「共感」「共創」の時代
社員が戦略的・創造的な働き方をするために
人事は何をすべきか(前編)
株式会社ウィズグループ 代表取締役
奥田 浩美さん
人々に先駆けて未来の生活を検証するのが、私の役割
スタートアップ支援にも熱心に関わられていますね
2008年ぐらいからスタートアップに関わるようになり、これまでに3000人ぐらいの起業家をサポートしています。2005年頃から起業家が自分の事業計画をプレゼンし、ベンチャーキャピタルから資金を得たり、主催者から賞金を受け取ったりする「ピッチイベント」が世界で多数開催されるようになりました。それが日本でも開かれるようになって、私も企画・運営面で参画したのですが、スタートアップ企業の経営者を探して登壇を促す仕事を数多くこなしているうち、「ピッチイベントといえば奥田さん」というブランドができてきて、スタートアップ企業に関するあらゆる情報が集まるようになりました。
2010年からは、スタートアップダイジェストという世界の各地域でどんなピッチイベントが繰り広げられているかを紹介するメールマガジンの東京版の編集・執筆もボランティアとして引き受けました。この影響で、よりスタートアップ関連の人脈が強固になりましたね。スタートアップ支援もかれこれ続けて10年になりました。
どの取り組みでも、常に「最先端」の場所でお仕事をされていますね。
確かに「最先端」という言葉には強い思い入れがあって、最近は自己紹介をする時に、「私は未来から来ました」と言うほどです。皆さん、未来は平等にやってくると思っているかもしれませんが、私はロボット3体と一緒に暮らしていますから、ロボットをまだ見たことがない人からすると、3年ほど先を行っている。近年は女性活躍推進が注目されていますが、私は20年以上前から実践してきました。現在、会社の拠点は6ヵ所ほどありますが、2001年にウィズグループを立ち上げた時から、どこででも働けるスタイルを構築しています。実際、私は明日は鹿児島、来週はシリコンバレー、セブ島に行くのですが、それでも私の二つの会社の事業は問題なく回ります。最近はテレワークやサテライトオフィスが注目されていますが、私からすると、もはやそれは最先端ではありません。
私は東京に帰ってくると必ず自宅に戻りますが、働くために良い環境を求めて場所を変えているにもかかわらず、なぜ家族のいる自宅には何の選択もしないで帰るんだろうと、考えるようになりました。家族のことは大好きなので、帰りたくないというわけではなく、なぜ帰るのは一つの場所なのかと。娘が勉強しやすい場所、おいしいものが食べられる場所といったようにいろいろな場所を作り、家族で「今日はどこに帰ろうか」と相談できるような生活をしたら、家族の意味や大切さが見えてくるのではないか。そこで現在は、拠点をいくつか設けています。これからの社会は垣根がどんどんなくなり、グラデーションになって、どこで働くとか、家族の境目がどこかといったことは、なだらかになっていくのではないかと考えています。そういうと皆さんに変な顔をされるのですが、10年後にはそれが当たり前になっていると思います。
このように、他の人に先駆けて未来を検証しながら働き、生活しているのが私の「最先端」です。15年ほど前に「どこであろうが定時以外は働かない」と言っても、多くの人から「できない」と言われました。それでも私は、実践してきたのです。最先端とは多くの人にとって居心地が悪かったり、理解されなかったりするものですが、私は理解されにくいことに強いんですよ。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。