人材流動化は「絵に描いた餅」?
人材紹介会社経由のキャリアチェンジにあるハードル
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未経験者採用をリスクと捉える企業
「先日、他の人材紹介会社で『派遣契約なら希望業界に紹介できる。まずは派遣で働いてキャリアを積んでみてはどうか』という提案を受けました。どう思われますか」
異業種への転職を考えている方からこういった質問を受けることもある。たしかに企業の立場で考えると、業界経験のない人材をいきなり正社員で採用するのはリスクがある。まずは派遣、あるいは日給や時給の契約社員やアルバイト待遇から始めてほしいという求人をもらうことも時折ある。
ただ、正社員以外の雇用形態は慎重に考えるようアドバイスしている。
「一定期間後、確実に正社員になれる約束はありましたか。それがないとずっと派遣のままになるかもしれません。そうなってから再度転職を考えても、今度は『前職が派遣社員だった』という条件で活動することになります」
日本企業はなぜか、一度派遣で働いた人を正社員で採用したがらないという傾向がある。はっきり示せるような特別な技術やスキルがない場合、その後のキャリアがずっと派遣のままで固定化されてしまう可能性がある。これは大きなリスクだ。
「お話を聞いていると今から異業種に転職するのは限りなく難しいような気がしてきました。成長企業ほど人材不足だと思うのに何かおかしくないですか?」
相談者の意見はその通りだ。新しいビジネスで人材を積極的に求めている企業は多い。ただ、人材紹介会社というサービスの性質上、企業からもらう求人の内容が「経験者募集」「即戦力募集」に大きく偏っている。「業界未経験者可」の求人は、やはり数は少ない。企業側としては「紹介料を払ってまで未経験者を採用することはない」という判断になりがちだ。
将来、日本企業が「業界未経験であっても、意欲を持って学び直した人材は正社員として採用する」という時代がきたら、人材紹介会社にもそんな求人が豊富に入るかもしれない。そうなるまでは、日本社会における新しいビジネスへの人材の移動はまだまだ「絵に描いた餅」なのではないだろうか。
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