個の多様性を広げ、働き方を変えるきっかけに
日本ユニシスの「目標値なし」「男女問わず」の
育児休暇推進
日本ユニシス株式会社 組織開発部 ダイバーシティ推進室 室長 兼 CEOアシスタント
宮森 未来さん
女性活躍推進法が2016年4月に完全施行されて以来、多くの企業が女性に関する目標値を掲げ、ジェンダーギャップの是正に取り組んでいます。女性の活躍推進とセットで進められるべきなのが、育児や家事を夫婦で分かち合うという考え方の浸透です。しかし、育児分担の入り口ともいえる育児休暇は、男性の取得率が5.14%(平成29年度雇用均等基本調査)にとどまっています。そんな中、一定の成果を上げているのが日本ユニシス株式会社です。2018年には、厚生労働省の「イクメン企業アワード2018 両立支援部門」においてグランプリを受賞。ダイバーシティ推進を中期経営計画の一つに掲げる同社の育休にまつわる施策と成果を、組織開発部・ダイバーシティ推進室長の宮森未来さんにうかがいました。
- 宮森 未来さん
- 日本ユニシス株式会社 組織開発部 ダイバーシティ推進室 室長 兼 CEOアシスタント
(みやもり・みらい)/2006年12月、日本ユニシス株式会社へ入社。銀行や信託銀行等金融機関向けの営業に約10年間携わり、2016年4月にダイバーシティ推進室へ異動。2019年4月より現職。
「一緒に出席してよかった」 好評の夫婦参加型ワークショップ
はじめに、日本ユニシスの男性の育児休暇制度の概要を教えていただけますか。
制度面では男女にかかわらず、子どもが2歳になる前日まで、最大2年間で分割して育児休職制度を利用することができます。男性社員には、「妻の出産休暇」という有給休暇も付与されます。年次有給休暇の未消化分を最大60日分積み立てることができるので、数日間の育休であれば通常の有休を利用する社員も多いですね。このように法律以上の制度は、もともと備えていました。
2018年度の「イクメン企業アワード2018 両立支援部門」でグランプリを受賞されていますが、ここ数年はどのような取り組みを行われてきたのでしょうか。
2015年度から始まった前中期経営計画の中で、重点戦略として働き方改革を掲げてきました。制度だけでなく、風土改革も進めていこうと。具体的には、育休取得者を対象に復職前のワークショップを開催しています。外部講師から仕事と育児両立のポイントを伝えたり、育休復帰後の先輩社員をパネリストに招いて働き方の実例を見せたり。復帰後にパートナーとどのように育児・家事を分担していくのかを、シミュレーションしてみるワークもあります。ワークショップには原則夫婦での参加を奨励しているので、パートナー同士がきちんと育児について考え、話し合う機会が得られると好評です。もちろん、パートナーが社外の方でも参加することができます。
参加者からはどのような声が聞かれますか。
夫と一緒に参加した女性社員は、全員が「連れてきてよかった」と言いますね。「自分からは伝えにくいことを、講師からしっかりと言ってもらえた」とか、「うやむやになりがちな家事の分担を明確にできた」という感想をよく耳にします。男性の方は、ワークで目に見える形で家事の負担をアウトプットすることが、意識を変えるきっかけになっているようです。「女性側にどれくらいの負担をさせていたのかが分かった」「積極的に家事・育児に関わっていこうと考えを改めた」といった声を聞きますね。
ただ、当事者の意識が高まっても、周囲の理解がなければ育休取得のハードルは下がりません。そこで、上司に「育休を取りたい」と言い出しやすい空気をつくるため、管理職の意識改革研修を行っています。ほかにも、産休・育休の取得前と復帰時に、取得者本人と上司、ダイバーシティ推進担当者による三者面談を実施。復職後の働き方について、細かく話し合うようにしています。専用の面談シートには、復職後に時短やテレワークを利用したいか、保育園の送迎や緊急時のサポート体制は決まっているかなど細かいチェック項目が書かれていて、これをもとに、両者の漠然とした不安を一つひとつクリアにしていきます。
また、もう一つの大きなテーマは、休職期間を含めた中長期のキャリアです。育児とキャリアを両立するために会社が全面的にサポートする、という姿勢を見せることが大切だと考えています。
上司と部下の1on1ではなく、ダイバーシティ推進担当者が同席するのはなぜですか。
男性上司は、育児に詳しくなかったりハラスメントに敏感になりすぎたりして、一対一では聞きたいことも聞けない場合があります。第三者が加わることで中立性を保つことができ、育休取得者も上司も言いたいことを言えるようになるのです。面談シートに詳細な質問事項が記載されていることも、聞きづらさを軽減する点で役立っているようです。