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あの仕事の「ヒト」と「カネ」

【裁判官】
常に謙虚に学び、自身の良心に従って判断
憲法で独立性が保証されている孤高の仕事

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全国各地の裁判所において裁判を担当し、口頭弁論や証拠調べを経て判決や決定を言い渡す、裁判官。平成21年に裁判員制度がスタートしてから8年が経過し、以前に比べて、裁判官という仕事はより身近なものになった。最近は時代を反映した医療事故や労働裁判、サイバー犯罪など、高度で複雑な事案も増えており、裁判官はこれまで以上に学びが求められる仕事となっている。その実態はどのようなものだろうか。

裁判員経験者のアンケートでは「よい経験と感じた」が95.6%

平成21年5月に裁判員制度がスタートしたことをきっかけに、裁判官の仕事に関心を持つようになった人も多いだろう。裁判員制度とは刑事裁判に国民から選ばれた裁判員が参加し、裁判官とともに判決に加わる制度のこと。開始からこれまでに、5万人を超える人が選ばれている。年齢は20代から70代まで、職業は会社員、パート・アルバイト、専業主婦・主夫、自営・自由業、学生と幅広い。

では、実際に裁判員を体験した人たちはどのように感じているのだろうか。平成28年12月末までの実施状況について、裁判員経験者にアンケート調査が行われている。「審理はわかりやすいか。専門知識がなくても理解できるか」という質問では、63.6%の人が「わかりやすかった」と回答。「充実した評議ができるか」という質問では73.3%の人が「十分に議論ができた」と答えている。裁判員として裁判に参加した感想の質問では「非常によい経験と感じた」56.8%、「よい経験と感じた」38.8%であり、計95.6%もの人がよい経験をしたと回答した。仕事の体験が今後何らかのプラスになる、ととらえられていることがわかる。

経験者の声では「裁判の流れが理解でき、裁判が身近なものに感じられた」「裁判の仕組みが少しわかったし、これからはこれまでとちがった視点でテレビや新聞などの事件を見ることができると思う」といった声が聞かれた。裁判官という仕事は専門性が高く、高度な知識が必要だが、裁判において判断をする視点は国民一人ひとりの目線と変わるものではない。自身の良心に従った判断によって行われていることを、多くの人が実感したようである。

人の間に立ち、言い分をよく聞き、中立公正な立場で判断

裁判官の職場となる裁判所は司法の最高機関である最高裁判所を筆頭に、高等裁判所(全国8ヵ所)、地方裁判所(全国50カ所)、家庭裁判所、簡易裁判所が設置されており、支部までいれると相当な数がある。現在、裁判官は最高裁判所を含む全国598ヵ所の裁判所に3008人(簡易裁判所判事を除く)が配置されている。

裁判官の種類は最高裁長官、最高裁判事、高裁長官、判事、判事補、簡裁判事の6種類。最初に裁判官として任官されてから10年未満は判事補となる。判事補は三人の裁判官による合議事件に加わることができるが、裁判長になることはできず、単独での審理はできない。裁判官として10年を過ぎると判事となり、裁判長を務めることができるようになる。

裁判は大きく分けると、民事裁判と刑事裁判がある。民事裁判は、誰かが自分とした約束を守ってくれないといった場合や、誰かがわざと(故意)または不注意(過失)によって自分に損害を生じさせた場合など、何らかの理由で相手を訴え、その約束を守らせたり損害を賠償させたりするものだ。刑事裁判は、法律に反して罪を犯した人が検察官に起訴された被告人について、検察官から出された証拠を調べ、被告人やその弁護人の言い分や証拠を調べて、被告人が罪を犯したのかを判断する。裁判官は民事裁判でも刑事裁判でも、裁判を起こした人(原告や検察官)と裁判を起こされた人(被告や被告人)の間に立ち、双方の言い分をよく聞いて、法律に従って中立公正な立場で判断することが求められる。

