優秀な人材ほど流出する リストラと人材紹介
先手を打って転職した方が有利 優秀な人材から先に流出するリストラ
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欧米でもリストラは悩ましい
リストラを行う際、特に欧米では、一つ間違えると大規模な訴訟問題になるリスクがあるという。その訴訟リスクをできるだけ抑えるには、「人種、性別、学歴、年齢」など、あらゆる面で社会的に「弱者」とされる人たちを避けてリストラを行わなくてはならない。
そうなるとリストラの対象にできるのは「若い大卒の白人男性」しかいない。つまり、現場の中心になってバリバリ働いている層をばっさり削ることになるのだ。しかし、彼らは同業のライバル会社がいちばん中途採用したい層でもある。ビジネスライクとされる欧米でも、営業担当個人に顧客がついているケースは珍しくないからだ。
また近年、日本の大手電機メーカーが世界の市場で苦戦しているが、その理由の一つは、日本企業をリストラされた社員が、転職したアジア企業にその優れた技術やノウハウを伝えたこと。たしかにこの十数年、アジア企業から日本の人材紹介会社に対して、技術者の求人依頼が多数来ている。
「時代が変わったのが大きいでしょうね。昔も不景気はたびたびありましたが、日本の大手企業はそう簡単にはリストラをしませんでした。しかし、今は四半期ごとに数字を改善していかないと、経営陣の責任が問われます。市場や株主からの突き上げが昔とは全然違いますからね」とS社長。
即効性のある業績改善方法というと、どうしてもリストラや事業部の切り売りになってしまうが、それ以外の方法で業績を改善できる経営者が、本当に優れていると言えるだろう。
人材紹介会社は転職希望者と採用企業を結びつけるのが仕事である。この両者が満足してくれればビジネスとしては大成功ということになる。しかし、そういったマッチングを続けた結果、日本経済を徐々に弱らせていったのかと思うと少々複雑な気分になった。
優秀な人材が登録してくれること自体は人材紹介会社にとってはありがたいことだ。だが、できれば話題の大手電機メーカーでもこれ以上のリストラがなければいいな……とあらためて考えさせられた。
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