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イベントレポート

IAFアジア日本大会2013にみるファシリテーションの最新動向
~16th IAF-Asia Conference Tokyo 2013~
(2013/10/30掲載)

世界63ヵ国1,300人のプロファシリテータが所属するIAF(International Association of Facilitators)と日本ファシリテーション協会(FAJ)の共催によるファシリテーションの国際会議「IAFアジア日本大会2013」が、2013年9月19日~22日に東京両国のファッションセンターで開催されました。IAFの大会が日本で開催されたのは今回が初めてのことです。アジア、オセアニア、北米、欧州など十数ヵ国からファシリテーションのプロが来日し、35のワークショップ・セッションが行われました。本レポートでは、この大会のために来日したIAFのキンバリー・ベイン会長とアジア地区ディレクターのジャッキー・チャン氏とのインタビューの内容、および大会で行われたセッションを通してみられるファシリテーションの最新動向をダイジェストでお伝えします。

[ 取材・レポート ] Mindechoe 代表 香取一昭


最終日に、皆で紡いだ絵巻物を前に撮った記念写真
■概要報告
名称 IAFアジア日本大会2013
(16th IAF-Asia Conference Tokyo 2013)
開催期間 2013年9月19日(木)~22日(日)
大会テーマ “Weaving stories toward global facilitation frontier”
未来に向けて私たちのファシリテーション物語を紡いでいこう
会場 国際ファッションセンター/KFCホール
参加者人数 14ヵ国から221名が参加 (海外からの参加は60名)
セッション数 本大会:25セッション/プレカンファレンス:10セッション
主催 IAF (国際ファシリテーターズ協会)
特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会(FAJ)

IAFは北米、ヨーロッパ、オセアニアなど地域ごとに毎年大会を開催しており、今回の大会はアジア地区での16回目の大会に当たります。

アジア地域での大会ですが、参加者はアジアにとどまらず北米やヨーロッパ、オセアニアなどからも多数参加しました。参加者数はプレカンファレンスと本体会の合計で221名(重複分を除く)、このうち日本からの参加者は161名で、海外からは60名が参加しました。

【今回の参加者の内訳】
今回の参加者の内訳 図表

これまでに開催されたIAFアジア大会の概要は図表に示す通りで、今回のカンファレンスは最大規模のものとなりました。

【IAF Asia Conference これまでの開催概要】
【IAFアジア大会のこれまでの開催概要】
IAF Asia Conference これまでの開催概要、IAFアジア大会のこれまでの開催概要 図表
■IAFとは

IAF(International Association of Facilitators)は情報交換、ネットワーキング、年次大会、研究等を通じてファシリテーションの普及させることを目的として1994年に設立されました。現在、IAFは全世界に1,300名の会員がいますが、日常の活動はアフリカ、アジア、カナダ、ラテンアメリカ・カリビアン、ヨーロッパ、オセアニア、アメリカの七つの地域ごとに展開しています。

また、IAFはCPF(Certified Professional Facilitator)というファシリテーターの認定制度を持っていて現在約500名のCPFが活動しています。日本でも昨年2名のCPFが誕生しましたが、今年は新たに12名が認定されました。

IAFのキンバリー・ベイン会長にインタビュー

キンバリー・ベイン会長Photo
オープニングで挨拶するキンバリー・ベイン会長

今回の大会のため来日したIAFのキンバリー・ベイン会長に、IAFの動向と今回の大会の感想を伺いました。

―― IAFは最近新しいビジョンを採択したそうですが、その背景と主要なポイントについて教えて下さい。

ベイン:グローバル化やIT環境の進化などの最近の急激な環境変化を踏まえて、本年8月にIAFの新しいビジョンが理事会で承認されました。そこに盛り込まれた主要点は次の通りです。

(1) ファシリテーションの社会的認知度の向上

ファシリテーション・スキルの重要性についての認知は高まっていて、職務記述書などにはファシリテーション・スキルの必要性が書き込まれています。しかし、私たちはファシリテーションを単なる「スキル・セット」として捉えるのではなく、「プロフェッショナルな職業」として捉えて欲しいと考えていますので、そうした社会的認知を高める活動を展開していくつもりです。

具体的にはファシリテーションが実際に成果を出していることを示すことが重要であり、ファシリテーターだけでなくクライアントサイドからの証言が重要だと考えています。今回北米で始めた「ファシリテーション・インパクト・アウォード」では、ファシリテーションが組織やコミュニティーに具体的な効果をもたらした事例を発掘し、クライアントとファシリテーターを表彰しました。今後は北米以外の地域にも、拡大していこうと考えています。

(2) 多様なファシリテーションを視野に入れて活動する

IAFでは、これまでコンテンツについての中立性を保ち、クライアントの目的達成のためにプロセスを設計し進行する「プロセス・ファシリテーション」に重点をおいて活動してきました。

