3年目社員の「賢い」育て方 Episode-1
新入社員の配属前夜~自分は先輩として何ができる?
「若手社員の約3割が、入社から3年以内で退職している」といわれる。今や若手社員の早期離職は、大きな社会問題だ。企業としては当然対策を講じるべきだが、若手社員の実情を把握しないまま策定した一方的なものでは、本人たちになかなか受け入れられないだろう。今回のシリーズでは、ベンチャーのIT企業に入社して3年目、営業部に勤務するB氏に注目。この4月から初めて新入社員の面倒を見ることになったB氏が、新人教育を通じて何に悩み、どのように対応していくのかを見ていきながら、若手社員育成のためのヒントを探っていく。
新入社員の指導は任されたけれど…
B氏の社会人としての生活も、この4月で3年目に突入。「若手社員の約3割が、入社から3年以内で退職している」といわれる通り、同期入社の仲間のうち約3分の1は、既に転職していた。「次は自分かな…」などと思ってはみるものの、日々、仕事の忙しさに追われるばかりで、実際に転職活動をするところまで踏み出せないでいる。
しかし、自分の仕事に疑問を感じているのは確かなのだ。仕事には決して満足していない。かといって、特別不満というわけでもない。ただ、なんとなく毎日を過ごしてしまっている。任される仕事が増えてきたため、それをこなすだけで精一杯。上司は特に面倒を見てくれるわけでもないし、一番仲が良く、何かと相談に乗ってくれていた同期は、半年前に転職してしまった。
そんなB氏の所属する営業部にも、この4月から新入社員が配属される。B氏自身はまだいわゆる平社員であり、上司に当たるわけではない。だが、人事部からは、「君は入社3年目だし、仕事は理解しているだろう?メンターとしてしっかり面倒を見てやって欲しい。年齢も一番近いんだし、日々のちょっとした困りごととか、いろいろ相談に乗ってあげてくれよ」と、半ば強引に指導を任されてしまった。その場ではなんとなく引き受けたものの、落ち着いて考えてみれば後輩への接し方など教わったこともない。
「うーん、これは困ったことになったなぁ。とりあえず、自分の新入社員時代を思い出してみるか…」
先輩として何をすべきなのか?
B氏が就職活動をしていた頃は、決して現在のような「売り手市場」ではなかった。しかし、今の新卒ほどではないにせよ、就職に苦労したという記憶はない。ただなんとなく、フィーリングが合ったという理由だけで、今の会社への入社を決めた。
入社してしばらくは、一般的な社会常識やビジネスマナーを学ぶ新入社員研修が続いた。一連の研修を終え、晴れて営業部に配属となったのは4月中旬。配属初日、自分が入社を決めたきっかけのひとつ(会社説明会で直接話をしてくれたほか、一次面接も担当してくれた)ともなった先輩社員が、B氏の目の前の席に座っていた。
「いらっしゃい。来るのを心待ちにしてたよ。今日から僕が面倒を見るから、わからないことは何でも聞いてくれよ!」
先輩のその一言はとても心強かった。当時は内定者フォローもあまり活発ではなく、入社後の人間関係などに大きな不安を感じていた。配属初日から、見知った顔がいることに、大きな安心感を覚えたものだ。
「そうだ、大切なのは、新入社員が安心できるようにしてあげることだ。入社したばかりで不安が多いはずだから、ひとつずつ、解消してあげよう。まず最初に悩むことは、やっぱりビジネスマナーとか職場でのコミュニケーションだろうな…。あとは『報・連・相』か。しまった、自分も最近は忘れがちだな…」
B氏は自身の新人時代を振り返ることで、これから迎え入れる新入社員への接し方を自分なりに思い描きはじめた。同時に、自分自身の現在の問題点も確認しながら…。
新入社員の前に、まずは自分たち若手社員の面倒を…
考え事をしている姿が気になったのか、B氏の上司に当たるF課長が声をかけてきた。
「どうしたんだ、さっきから。何か悩んでいるような顔だけど?」
「はい、人事部から新入社員のメンターをやって欲しいと言われたもので…」
「そうか。君は仕事もできるし、もう入社3年目だもんな。こちらでは教えられないことも沢山あるから、よろしく頼むよ。新入社員には君のサポートが必要なんだよ」
「お言葉はありがたいのですが、実は不安の方が多いんです。例えば、僕も新人の頃にビジネスマナーの研修を受けましたけど、今でも時折不安になるんです。これで間違いないのかなって…。そんな状態では後輩に『自信をもっていけ!』なんて、とても言えないですよ」
新入社員への指導を通して、これまでの復習と新たな学習ができることは大きいとB氏は思う。しかし、それ以前に、自分自身の仕事ぶりを冷静に振り返ったとき、あらゆることが中途半端にしかマスターできていないことに気づく。B氏のように自信がない若手社員にとっては、新人への指導が逆効果になってしまうこともあるだろう。
入社3年目ともなれば、仕事や会社についてかなり理解しているし、自分ひとりで仕事の大部分を進められるようになっている。会社としてもさらなる成長を期待している年代のはずだが、管理職という立場ではないため、特別な研修プログラムが実施されるわけでもない。
「後輩の面倒を見てくれという前に、僕達の面倒こそ見てほしい…」
間近に迫った新入社員の受け入れを前にして、自らに課せられた責任の重さから、そんなことを叫びたくなってしまうB氏だった。
果たして、B氏は実際に新入社員を指導していくなかで、どんな問題に遭遇し、どのように対応していくのか…。その詳細は、次回「Episode-2」で見ていくとしよう。
新入社員研修や新任管理職研修などの階層別研修は、多くの企業で実施されている。一方で、社歴が浅い若手社員向けの研修を実施している企業は少ない。しかし、若手社員の多くは責任の重い仕事を任されはじめ、悩みや不安を抱えながら、毎日を過ごしている。
また、仕事に慣れ始めた入社3年目ともなると、基礎がおろそかになりがちだ。そのことが原因で、トラブル発生に繋がることもある。
入社3年目の若手社員にこそ、適切な研修や育成プログラムを用意し、さらに成長していくための場を提供していくことが、必要ではないだろうか。
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