職場のモヤモヤ解決図鑑【第80回】
いよいよSNS採用導入! 運用開始の流れ[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
SNS採用の導入を検討しようと会議室に集まった吉田さんと江國さん。運用を始めるまでには、まだまだ検討しなければいけないことがありそうです。活用されている各SNSの特徴と、運用を開始するまでのステップ、注意点を見ていきます。
SNS採用で活用できるSNSの特徴
SNS採用で活用できる代表的な五つのプラットフォームについて、特徴をまとめました。
インスタグラム
インスタグラム(Instagram)は、画像をメインとしたSNSプラットフォーム。月間アクティブユーザー数は3,300万人で、世代別に見ると20代の利用者が最も多く、若者を中心に活用されるSNSとして認識されています。リールと呼ばれるショート動画、視覚的に優れた投稿が人気であり、主にフォローとハッシュタグを通じてつながります。社内の様子をこまめに発信する、企業ブランディングとしてデザイン性に凝った投稿を行う、といったことが可能です。
X(旧ツイッター)
X(旧ツイッター)は、文字投稿をメインとしたSNSプラットフォーム。月間アクティブユーザー数は4,500万人で、世代別では20代による利用が最多となっています。以前は一つの投稿に140文字以内の制限がありましたが、有料会員になることで制限なく投稿が可能です。
X(旧ツイッター)の特徴は、アカウントをフォローしている人以外にも情報が届く拡散力の高さです。企業の公式アカウントだけではなく、採用担当が個人アカウントを運用する例もあります。企業の最新情報や説明会情報など、リアルタイムの情報を届けるほか、採用への想いなどを発信することで、ユーザーと双方向のコミュニケーションをとるのに適しています。
フェイスブック
フェイスブック(Facebook)は、実名でつながるプラットフォーム。日本国内のユーザー数は2,600万人以上です。フェイスブックが国内で広まったころ、スマホやネットを活用した若者であった30代・40代の利用率が高いSNSです。実名登録であるため、リアルな交友関係がプラットフォームのつながりに反映されています。名刺交換の代わりに「友だち申請」を行う社会人も少なくありません。社員の「友だち」のような形で、リファラル採用に活用する方法もあります。
YouTube
YouTubeは動画投稿をメインとしたプラットフォーム。国内ユーザー数は約7,000万人で、各年代で8割以上の高い利用率を誇ります。全世界にユーザーがいる点が特徴であり、海外への発信も可能です。採用プロモーションムービーのほか、Web会社説明会、社員インタビューなど、動画によりインパクトのある情報発信が可能です。
LINE
LINEはメッセージのやりとりをメインとしたプラットフォーム。国内ユーザー数は約9,500万人で、10代〜50代まで幅広い年齢層が利用しています。各年代で9割以上が利用率しており、日本各地にユーザーがいます。
LINEは多くの人にとって、日常の連絡手段であり、ユーザーの1日の閲覧数が高い点が特徴です。友だち追加でアプローチが可能となるため、TwitterやInstagramのように友だちにならなくても(フォローしなくても)情報にアクセスできるSNSと比べて、距離の近いSNSといえます。
SNS採用を始めるステップ
SNS採用をはじめるための、大まかな流れは以下の通りです。
【STEP 1】SNS採用の目的を決める
企業ブランディング、採用ブランディング、母集団形成、潜在層へのアプローチなど、自社の目的を明確にします。目的が複数ある場合、優先順位をつけて整理することが重要です。また、目的に対する指標を定めると、SNS運用の指針となり、継続運用を助けます。ただし「フォロワー数」や「PV数」は一つの目安として、短期的にこだわりすぎないことがポイントです。
【STEP 2】使用するSNSを検討する
目的に合わせて自社に適したSNSを検討します。複数のSNSを同時に活用する場合は、社内の運用コストも考慮します。各SNSの特徴を踏まえて、発信方法を変えることがポイントです。
【STEP 3】SNS担当者を決める
社内でのSNS担当者を決定します。社内リソースが足りない場合は、外部のコンサルティング会社に依頼したり、業務委託などで専任のSNS担当者を採用したりする方法もあります。
【STEP 4】SNSの運用ルールを定める
