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編集部注目レポート掲載日:2018/01/10

強さと優しさが増収増益の原動力
ランドセルの協和が実践する「人を大切にする経営」とは

株式会社協和 専務取締役

若松秀夫さん

取引先の上司に労働環境改善を訴える

「仕入れ先と対等な立場で、公正に取引する」ために、どんなことを行っているのでしょうか。

すべての仕入先に対して、かならず現金決済をしています。 手形を使って取引をしている会社も多いようですが、仕入れ先にも社員の生活があるので 必要な配慮だと考えています。

経営理念の中にある通り、仕入先は当社の事業を支えてくれる協力者です。公正かつ対等な条件で取引することを常とし、どちらが上か下かといった考えはありません。無理な価格での取引も行いません。

取引先の社員を救済的に雇用したことがあるそうですね。

数年前、取引先の社員がサービス残業で苦しんでいました。彼の上司に私は労働環境の改善を訴えましたが、「労働時間が短くなれば利益が出なくなる」といって、取り合ってくれません。残業に苦しむ彼に、「なんのために、誰のために働くのか。このままでは人間らしさを失ってしまうよ」と言うと、彼から弊社への転職の希望があり、採用することにしたのです。情けをかけたわけではありません。力のある人だからこそ、適正な労働環境で働くことで初めて本来の能力を開花させられる、と考えたのです。その後も数名、同じようなケースで採用したことがあります。

社員の方々は、会社の方針をどのように感じていらっしゃるのでしょうか。

私は朝礼などで繰り返し、会社の方針と私の考えを伝えています。そして、「なんのために働くのか、どう生きたいのか」を社員が自分で考えるよう、呼びかけています。

また、私は社員全員とほぼ毎日メールをやり取りしています。一日でおよそ400通になりますが、これによって、従業員の個性や置かれている立場、どのように働きたいのか、といったことを理解できるようになりました。

このように理念への共感を徹底していますので、社員同士でも「強くて優しい」対応をしてくれる人が多いですね。例えば、営業部長が介護で2ヵ月休んだときは、チームのメンバーが快く仕事の穴埋めをしてくれました。

経営の不安を払拭する方法はただ一つ

人を大切にする経営でやっていけるのか、と疑問を持つ方も多いと思います。

いつだって経営には不安がつきものです。しかし、何のために働き、生きるのか、それを考えれば、自ずとやるべきことがわかり、不安を克服できます。それに、会社のために一所懸命働いてくれる社員以上に、会社の力になる財産はありません。お金をいくら溜め込んでも、景気のよい話で「優秀」な人を集めても、不安はなくならないし、良い結果にはなりません。結局、会社は何のためにあるのか、自分の信念を持つこと。それに尽きます。

若松さんの優れた判断力と決断力は、「会社とは何か」本質を見極めようとする姿勢によって養われていると敬服しました。貴重なお話をありがとうございました。

株式会社協和専務取締役 若松秀夫さん Photo
小酒部さやか(株式会社natural rights 代表取締役)

取材:小酒部さやか(株式会社natural rights 代表取締役)

2014年7月自身の経験からマタハラ問題に取り組むためNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞し、ミシェル・オバマ大統領夫人と対談。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より『マタハラ問題』、11月花伝社より『ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~』を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rights(自然な権利)となるよう講演・企業研修などの活動を行っており、Yahooニュースにも情報を配信している。

ライター:水野宏信

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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