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あの仕事の「ヒト」と「カネ」

【宮大工】
絶滅危惧“職種”の宮大工。
修業期間は10年、後継者を育成せよ!

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ついに平成が終わる。先日迎えた「平成最後の正月」には、気持ちを新たに社寺へ参拝した人も多いのではないだろうか。歴史ある神社や寺院を訪れると、重厚な屋根や柱、壮麗な装飾などに目を奪われる。長い年月を経ても朽ちることなく、私たちの目を楽しませてくれる建造物。その裏には、高い技術で日本古来の建築を守ってきたプロフェッショナル「宮大工」の存在がある。

修業期間は10年。高い技術と豊富な知識が求められる宮大工

神社仏閣の建築や修繕にたずさわる大工は、宮大工と呼ばれる。地域に根差した社寺を補修する宮大工から、世界遺産や国宝などの重要文化財に指定されている建造物の修繕にあたる宮大工まで、どこを拠点にして何を専門に活動しているのかはさまざまだ。文化財を専門にしている宮大工は、全国各地を渡り歩いて修理をするので昔から「渡り大工」とも呼ばれている。宮大工という職を知っている人は多いだろうが、身近に宮大工がいる、という人はほとんどいないのではないだろうか。それもそのはずで、宮大工は現在「絶滅危惧“職種”」と比喩できるほど減っている。残っているのは全国で100名ほどと推測される。宮大工は、一人前になれるまでに最低10年かかると言われており、その専門性の高さと全体的な高齢化が相まって、後継者が育たないままに引退してしまう宮大工が少なくない。

なぜ、宮大工にはそれほど高い技術が求められるのだろう。一般的な家屋を建てる大工とは何が違うのか。まずは、知識面。建築学は当然のこと、場合によっては宗教学や史学といった幅広い知識が求められる。案件数としては極めて少ないが、神社仏閣を「新築」する場合、地盤から木材の種類、宗派による特徴、ディテールの意匠、参拝者の導線など、知っておくべき知識は建築学の範囲をやすやすと飛び越える。また、「建物の西側は西の方角からの木材を使いたい」などといった神主や住職の意向が強い場合も多く、建築上の向き不向きといった専門家からの視点を提供しながら細部まで決定していく。

伝統的な木組みの技法は耐震にも優れ
数百年の耐性を持つという

宮大工に求められるのは、それだけではない。実際に手を動かす技術面でも、専門性・難易度が高いのだ。たくさんの技術が結集した日本の伝統建築において、代表的な手法の一つが「木組み」。一般的な木造建築は、釘や金物が使われるが、木組みはそれらをほとんど使わず、凸凹に切込みの入った木と木をはめ合わせていくことで組み上げていく。建築物は場所によってかかる力の強さが異なり、それらを計算しながら材木を選んでいく必要がある。同じ木材でも、どの箇所を切り取ったかによって強度が違うため、木組みは座学による知識の習得だけでなく、実際に目で見て触った経験の集積が必須だと言われている。すべてが手作業で行われる木組みは長い工期を要し、短いものでも2年近く、長いものだと10年ほどかかるものもある。そのため、施工完了時の達成感とよろこびはひとしおだ。

新築の社寺こそ減っているが、既存の建築物の老朽化は年々進んでおり、宮大工の活躍の場が激減することはなさそうだ。むしろ、木組みは日本の多湿な気候風土に合っており、地震にも強い工法なため、最近は社寺や文化財の建築物だけではなく、一般家屋を木組み工法で発注する人たちも少なくないという。古民家を修繕して、住居や商店にリノベーションする潮流もあり、世の宮大工ニーズはいまだに高いことがうかがえる。

宮大工になる方法は、学校か弟子入り

そんな高い技術力の求められる宮大工だが、「宮大工」を証明する国家資格などは存在しない。大工としての技術を持つ「建築大工技能士」という国家資格はあるが、文化財などを専門にする宮大工と大工には明確な線引きがなく、言ってしまえば、「宮大工」と名乗っている技能者は「宮大工」なのだ。