しかし、その後ダイアログやワールドカフェ、グラフィック・ファシリテーション、バーチャル・ファシリテーションなどの新しい手法が広く使われるようになってきました。プロセス・ファシリテーションを重視するIAFの基本的姿勢は今後とも維持していきますが、これからはそれ以外の多様なファシリテーションにも目を向けていきます。

(3) 認証制度の拡充

ファシリテーションが専門領域として社会的に認知してもらうためにはコンピテンシーを明確化して、コンピテンシーを備えている人材を認定することが重要なので、IAFとしては今後とも認定制度の運用に力を入れていきたいと考えています。

しかし、それと同時に新しい時代に適応した様々なスキルの認定も始める必要があると考えています。具体的には現在のCPFに初級、中級、上級などの段階を設けることや、グラヒック・ファシリテーション、バーチャル・ファシリテーション、ラーニング・ファシリテーションなどの新しい認定制度を導入することも検討したいです。また、グローバル化に対応してより広い層に広げるため、英語以外の言語での受験もできるようにしていく方針です。今回は手始めに日本語での受験も行いましたが、3名の合格者をだしたことはとても喜ばしいことです。

―― 今回のカンファレンスについてはどのような印象を持ちましたか?

ベイン:今回のカンファレンスはとても素晴らしいものだったと思います。特に印象的だったことは、日本の参加者の皆さんが、とてもオープンでフレンドリーだったことです。今回参加した日本のファシリテーターは若い人が多くて、真摯にファシリテーションを学ぼうとする姿勢が感じられたことにとても感銘を覚えました。彼らが今後ファシリテーション・スキルに磨きをかけて、職場やコミュニティーでファシリテーションを生かしていったら素晴らしいと思います。

―― 日本のファシリテーターに期待することは何ですか?

ベイン:日本では数多くのファシリテーターが活躍していることを知り、心強く感じました。また、ファシリテーションについて積極的に学ぼうとする姿勢に感銘を受けました。今後皆さんがさらにファシリテーションのスキルやノウハウを学ぶために、IAFもお役に立てるのではないかと考えています。

たとえば、IAFはこれまでに多くの知識や経験、スキルを蓄積してきていて、ウェブサイトにはかなりの資料が掲載されています。その中には「Facilitation Journal」といった学術論文も含まれています。しかし、それらはほとんどが英語で書かれています。そうした貴重なナレッジ・データベースが英語以外の言語に翻訳されればファシリテーションの更なる普及に役立つと考えています。IAFの資料を日本語に翻訳してもらえばありがたいです。

IAFアジア地区代表のジャッキー・チャン氏にインタビュー

IAFのアジア地区代表である台湾のジャッキー・チャン氏に、今回の大会の印象や日本のファシリテーターへの期待などを伺いました。

ジャッキー・チャン氏Photo
ガーラ・ディナーで歓談する
ジャッキー・チャン・ディレクター

―― 今回の大会の感想をお聞かせください。

チャン:素晴らしい大会でした。私にとっては、今後とも忘れられない大会になると思います。特に印象的だったことは、日本のファシリテーターの皆さんがフレンドリーで優しく思いやりに溢れていたことでした。

また、大会の企画と運営に携わった皆さんのチームワークにも感心しました。複数のチームで役割を分担して活動しながらも全体として連携がとれていて、チームワークのお手本のように思いました。

さらにオープニング、ガーラ・ディナー、クロージングなどブログラムの随所にクリエイティビティーが発揮されていました。絵や音楽、ダンスなど全ての感覚を総動員して参加者を巻き込んでいくやり方は圧巻でした。

―― 日本のファシリテーターおよびファシリテーションについては、どうお感じになりましたか?

チャン:ファシリテーターの皆さんの熱心さに感動しました。参加者の中には英語が必ずしも上手ではない人も含まれていましたが、非常に熱心にコミュニケーションをとろうと努力している姿に好感を持ちました。

今回は日本のファシリテーターが多数参加していましたが、この他にも日本ファシリテーション協会には1,600名の会員がいるなど、数多くのファシリテーターがいることは新鮮な驚きでした。

また、今回の大会では書籍販売のコーナーがあってファシリテーション関係の書籍が多数販売されていたことも、日本におけるファシリテーションが普及していることの証だと思いました。

―― ジャッキーさんはIAFのアジア地区ディレクターという立場でいらっしゃるわけですが、グローバル化の中で、私たちアジアのファシリテーターに期待されている役割は何だとお考えですか?

