業務中の「私語」が多い従業員にはどう対応すべきか
業務中の適度な雑談は職場の雰囲気を和らげる効果がありますが、業務とは関係がない会話が長時間続くと、業務の遅れや生産性の低下につながる可能性があります。そのため、必要に応じて注意・指導を行わなければなりません。しかし、厳しく取り締まると、従業員のモチベーションが低下し、逆効果になる恐れもあります。業務に影響を及ぼす「私語」にどのように対応すべきか、解説します。

業務中の「私語」をどう捉えればよいか
労働契約には「職場専念義務」があり、業務と関係のない行為は控える必要があります。原則として、私語は業務に不要なものとされ、業務に支障をきたす場合は管理者が適切に対処しなければなりません。一方で、業務を円滑に進めるためのコミュニケーションは不可欠です。完全に私語を禁止すると、職場の雰囲気が悪化し、従業員のストレスや不満が蓄積する可能性もあります。そのため、適切なバランスを考えながら対応することが重要です。
私語が多い従業員への基本的な対応
管理者が従業員を注意する場合、以下のようなケースで対応するのが望ましいでしょう。
- 業務が遅れる、またはおろそかになる場合
- 業務時間中にもかかわらず、私語ばかりでサボっている状態が続く場合
- 他の従業員の業務を妨げるほどの騒がしさがある場合
注意をしても改善が見られない場合は、戒告やけん責処分といった懲戒処分を検討することもあります。しかし、過度な指導は従業員の不満を生む原因にもなり得るため、慎重に対応することが求められます。
私語が多い背景には職場や組織上の問題があることも
私語が多い背景には、単に従業員の態度の問題だけではなく、職場環境や業務の進め方に問題があるケースも少なくありません。例えば、以下のような要因が影響している可能性があります。
- 管理者からの指示が不明確で、効率的に業務を進められない
- 仕事の性質上、待機時間が多く発生する
- 業務の分担や協力体制が整っていない
- 管理者の言動が従業員のやる気を削ぐものになっている
こうした要因を無視して注意・指導を行うと、従業員のモチベーションが下がり、逆効果になる恐れがあります。私語が増えている背景を分析し、必要に応じて職場環境の改善に取り組むことが重要です。
「私語」が多い従業員に対する注意・指導の考え方
私語を減らすためには、指導の仕方も重要です。いきなり叱責するのではなく、以下のポイントを意識して対応します。
- 具体的な理由を伝える:「私語を控えてください」ではなく、「業務に支障が出ているので、業務中の会話は必要最小限にしてください」などと伝える
- 職場のルールを明確にする:就業規則の服務規定などをもとに、業務時間中の私語に関するルールを周知する
- 段階的な対応を行う:最初は注意喚起に留め、それでも改善されない場合は、より厳格な指導を行ったり、人事評価に反映させたりする
また、私語が他の従業員の業務を大きく妨げたり、職場の秩序を著しく乱したりする場合は、より厳しい対応が必要です。管理者として適切に指導し、必要であれば懲戒処分の対象とすることも検討します。
従業員同士が私語をしているのを外部から来た顧客が見れば、企業の従業員教育に不信感を抱くかもしれません。特に飲食店や接客が必要な企業では従業員のマナーが大切であり、自社の業種と特性を踏まえて、私語が業務に与える影響を従業員に認識させることが重要です。
「私語」が多すぎる従業員の勤怠管理・評価はどうすればいいか
私語によって業務が進まず、結果として残業が発生した場合、私語をしていた時間を残業時間から差し引くことはできるのでしょうか。私語の時間が、業務から完全に離れた状態で従業員が自由に過ごすことが保障されていて、実質的に休憩時間と認められるような場合は、労働時間に該当しない可能性があります。しかし、現実的には私語を理由に残業時間を差し引くことは困難でしょう。
「私語」が多い従業員には注意・指導からはじめる
私語が多すぎる従業員に注意・指導を行っても改善が見られない場合は、勤務態度や業務の効率性などの点から、人事評価に反映させるのも方法の一つです。就業規則の服務規律に私語を禁止する定めがあったとしても、直ちに懲戒処分とするのではなく、改善する機会を与えるために注意・指導からはじめるとよいでしょう。
業務中に手が空き、やることがないために私語をしている時間は、「業務の指示があればいつでも業務遂行ができる状態」、つまり手待ち時間とも言えます。手待ち時間は、休憩時間ではなく労働時間とみなされます。これは管理者の指示の方法や組織上の問題でもあり、労働時間として適切に賃金を支払わなければ労働基準法違反になるため、注意しなければなりません。
また、注意の仕方には細心の注意を払う必要があります。業務上必要な指導であればパワハラには該当しませんが、伝え方によってはハラスメントと見なされることもあります。従業員からパワハラの相談があった場合は、企業として事実確認を行い、適切な措置を講じる必要があります。
組織的・環境的な対応策
私語が多く、個別の指導では改善が見られない場合は、組織的な対策を講じることも検討します。例えば、以下のような対応が考えられます。
- 座席の配置を見直す:集中しやすい環境を整える
- 業務の流れを改善する:待機時間が発生しにくい業務フローを検討する
- 必要に応じて人事異動を行う:適性に合った配置転換を検討する
業務中の「私語」には適切な指導と職場環境の改善が必要です。バランスを取りながら対応することで、従業員のモチベーションを維持しつつ、生産性向上を実現することができます。
人事のQ&Aの関連相談
パート職員の労働時間に対しての賃金について
標題の件について相談があります。
当事業所(10名程度の職員)ではフルタイムのパート職員、6時間勤務のパート職員、正規職員が混在しています。パート職員に関しては30分単位の賃金で管理しておりますがその...
- 丈パパさん
- 千葉県 / 教育(従業員数 11~30人)
問題社員に辞めてもらいたい
お世話になっております。
相談タイトルの件ですが、
弊社に問題社員がいており
その処遇に悩んでおります。
職種は製造職(機械加工員)です。
元々性格的に変わった所が見受けられ、
朝の清掃中に鼻歌を...
- トッポギさん
- 大阪府 / 鉄鋼・金属製品・非鉄金属(従業員数 51~100人)
監視カメラに撮影された勤務態度への注意
当社は小売業で店内を監視カメラで撮影しています。
本部が支店に連絡がある時、混雑してるか確認する場合もあります。
以前よりおしゃべりが多い社員同士の組み合わせの時に
お客様が来ないと20分でも30分で...
- 雪だるまさん
- 青森県 / 販売・小売(従業員数 31~50人)
問題社員の対応について
職場内に就業時間中に私語が多く、周囲が迷惑しているケースについての相談です。
仕事はできる方で気分にむらがあり、業務に関係ない話を周囲を巻き込んで大声で唐突に始めます。
周囲も迷惑しているのですが...
- *****さん
- 東京都 / HRビジネス(従業員数 1~5人)
- 1
関連する書式・テンプレート
求人チラシ・ポスターのテンプレート(介護職員)
介護職員を募集するポスター・チラシのデザインテンプレート。
中途採用、パート・アルバイト採用にご利用ください。
勤務間インターバルの社内周知文
勤務間インターバルを導入する際に、社内に対象者や運用ルールを周知するための文例です。
勤務シフト表
シフトの時間調整をするための表です。
勤務間インターバルの規定例
勤務間インターバル制度を就業規則に規定するための例です。