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「インフォメーション・マッピング」とは何か?
秋山:グローバル化が一段と進展している昨今、言葉によるミス・コミュニケーションを無くし、効果的に情報提供をしていくスキルを身に付けることは重要です。そのために開発されたのが、既に欧米の多くのグローバル企業で採用されているトレーニング手法「インフォメーション・マッピング」です。
小川:「インフォメーション・マッピング」は、「英語が上達しますよ」とか「他の国の言葉がうまくなりますよ」ということではなく、相手のことを考えてまず情報を整理し、いかに伝えていくかという文書化の手法です。ハーバード大学などでの認知心理学、学習理論、教育設計学、有用性研究といった研究がベースとなっていて、既に40年以上のビジネス実績を有し、フォーチュン500で200社以上の顧客数を誇っています。実は、ビジネスの中では文章コミュニケーションが一番多いコミュニケーション手法です。「インフォメーション・マッピング」は書く技術にスポットを当てています。この手法を身に付けることで、より正確で効率的に文書化できるようになり、コミュニケーション力も大きく伸ばすことができます。
「インフォメーション・マッピング」では、例えば、「こういう文章の場合はこんな表現方法がいいですよ」とったことを学ぶプログラムに仕立ててあります。それを2日間で学びます。本来語学学習は時間がかかるものですが、学んだ後はすぐに「ビジネス文書」として使い始められる速効性があるのが大きな特徴です。英語の勉強というよりも、コミュニケーションや、伝えたいことを整理して表現する情報構造技術を学ぶことに重点を置いています。その結果、母国語である日本語でのビジネスにも効果が期待できます。ここで、文書のサンプルをご覧ください。
この文書は、「REORGANIZATION OF THE COMPANY」(組織機構改革)に関するものですが、これが自分の元へと届いたとします。最後まで読まなければならないと考えると、おそらく多くの人は心が折れるでしょう。また、実際に読んでみても「分かりにくい」と感じると思います。しかし、「インフォメーション・マッピング」を適用すると、非常に整理された文書になります。複雑な構文は不要で、使用する単語数は大幅に削減されるからです。タイトルが付けられ、何が書いてあるのかが小分けされるなど、分かりやすくフォーマット化された文書ですから、誤解が入り込む余地は非常に少ないと思います。
中原:情報を整理する「指針」を与えてくれる感じですね。
小川:具体的な情報は表組にすることで、非常に分かりやすくなりますね。文章で長々と書くよりも、相当な効果があります。読み手が、内容を理解するまでの時間が半分程度になってきますね。特に外国語として英語を読んでいる日本人にとっては、大きな効果があります。また、このように「インフォメーション・マッピング」では、単語を並べて能動態で文章を書けば、全て事足りるんです。コンセプトや本当に大事なところだけを集めて、後は分かりやすく書けばいい。中・高校生くらいの英語のレベルでも十分な文書を作成することができます。
秋山:文章だけだと、語学力の差が出てしまいます。まずは伝えたいことを日本語ベースで一度整理し、それを中・高校生でも分かるような英語にすればいいのです。慣れてくれば、コンセプト自体は頭の中にあるので、最初から英語でメモした方がいいでしょう。むしろ日本語で書く方が長くなるので、ダイレクトにやった方が速く作成できます。また、文書の種類によってテンプレートが付いていますから、それに則って書くことに慣れてしまえば、英語によるビジネス文書は大体作成できるようになります。
小川:このようなフォーマットを組織内で共有すれば、情報の伝達が大変効率的になります。しかし、自己流でやるとうまくいきませんから、きちんとしたセオリーに則って文書を作成することが重要です。「インフォメーション・マッピング」では、六つのプリンシプルと、六つのインフォメーション・タイプに分けて、文書作成の構成ルールを定めています。これに則って情報を正しく分類し、文書を作成すればいいのです。テンプレートのフォーマットは、約25種類ご用意しており、「リクエスト」「プロポーザル」や「アジェンダ」など、ビジネスで頻繁に使われるようなものは、全て入っています。
秋山:今、「インフォメーション・マッピング」に興味をお持ちなのは、主にグローバルに事業を展開している製造業の方たちですが、だんだん他の業種にも広がってきました。いろんな企業で、海外とのメールやドキュメントのやり取りなど、折衝におけるコミュニケーション量が飛躍的に多くなってきているようですね。そこで「インフォメーション・マッピング」の手法を取り入れ、コミュニケーションのミスの削減、時間の短縮、生産性の向上につなげたいということでご興味を持っていただいています。
小川:そうした企業では、文章のやり取りや文章コミュニケーションのルール、フォーマットなど、やり方を揃えることで、コミュニケーションを効率化していこうという考えが明確にあると思います。
中原:私の経験から言うと、グローバルな外資系企業では、いろいろな国の人がいることを前提としてコミュニケーションのルールができているので、最初は、コミュニケーションのルールから教えられます。最初のラインを決めておけば、フレームが同じところで話すことになるので、誤解が少なくて済みます。
グローバル展開におけるコミュニケーション・ルールの必要性
秋山:グローバルに展開している優良企業は、コミュニケーションのルールを明確に定めるのがある種のスタンダードですね。
中原:グローバルに世界各国の人たちとコミュニケーションをとっているわけですから、それがないと、日々の業務に影響が出てしまいます。
秋山:コミュニケーションのルールが異なることで誤解を生み、その結果、感情的な対立が生まれてしまっては遅いですからね。
小川:むしろ、こういった速効性のあるプログラムによって、どうにか英語でのやり取りができるようになることで、本物の英語に触れる機会が増大し、結果的に英語能力向上につながっていくと思います。
秋山:英語力については、楽天やユニクロのように危機感を持っている企業と、それほどでもない企業とに分かれますが、コミュニケーションの問題と考えれば、全ての企業にとって重要なテーマとなりますね。
中原:これから、グローバル化はどんどん進んでいきます。英語でコミュニケーションがとれるかどうかによって、情報伝達のスピードや情報の量、情報へのキャッチアップなどへの「時差」や「格差」は、ますます顕著になっていくことでしょう。そういう意味でも、英語でのコミュニケーションについて、全社的に底上げを図っていくことが求められているのは間違いないと思います。
秋山:本日はお忙しい中、貴重なお話をうかがうことができました。ありがとうございました。
グローバル化環境におけるコミュニケーション向上支援を目的とする。設立以後40年間の間にフォーチュン500中、200社以上で使われた実績を持つ Information MappingTM 手法(本部ベルギー)を日本で普及させるための研修とコンサルティングを行っている。昨年に事業開始。
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