<就職サイト5社に聞く> 26卒分析と学生動向
合理的な就職活動
「早期からの確かな情報発信」が採用成功のカギ
株式会社ワンキャリア コンサルティングセールス部 マネージャー
矢野 優歌氏

2026年卒の新卒採用市場や27卒の見通しなどについて、株式会社ワンキャリアの矢野 優歌氏に話を聞いた。
就職活動の「早期化」と「長期化」
2026年卒における学生の就職活動の特徴を教えてください。
2025年卒に引き続き、就職活動の「早期化」と「長期化」が顕著に見られました。情報収集の開始時期について尋ねたところ、最も多かったのは「大学3年生の3月以前」で42.9%。「大学3年生の4月」という回答は全体の40.1%で、大学3年生の4月までに就職活動を開始している学生が80%以上に上ることが明らかになりました(※1)。
昨今の学生は「失敗したくない」という意識が非常に強く、何かを購入する際は徹底的にレビューを確認します。就職活動においても、多くの企業に手当たり次第エントリーするのではなく、早くから情報収集を行い、ここだと思える企業を見つけ出します。そして、その情報が確かかどうかを、内定に至るまで長期的に見極めようとします。大学3年生のうちに内定を得ている学生も珍しくありません。特にスタートアップ企業は、年内に内定を出す動きが顕著です。
※1 2026年卒 就職活動に関するアンケート、2024年6月 ワンキャリア調べ
早期化の流れに合わせて、インターンシップも早い時期から開催されているのでしょうか。
夏に大学3年生に向けたインターンシップを開催する企業が多いですが、大学2年生を対象に3月から5月頃にインターンシップを開始する企業も増えています。学生の動きは年々前倒しになっているので、人事担当の皆さまはハードに感じられるかもしれませんが、そのタイミングを逃すことのリスクはかなり大きいです。
就活生のインターンシップにおける動きとしては、まずオンラインの「1dayインターン」に気軽に参加。企業に興味を持った場合、オフラインの「2daysインターン」など、複数日程で密度の高いプログラムに参加します。現場の社員と交流したり、社内の雰囲気を見たりすることで、企業の採用ページやネットには掲載されていないリアルな情報を得ようとする学生が多いようです。
そうした学生の動きの中で、採用に成功する企業と失敗する企業を分けるポイントはどこで分かれたのでしょうか。
主に二つのポイントがあると考えています。
一つ目は、「早期から採用活動を始めていること」。学生が最も活発に情報収集を行うのは、大学3年生の夏のインターンシップに向けた時期です。この時期に自社のことを知ってもらえるかどうかが、その後の採用活動を大きく左右します。タイミングを逃してしまうと、すでに他社と接点を持っている学生とのコミュニケーションになるため、多大な時間とリソースを費やすことになります。
二つ目は、「企業側が提供している情報と実態にギャップがないこと」。学生はさまざまなチャネルで情報収集を行うため、企業が発信する情報と実態に乖離があると、すぐに見抜きます。良い点だけを伝えても、新卒向けだけでなく中途向けのクチコミサイトなど、複数の情報源を横断して確認することで、その真偽を確かめられてしまうのです。
特にインターンシップでは、学生は社員の些細な行動や雰囲気まで細かく観察しています。社員同士の会話や、楽しそうに仕事をしているかどうかは、企業の社風を判断する材料になるでしょう。学生への対応を誤ると、負のクチコミとして拡散されてしまうリスクもあります。人事パーソンだけでなく、受け入れ側の社員一人ひとりが、学生と向き合う姿勢を持つ必要があります。

「大学2年生の3月以前」から情報集をする学生が半数
2027年卒以降の採用市場の動向についてはいかがでしょうか。
2026年卒と同様、早期化と長期化の傾向はさらに加速する見込みです。当社の調査データによると、2027年卒の学生は「大学2年生の3月以前」に情報収集を開始している割合が53.5%と、半数以上に上ります。また、「大学3年生の5月まで」に大学3年生時の夏のインターンシップの情報収集を開始している割合は、99.2%に上りました(※2)。自社がどのような企業と競合しているのかを把握し、差別化を図った上で、学生が活発に動くタイミングに合わせて情報を発信することが、2027年卒における採用成功の秘訣でしょう。
学生の潜在能力を引き出す新サービス
あらためて、貴社のサービスについてご説明ください。
「ワンキャリア」(学生版)は、東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学といった有名大学群の学生登録率が95%以上(※)の就活支援サービスです。この圧倒的なネットワークから得られる豊富なキャリアデータを活用したのが、新卒採用サービス「ワンキャリア」(企業版)です。
※各大学もしくは大学院を卒業するユーザーの、卒業する学生総数に対するシェア率(2025年6月時点の実績)
新卒採用サービスは年度ごとに区切られるのが一般的ですが、「ワンキャリア」(企業版)は年度の概念にとらわれません。そのため、2026年卒の採用活動で得られた企業への評価やクチコミ、評点が、そのまま2027年卒の資産となります。
学生の「本音」が分かることも、大きな特長です。学生は企業が主催する説明会後のアンケートで、本心を書きにくいもの。そこで「ワンキャリア」(学生版)では、匿名で率直なクチコミを投稿できるようにしました。企業は自社の採用活動に対する学生のリアルな評価を知ることができるので、効果的な改善につなげられます。
2027年卒に向けた新たなサービスはありますか。
「ワンキャリア」モバイルアプリ版の新機能として、AIを活用した面接トレーニングサービス「就トレ」を、2025年3月から提供しています。当社に蓄積された15万件以上のエントリーシートや面接の回答データをAIが学習し、学生一人ひとりに個別最適なフィードバックを提供するサービスです。
「就トレ」は、「面接で本来のポテンシャルを伝えきれない就活生」と「採用の可能性があったはずの就活生を逃してしまう企業」のために作られました。これまで面接の練習は、先輩や友人など、身近なつながりのある人に頼るしかありませんでした。「就トレ」は、「話が長すぎる」「結論から話せていない」といった具体的なアドバイスを、AIが即座にフィードバックしてくれます。スコアも出るので自身の成長を可視化でき、効率的に面接対策を進めることができます。学生の面接におけるスキルの向上は、企業にとっても採用の可能性を広げることになるでしょう。
最後に、今後の新卒採用において、企業が特に意識すべきことをお聞かせください。
学生が「ファーストキャリア」だけでなく、「セカンドキャリア」や「サードキャリア」まで見据えて就職活動をする傾向が強まっています。クチコミサイトを利用して、志望企業の社員がその後どんなキャリアを歩んでいるかをチェックする学生も多いようです。企業にとって、卒業生(アルムナイ)の情報を積極的に公開し、「この会社で働くことが、その後のキャリアにどうつながるか」を伝えることは、魅力的なアピールポイントになるでしょう。
採用活動の早期化や長期化は、人事パーソンに多大な労力を要求します。全てのプロセスに時間をかけるのではなく、外部のサービスをうまく活用し、人にしかできない「人と向き合うこと」に時間をかけることが、これからの採用活動には不可欠です。

社名 | 株式会社ワンキャリア
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本社所在地 | 〒150-0043 東京都渋谷区桜丘町20-1 渋谷インフォスタワー16階 |
事業内容 | キャリアデータプラットフォーム事業(採用DX支援サービス、その他) |
設立 | 2015年8月 |
代表者名 | 代表取締役社長 執行役員CEO 宮下 尚之 |
URL | https://onecareer.co.jp/ |
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