宮大工になりたい人の選択肢は、大きく二つだ。宮大工を養成する伝統建築学科などを有する学校に通うこと、または、宮大工の工務店に弟子入りすること。前者の場合、学校数こそ多くないが、通常より長い3~4年制の専門学校などがあり、汎用性の高い2級建築士を取得したあと、伝統建築工法技術を修得するために、伝統建築の仕組み(四方転び、棒すみ、照すみ、彫刻などの応用実技)を実践で学び身に付けていく。ただし、進学にせよ弟子入りにせよ、神社仏閣の修繕・改築を手掛ける工務店はそれほど多くなく、自分が就職したいエリアで求人が見つからない可能性もある。そのような場合には、一般建築物を手がける工務店にいったん就職し、基本的な大工の技術を身に付けながらタイミングをうかがい、求人のニーズと一致したときに宮大工としての修業を始めるという選択肢もある。

宮大工を目指すのなら、次のような資質が求められる。前述の通り、宮大工は修業期間が長く、通常の大工の3倍ほど下積み期間を過ごさなければならない。また、覚えなければならない知識や技術も多く、修業は過酷なものになる。そのため、まずは忍耐力や体力が必要だ。師匠や先輩からのアドバイスに素直に耳を傾け、自分のものとして吸収していけるだけの柔軟性や主体性も成長スピードを左右するだろう。何より、伝統を守りたいという志やものづくりが好きという情熱がないと、下積みも工期も長い宮大工の仕事は務まらないかもしれない。

宮大工としての独立は、非現実的なのか?

宮大工の勤務時間は、基本的に「日が出ている時間」。朝8時頃から18時頃まで作業を行うのが一般的だ。神経を尖らせる必要のある仕事が多いため、1日に複数回は必ず休憩をとる。多くの大工と同じように週休1日である場合が多いが、年末年始やお盆休みといった参拝客が増える季節には作業を行わないため、比較的ゆったりとして休暇をとることができるという。数年間にわたる現場が終わったあとは、まとまった休暇をとる人たちも多いようだ。

社寺の修繕などには数年をかけることも普通。
数百年を経ても残る仕事のやりがいは大きい

報酬面ではどうだろうか。宮大工は、似たような現場系の職業と比べると、比較的高収入であるといえる。下積み期間は、日当約1万円前後、一人前ではないが技術力がついてくると1.5万円前後、棟梁クラスになると約3万円が日当として計算される。工務店の正社員として雇用している場合には、ボーナスが支給されるケースもある。しかし案件数や天候にも左右されやすい職業のため、報酬面では月収にばらつきが出ることがある。

宮大工は肉体労働が中心であるため、年齢が上がるほど仕事に困難が伴う。個人差はあるだろうが、高齢での現場作業はかなり厳しいだろう。現場から引退後も収入を得るには、独立して自身の工務店を持つことが考えられるが、神社仏閣の新規建設案件は極めて少ない。既存の社寺の修繕作業も、すでに地域の工務店に握られており、同じ工務店に長い間委託していると予想される。宮大工としての独立はいばらの道になりそうだが、古民家のリノベーションや木組みでの一般家屋の建築など、裾野を広げれば十分に活躍の場を創り出すことはできるだろう。

この仕事のポイント

やりがい文化的価値の高い建築物を自分の手で守り、次世代に伝承していくという使命感を感じられる。施工期間が長くなるケースが多いが、施工完了時の達成感は何ものにも代えがたい。
就く方法伝統建築技法を習得できる専門学校に通うか、宮大工を手掛ける工務店に弟子入りをするか。そもそもの宮大工の数が少ないこともあり、求人数は少ない。現役の宮大工を見つけ、交渉しにいくくらいの気概が必要だろう。
必要な適性・能力作業は屋外で行われることがほとんどで、重い資材を持つこともあるため、体力は必須だ。また、一般的な大工と比べて学ぶことが多く、下積み期間は3倍近くにものぼるため、忍耐力や柔軟性、主体性も必要。
収入現場系の仕事の中では比較的高収入。下積み期間は日当1万円前後、中堅で1.5万円前後、棟梁クラスで3万円ほどとなる。工務店を開業し案件数も安定すれば、稼ぐことも可能だが、体力勝負であるため現役期間は短いことも考慮しなければならない。

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