裁判官 イメージ

司法の最高機関「最高裁判所」。人を裁く重責を担う裁判官には、深い知見と公正な判断力が求められる。

裁判官という仕事は、その独立性が保証されている点に大きな特徴がある。憲法76条3項には「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法および法律にのみ拘束される」と定められている。そのため、原告側に有利な判決をしなければ減給される、裁判官を辞めさせられる、などといった脅迫を受けることはない。行政機関などからも政治的な圧力を受けないように、心身の故障のために職務を執ることができないなど、一定の場合でなければ罷免されない。これにより裁判官は自身の良心に基づいて、法律などに照らし合わせながら個々で自由に判断することができる。

給与は高給だが、業務量も一人当たり月間15~30件とハード

裁判官になるには、難関といわれる司法試験に合格する必要がある。この受験資格を得るためには二つの方法がある。一つは法科大学院に合格し、そこで2年(既修)または3年(未修)の勉強を経て修了すること。もう一つは、予備試験と呼ばれる試験に合格することだ。予備試験とは、法科大学院修了者と同等の学識およびその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する試験だ。

難関の司法試験を突破しても、一人前の裁判官になるための道は長く険しい。司法試験合格後、まずは司法修習生として1年間の法律実務研修を受けた後、「二回試験」と呼ばれる国家試験に合格して法曹資格を得た者が、裁判官・検察官・弁護士のいずれかの道に進むことを許される。中でも裁判官に任命されるのは成績・人物ともに優れた者に限られ、非常に狭き門となっている。ようやく判事補としてキャリアをスタートした後は、約10年をかけて、一人前の裁判官である判事を目指して経験を積んでいく。

もちろん、裁判官に任官されても「学び」は続く。裁判官の仕事は民事、刑事、知的財産など幅広く、内容も多岐にわたるため、時代に応じて、技術革新や社会システムの変化など最新の情報を知っていなければならない。裁判にいたるような事案には複雑な内容が多いため、適正な判断ができるように、生涯にわたって学び続けることが求められるのだ。

裁判官 イメージ

裁判官を拘束するのは憲法と法律のみ。良心に従い、独立して職務にあたることを保証されている。

では、裁判官という仕事ではどの程度の給与がもらえるのか。新任判事補は手当を含めて年収約600万円。任官から10年を経過すると判事に昇格するが、この時点で年収1000万円を超える。一律昇格は18年目までとなるが、この時点で年収は約1700万円。この先は出世次第となるが、裁判官の最高位である最高裁長官は総理大臣や日銀総裁と同程度の年収で、約4000万円となっている。一般からみれば高給と思える金額だが、裁判官一人あたりの事件数は年間200~350件。大変ハードな仕事であることがわかるだろう。


一方で裁判官には、何物にも換え難い大きな「やりがい」もある。裁判所は困っている人にとって最後の砦であり、裁判官は互いの言い分を聞き出して適正な判断をし、困っている人を助ける、という重要なポジションにある。また、裁判での判決は判例として残るため、その後、大きな影響を持つこともある。多くの裁判官が、「矜持」を持って自分の仕事に臨んでいるのだ。

この仕事のポイント
やりがい 独立が保証されているため、自らの良心にのっとって、困難な事案を解決に導くことができる。困っている人に寄り添い、その生活を守ることができる。
就く方法 法科大学院の修了もしくは予備試験合格の上、難関の司法試験をパスした後、司法修習と考課試験合格を経て選ばれた者のみが判事補に任命される。一人前の裁判官である判事となるにはさらに10年を要する。
必要な適性・能力 深く広い知見を有することに加え、責任感の強さと公平さは欠かせない。複雑化する事案への対応と適正な判断のために、常に最新の情報収集と勉強も必須である。
収入 新任判事補の年収は約600万円。判事に昇格すると1000万円を超える。最高裁長官ともなると年収は約4000万円と総理大臣や日銀総裁と同程度だが、業務は質・量ともにかなりハードである。

 


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