入社前に企業内の「雰囲気」をつかむ方法は?
転職希望者の期待には応えたいが…… 人材紹介なら「社内の雰囲気」も知っている?
求人票に書いてあるデータだけでは、その企業の社風や社内の雰囲気まではわからないことが多い。転職に際して人材紹介会社を利用するのは、そういったアナログな情報や裏事情のようなものを事前に知りたいから、という人も少なくないようだ。紹介会社側も、転職希望者のそうした期待にはできるだけ応えたいと考えているが、時代とともに企業の中の様子をうかがうことが難しくなっているという実態もある。
見えにくくなった企業の「内部」
「お待たせしました、こちらへどうぞ」
出迎えてくれた採用担当者が笑顔で応接に案内してくれる。観葉植物などが飾られたセンスのいい受付。社内に通じる入り口にはしっかりとセキュリティーがかかっていて、社員がIDカードをかざして暗証番号を入力しなければドアは開かない。中に入ると左右にミーティングルームが並んだ廊下が続く。
「では、こちらでお話をうかがいます。どうぞお掛けください」
新しく人材紹介契約を交わす企業には必ず出向き、どんな会社なのかを自分の目で確かめるのは、キャリアコンサルタントの重要な仕事だ。しかし、近年ではセキュリティーのしっかりした企業が多く、内部の雰囲気を肌で感じる機会がめっきり少なくなってしまった。
かつては、受付の背後にオフィスのフロアを一望することができるレイアウトの企業が多かったものだ。応接に通される短い時間にも、多くの情報を得ることができた。オフィス内の活気、社員の男女比、おおよその年齢層、机の上に置かれたものや壁に貼ってある標語やグラフなどからも、それぞれの企業の「息遣い」のようなものを垣間見ることができたのである。
「この契約、どうなってるんだっ! しっかり報告しろっ!」
人事担当と打ち合わせをしている間に、部下を叱責する上司の怒鳴り声が聞こえてくる会社もあった。いわゆる営業会社だったが、その雰囲気から、目標数字の管理には大変厳しいことが伝わってくる。そういう企業には、営業力に相当な自信がある人材しか紹介できない。
「ずいぶん静かですねえ」 「ええ、昼間はほとんどみんな出払っているんです」
中には広いフロアに机がずらっと並んでいるのに社員がほとんどいなくて、シーンと静まり返っている会社もある。話し声一つも聞こえない。こういう情報も、転職希望者にとっては貴重なはずだ。
しかし、今は社内の雰囲気をほとんど見ることができない。オフィスを見せてほしいと頼んでも、「企業秘密保持」や「個人情報保護」のため、難色を示されることが多い。転職希望者に「社内の雰囲気はどんな感じですか」と聞かれても、なかなか具体的に情報を提供できないのはもどかしいものだ。