SNSの運用ルールは、炎上リスクを抑える上で重要です。「やらない投稿の内容」など、ルールを定め、企業としての姿勢を明確にします。複数の社員がSNS運用に携わる場合は、とくに運用ルールを明確にすることが大事です。
【STEP 5】アカウントを作成し運用を開始する
アカウントを開設し運用をはじめます。アカウントのID・パスワードは関係者以外で共有しないよう、セキュリティ対策が必要です。二段階認証の設定も、アカウントの「乗っ取り」防止に役立ちます。
SNS運用の注意点
企業としてSNSを運用する場合、個人の運用とは異なり、一定期間運用を続けることが第一歩です。
短期的な目標を追いすぎない
PV数やフォロワー数といった目に見える数字は、短期間では伸びないものです。運用を開始しても、「誰にも見られていない」「交流がない」といった状態も珍しくありません。開始直後は、数字にこだわりすぎずに自社の情報の定期発信に努めましょう。
担当者一人で公開・投稿しない
企業運用では、投稿前の内容や文章を複数の社員の目で確認することが重要です。誤字・脱字を防ぐだけではなく、投稿内容が自社のブランディングに沿ったものかどうかを確認できます。
社内の人材で運用することにこだわりすぎない
インスタグラムをはじめ、画像や動画のクオリティが効果を左右します。ときには予算をかけて、スキルのある人材に依頼することも、SNSを効果的に運用するポイントです。運用を全て任せるのではなく、動画編集や画像作成、写真撮影などSNS投稿に必要な素材だけを依頼することもできます。
SNS採用の企業事例
SNS採用を効果的に行う企業事例を紹介します。
インスタグラム :ユニリーバ・ジャパン株式会社
ユニリーバ・ジャパンのインスタグラムアカウントは、統一されたカラーやデザインで企業のイメージを形成しています。一枚の画像に情報がまとまっており、画像を見るだけで情報を得ることが可能。短時間で情報収集を行う若手世代に適した発信といえます。アカウントでは、選考内容、社員紹介、キャリア、部門・職種についてなど、求職者が求める情報が網羅されています。毎年の採用情報が蓄積されていますが、デザインが統一されているため、ホーム画面から必要な情報にアクセスしやすくなっています。
X(旧Twitter):株式会社DeNA
DeNAは、X(旧Twitter)を会社説明会やインターンの日程紹介、エントリーへの導線確保として活用しています。また、採用に直結する情報発信だけではなく、母集団形成や潜在層へのリーチを意識して情報を発信。たとえば、「デザイナー向けのポートフォリオ作成講座」といった就職活動とは異なるイベントの情報発信は、潜在層へのリーチが期待できます。ほかにも、エンジニアのキャリア紹介や自社事業のイベント情報など、プラットフォームの拡散性を活用して母集団形成を図っています。
フェイスブック:国土交通省
国土交通省のフェイスブックアカウントは、職員紹介を中心に運用しています。写真と文章を用いて、その人なりを伝えています。文章では、「仕事内容」「最も印象に残っている仕事」「国土交通省を目指す方へのメッセージ」など、応募者が知りたい内容を等身大で記載。説明会情報なども投稿し、親しみやすさを演出しています。
YouTube:合同会社DMM.com
DMMグループは会社説明、社員紹介、仕事紹介でYoutubeを活用。採用広報の公式チャンネルに、社内の様子や社員の人なりも含めて、多くの情報がまとまっており、DMMグループの採用に興味を持った人は、多様な情報をネットから得ることが可能です。
LINE:株式会社ニトリ
ニトリの新卒採用は、LINEを情報発信・求職者とのコンタクトに活用しています。LINEのリッチメニューには各SNSのリンクも張り、情報を得たい求職者に親切な設計。各年代で9割以上の利用率と、日常的になじみのあるツールで接点を強化します。
【まとめ】
- 視覚性優位、拡散力が高いなど、SNSによって異なる特徴を踏まえて活用する
- 担当者一人で運用するのではなく、チームや外部の力もまじえることが必要
- SNSの運用にあたって、ルールを設け、会社としての姿勢を明確にする
若手層にアプローチしたいから、Instagramに力を入れるのがいいのかなあ。でも、画像のデザインとかどうやったらいいんだろう……
社内で誰か得意な人はいませんか?
いたとしても、他の案件で忙しいだろうね
外部で探してみるのはどうでしょう?友だちのデザイナーでも、スポット的に仕事を受けていると聞いたことがありますよ!
そうだねえ。コンプラ的なことも含めて、上と相談してみるよ
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!