チャン:アジアのファシリテーターは、他の地域と比較するとまだまだ少数派です。しかし、アジアにはその地域の文化的背景から生まれたユニークなファシリテーションのスタイルや手法があります。
グローバル化の時代にあっては、世界の他の地域のファシリテーターとの交流を盛んにして、ファシリテーションに対する考え方ややり方についてお互い学び合いファシリテーションをより豊かなものにしていく良い機会だと思います。

―― 最後に日本のファシリテーターの皆さんへのメッセージをお願いします。

チャン: すでにお話ししましたように、今回の大会を通じて日本では数多くのファシリテーターが活躍していて、日本の文化的背景から生まれた多様なファシリテーションが行われていることを理解しました。

日本のファシリテーションは、細やかな気配りが感じられ、とてもリラックスした雰囲気で心地よい場でした。おそらくこうした特徴は、これまでの長い歴史の中で育まれてきたものだと考えます。

これからは、そうした豊かなファシリテーションのスタイルや、手法を世界に広めていって欲しいと思います。多少英語がまずくても気にされないで、積極的に情報発信していってください。

ファシリテーションの新しい傾向

今回の大会では、プレカンファレンスで10セッション、カンファレンスで25セッションの合計35セッションのワークショップが行われました。その中には、対立状態からの相互理解と合意形成、参加者の認知スタイルの違いへの対処などこれまでの定番とでも言うべき内容もありましたが、ファシリテーションの最新動向をうかがわせる内容も数多く含まれていました。それらの中から主要なトレンドを挙げると次の通りです。

(1) グラフィック・ファシリテーション


グラフィック・ファシリテーションのセッション風景

今回は全体で四つのセッションが実施され、いずれも多くの参加者が熱心に参加していました。日本でも「ファシリテーション・グラフィック(ファシグラ)が盛んに使われるようになっていますが、今回の大会におけるセッションはいずれも「グラフィックを活用したファシリテーション」であり板書をグラフィックで描く「グラフィック・レコーディング」とは一線を画するものでした。


(2) バーチャル・ファシリテーション


インターネット電話を使ってカナダから参加して
ワークショップのファシリテーターをつとめた
マリ・ミゾべ・チュウさんと東京会場のバーバラ・マッケイさん

インドのファシリテーターであるビネイ・クマール氏は「多文化的背景のあるチームをファシリテートする」と題したセッションを行いましたが、その内容はインターネットによる電話会議をどう効果的に行うかに重点が置かれた内容でした。また、カナダのマリ・ミゾベ・チュウ氏はバーバラ・マッケイ氏と共同してファシリテーションすることになっていましたが来日できなくなり、当日はインターネットの電話会議を使ってファシリテートしました。パソコンの画面を通じてのファシリテーションでしたが、ほとんど違和感を感じずに参加できたのは驚きでした。

(インターネット電話を使ってカナダから参加してワークショップのファシリテーターをつとめたマリ・ミゾべ・チュウさんと東京会場のバーバラ・マッケイさん)

(3) メタファーやイメージの活用

今回の大会を通じての特徴の一つにメタファーやイメージがさまざまな場面で活用されていたことが挙げられます。

例えば台湾から参加したアメリカ人のラリー・フィルブルック氏のセッションでは、プロセス・デザインで、現状とありたい姿をイメージ化して具体的なプロセスの設計に役立てる方法が行われていました。

また、バーバラ・マッケイ氏とマリ・ミゾベ・チュウ氏もプロセス・デザインで考慮すべきポイントを「五大(地水火風空)」のメタファーで考えるという方法を使うワークショップを行いました。
この他、多くのセッションでイメージカードが使われていたなどイメージやメタファーなどの活用が広がってきていることが印象的でした。

(4) ファシリテーターのあり方


ラリー・ドレスラー氏はマスクを使ったワークショップで
ファシリテーターのあり方についての気づきを与えた

アメリカから参加したラリー・ドレスラー氏は、対立や不信感、怒り、不安など感情的な緊張により混乱し、ヒートアップして収拾のつかなくなった中においても冷静、沈着に事態を収拾するためにはファシリテーターの内面的なあり方が重要だとしてその具体的な方法についてのワークショップを行い、多くの参加者を集めていました。ファシリテーションがともすると技術論に走りかねない中にあって、ファシリテーターの内面に目を向けることも重要視されるようになってきました。


(5) ダイアログ

「ダイアログ」と銘打ったセッションこそなかつたものの、その内容を見るとダイアログによる話し合いが行われているセッションが多数見受けられました。

従来IAFにおけるファシリテーションは「プロセス・ファシリテーション」に重点が置かれてきたため、合意形成や結論を求めないダイアログはある種の違和感を持って受け止められてきましたが、最近になって変化が見られるようになってきています。これはキンバリー・ベイン会長の言うようにグローバル化に伴って新しいスタイルのファシリテーションも取り入れて行こうとするIAFの傾向の表れなのかもしれません。

おわりに

グローバル化の進展とともにビジネスのみならずNPO、NGOや市民団体の地域開発など、さまざまな分野でファシリテーションの重要性が高まりつつあります。そしてファシリテーションに携わる日本の多くの人々がファシリテーションのグローバル化の必要性を感じてきました。

そうした中でファシリテーションの世界大会が今回初めて日本で開催されたことは、極めて大きな意味を持つものだったと考えます。

日本ファシリテーション協会は、本年6月に「国際交流室」を設置し、海外のファシリテーション団体との交流を更に推進しようとしています。今回の大会が、日本におけるファシリテーションの新しいフロンティアを切り開くきっかけになればと念じています。


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