若手社員の定着率をアップさせるためには
求人難が叫ばれる中で、若手社員の早期離職傾向がなかなか止まらない。少子化が進む今後、適切な対策を講じていかないと、このままでは企業経営そのものに支障が出てきてしまう。若手社員を定着させるためにはどのようにしていけばいいのか、適切な施策は何なのかについて考えてみたい。
若手社員の早期離職の「現状」とその「理由」
厚生労働省の「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」をみると、大学卒の3割以上が3年以内に離職している。それも以前は2割台だったものが2000年以降、その割合がコンスタントに35%前後で推移しており、かつ1年目での離職率の高さが目立っている。
もちろん、昔から若年層の早期離職の問題はあったわけだが、新卒を一括して大量採用していた時代と現在では、かなり様相が異なっている点に留意したい。何よりその頃とは社会情勢はもちろん、企業を取り巻く環境や雇用システムのあり方が大きく変わってきているからだ。かつて会社組織の人員構成はピラミッド型をなし、終身雇用を前提とした年功序列が形としてあった。見習うべき存在としての先輩や上司もいた。だから、会社に身を任せていれば大丈夫だと多くの若者が信じていた。
しかし、現在の状況は明らかに違う。バブル崩壊後、いわゆる日本的雇用慣行は変わらざるを得なくなってきた。多くの企業ではリストラに迫られ正社員を厳選採用していく中で、人材活用のあり方を変えていった。経営状況や仕事の繁閑に応じて、非正社員やアウトソーシングをうまく活用していくことが基本となってきたのである。個人には短期的な成果や業績が求められる一方、職場に相談できる仲間が少なくなってきた。仕事は増え、残業が恒常化し、ストレスも溜まっていく。会社の先行きが不透明で、自分自身の先々のキャリアの見通しが明確に持てない状況に置かれたのが現代の若者たちなのだ。
このように大前提が変われば、彼らの考え方や行動も変わるのは当然のことである。昨今のような職場環境下において、早期に辞めていく若者が増えてきたのも当然のことかもしれない。
だからこそ、「リテンションマネジメント」として若手社員に対する定着・早期離職の予防策が重要な意味を持っているのだ。さらに、実際の施策においてもよりきめ細かなもの、かつ個別性の強いものとなっているというのが昨今の状況である。
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定着させるためには、すぐ辞めるような社員を採用しないこと
では、具体的にどうしていけばいいのか?ここでは、若手社員が辞めるということについて、採用前と採用後に分けて考えてみたい。
まず、採用前の問題。採用にあたっては昨今の求人難、あるいは、自社の採用ブランドや若者に人気の高くない業種に属している、というような障壁がある場合もあるだろう。しかし、いくら人が採れないからといって、自社に対するしっかりとした理解や共感がない人材を安易に採用したり、また、過分な賃金や処遇を用意したとしたら、そのような要因で入社した人は早晩辞めていくことは目に見えている。
当たり前のことだが、入口の段階である「採用」において、やるべきことをやらないといけない。応募者に対して自社への「理解」を十分深める努力をする。そして、その中で本人の「適性」を正しく見極める。そして、これらの行為を採用目標数に達するまで継続的に行うということ。まず、この基本を忘れてはならない。
それなのに、人数合わせのためにすぐ辞めてしまうような社員を採用していては、本末転倒である。そうならないためにも採用では人事部が中心となり、相互の「マッチング」ということを強く意識し、全社的な取り組みの下で行うことが欠かせない。これは前提条件と言える。
辞めさせないためにはどうすればいい?
次は採用後の問題。とはいっても、やはり入ってからの「ギャップ」というのは生じるものである。事実、「こんなはずではなかった」と早々に辞めていく人は少なくない。そのギャップを少しでもなくすために、会社側が責任を持って対処すべき事項がある。それは大きく以下の3つに整理することができる。
(1)「必要条件」としての施策(衛生要因)
まず考えたいのは、競合他社等と比較して、給与水準や職場環境があまりに劣っていては、やはり人は去っていくということ。一定水準は確保した上で、仕事内容や成果に応じた、納得性のある給与体系を用意することは、必要条件として最低限の事項だろう。
そして、職場環境として現代の若者が欲する魅力的な福利厚生を考えてほしい。あるいは「カフェテリアプラン」ということで、多様な選択肢を用意するというのがあっていい。いずれにしても昨今の若者に対しては、この2つの点は絶対に外せない事項(衛生要因)である。
さらに、「ワークライフバランス」という視点が重要となってくる。最近の若年層の価値観や志向というのは、40代以上の大人たちとは大きく様相が異なっているからだ。彼らの実体験のベースは、バブル経済崩壊後の1990年代にある。いわゆる“失われた10年”の出来事から受けた印象が、その後の彼らの行動スタイルを大きく規定している。そのためか、かつてのようなモーレツ社員と呼ばれるスタイルを持つ人は少数派である。自分の私生活をしっかりと守ろうとする傾向が強い。その点からも、労働時間に弾力性を持たせたり、休日・休暇などに対する配慮というものは欠かせない。
(2)「十分条件」としての施策(動機付け要因)
その次に考えるべきことは、十分条件として若手社員がやる気を持てる施策(動機付け要因)である。周知のように、昨今の若者には転職や独立を考えて就職する人が多い。だからといって、最初に入る会社を軽視しているわけではない。自分を成長させ、チャンスを与えてくれる会社へと最初に就職したいと考えているのだ。そういうことが体現できる会社なら愛着もわくだろうし、結果的に定着へつながるのではないだろうか。
そのためには例えば、新規事業が提案できる、若手に責任ある仕事が任せられるといった制度・仕組みのあることがポイントとなる。平たく言えば、仕事にやりがいが持てるようにすることである。さらに、社内FA制度や自己申告制度など、自分の能力向上やキャリアアップを実現できる施策が有効である。近年の若者が自分の仕事や成長ということに対して、少なからぬ関心を持っていることに注目してほしい。
(3)「フォロー」としての施策
そして、上記のような施策をある程度整備できたら、それを彼らが適切に享受できているか、あるいは何か不満を抱えていないかをチェックする機会を設けることである。実際、仕事が専門化・高度化してきた現在、成長の度合いが個人によって違っており、そこでの悩みも個別性が強くなってきている。
そのような点からも、メンターとして先輩社員を教育係につける、定期的な面談を直属の上司や人事部が行うといったフォローとしての施策が欠かせない。さらには、定期的に研修などを行うことにより、本人の能力やスキル、場合によってはメンタル面の状況をチェックし、それに対する教育やカウンセリングなども並行して行うことも検討していい。
人事部が中心となり、良好な「組織風土」を構築していく
とはいえ、最終的には若手社員を歓迎する気持ちが各社員にあるか、という組織風土の問題が大きく関わってくる。なぜなら、働く現場において良い人間関係が構築されているかが、若手社員のモチベーションや成長に大きく影響するからである。
これは若手社員に限ったことではない。従業員全員が気持ちよく働ける環境を整備することは、組織においてとても重要なことである。もちろん、それは人材の育成なども含めたものであることは言うまでもない。そして、このような動きの中心となるのは「人事部」である。
現場の意見を吸い上げて若手社員に対する処し方の基本方針を決め、その施策を明確に打ち出す。そして、それを実のあるものにするために現場を巻き込む。このような現場と連動した施策立案と運用ができるかどうかで、若手社員の定着度が決まるといっても過言ではない。このことの持つ重要性を、人事の仕事に携わる人は十分に意識してほしい。
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