係する資料の提示を求められることがあります。このような場合には遺族が弁護士等に相談している可能性が高いと思いますので、弁護士との交渉案件になること等を想定した対応が必要になってきます。

過労死・過労自殺では、業務との因果関係の判断において、労働時間が非常に大きな位置を占めています。その意味でどのような資料に基づいて労働時間を認定するかも大きな問題です。この点は残業代請求事件と似たような面があります。

タイムカードは出退勤の事実やその時刻を示すものであり、労働時間を示すものではないとされている会社も多いと思います。日報や自己申告書等がある場合、会社内ではそれらの記載に基づいて労働時間を管理している場合もあると思います。

いずれにしても、会社が、残業代計算の基礎として労働時間管理に使っている資料を交付することになります。そのほかにタイムカードを要求された場合は、労働時間を示すものではない旨断ったうえで交付したほうが良いのではないかと思います。確かに労働時間と誤解される危険もありますが、交付しないと不信感を与えることになり、それによる感情的なもつれのほうが事態を悪化させてしまうと思います。労働時間の解釈で争いが解消できないようであれば、弁護士同士の交渉に委ねたほうが良いと思います。

8. お金の話をするべきか? そのタイミング、金額は?

(1)労災事故による死亡の場合

労災事故による場合は、会社に何らかの責任が認められることが多いと思いますので、会社から金銭支払いの提示をするべきだと思います。そのタイミングですが、あまり早すぎても「今はお金のことなど考えられない」ということになるでしょうし、遅すぎても「会社は何もしてくれない」ということになってしまいます。一般には、四十九日の法要かこれを過ぎてから月命日等で弔問した際、話をするのが自然かと思います。会社に労災の上積補償規程があったり、任意保険に加入していたりする場合は、これに基づく金額を伝えることになると思いますので、比較的話はしやすいでしょう。

(1)労災事故による死亡の場合【保存版】死亡労災事故等が起こったときに担当者がやるべきこと

そのような規程がない場合や任意保険に加入していない場合はどうでしょうか。

労災における会社の損害賠償額の計算については、基本的な計算式があるので、裁判になった場合や弁護士が代理人についた場合はこれによることが多いです。

したがって、会社としても、そのことも一応頭に置きつつ(MAXとしてはそのくらいもあり得ることを考えて)、会社として現実的に支払可能な金額、本人側の過失の程度、労災からの支給の見込み等を考慮して考えることになります。具体的な金額というと非常に難しいですが、労災の上積補償ですと、大手企業の場合、規程において2,000万円から3,000万円程度を支払う旨定めているところが多いのではないかと思います。

トラブルケース(4)

任意保険に加入していたので、保険金相当の金額を遺族に提示し、回答を待っていたところ、弁護士から内容証明が届いた。

⇒ 会社がどのくらいの金額を提示したら良いかわからないのと同様に、遺族もどのくらいの金額が妥当なのかわからないものです。そこで弁護士に相談し、弁護士から「裁判ではもっと高い金額が認められる」などと聞き、弁護士に依頼することもあるようです。また、高額の損害賠償請求が認められた判決や和解についてのニュースを見たり、インターネット上の情報を見たりして、会社から提示された金額が低いと感じることもあるようです。これは仕方ないことですので、弁護士間の交渉に委ねることになります。

(2)過労死・過労自殺の場合

これに対して、過労死・過労自殺といわれるケースの場合は、業務による死亡かどうかがわからないことが多く、会社のほうから金銭支払いの話はしないことが多いと思います(後述の通り、労災申請に際して一定の金銭の支払いを提示したり、会社には請求しない旨の合意を交わすことはあり得ます)。

遺族のほうから金銭の支払いを求めてきた場合はどうでしょうか。亡くなった従業員の労働時間から考えて、訴訟等になった場合には業務との間の因果関係が認められることが明らかなケースでは、会社の支払能力の範囲で一定の金銭の支払いを提示し、解決する方向で話を進めたほうが良いと思います。

トラブルケース(5)

過労死が問題になり得るケースであったが、遺族から特に金銭支払いについての話がなかったところ、突然弁護士から内容証明が届いた。

⇒ 遺族が会社に対して金銭の支払いを求める発言をしていなかった場合でも、亡くなった従業員が、生前、仕事がきつい、上司から厳しく言われるといった愚痴をこぼしていたり、毎晩帰りが遅かったといった事情があった場合や、親戚や友人等から、労災ではないかといった話を聞いたりした場合に、弁護士に相談に行くことはあり得ることです。このような場合も弁護士間の交渉に委ねることになります。

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