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人事の解説と実例Q&A 掲載日:2024/03/26

うつ病による欠勤が続く従業員にどう配慮するか

うつ病を患っている従業員が、本人の希望もあり、休職せずに投薬で治療しながら働いていることがありますが、数日出勤したら数日欠勤することを繰り返す、出勤してもほとんど仕事ができない、といった状況も多いようです。

休職して療養へ専念することをすすめたほうがよいのか、引き続き治療をしながら働いてもらったほうがよいのか、迷うこともあるでしょう。断続的に出勤と欠勤を繰り返すことは、他の従業員の負担にもつながります。このような場合、休職・復職に関してどう検討すればよいのかについて解説します。

就業規則に基づき、休職命令を検討する

うつ病を患いながら欠勤と出勤を繰り返す従業員がいる場合、就業規則の規定に基づいて休職命令を出すことを検討する必要があります。

労働者が欠勤によって完全な労務を提供できなければ、労働契約上は債務不履行となります。そのため、解雇を検討することが多いでしょう。しかし、治る見込みがある場合は、休職を命じて治療に専念させ、うつ病が治ってから復職してもらう方法を取るのが一般的です。

そもそも休職とは

休職とは、労働者に労務提供が困難な理由が発生した場合に、労働契約を維持したまま、就労の義務を免除するか、就労を禁止することをいいます。休職事由がなくなれば復職することになりますが、休職期間が満了しても休職事由が消滅していない場合、休職期間満了により退職となるか、解雇するのが一般的です。

休職制度を設ける際は、交通事故によるケガやガンの治療など、長期療養を必要とする私傷病を前提とすることが多いでしょう。しかし、従業員がうつ病や適応障害などの精神疾患などを抱えることは珍しくありません。そのため休職制度は、従業員のメンタル不調にも対応できるものにする必要があります。

休職を命じるには就業規則に規定が必要

休職は法律に定められた制度ではないため、休職制度を設けるかどうかは企業が決めることになります。ただし、労働者の労働条件にかかわることであり、定める際は就業規則に規定を設けなければなりません。就業規則に休職の規定がなければ、従業員に休職を命じる根拠がないことになります。

私傷病による休職の規定には、「欠勤日より2ヵ月経過しても治癒しないとき」など、一定期間欠勤していることを要件とすることが多くあります。しかし、一定期間の欠勤がなければ休職を命じることができないとすると、うつ病を患いながら欠勤と出勤を繰り返す従業員がいる場合、休職を命じることが困難です。そのため、「業務外の傷病により通常の労務を提供することができない場合」や「会社が休職が必要と認めた場合」など、労務の提供が不完全な場合も休職を命じることができるように休職事由を定めておくとよいでしょう。

就業規則に定めがない場合はどうすべきか

就業規則に休職制度がなくても、休職に準じた対応として、企業が一定期間の欠勤を承認し、期間満了時に復帰ができない場合は話し合った上で退職してもらうことは可能でしょう。しかし、事前にルールが決められていないと、復職できなかった場合にトラブルが発生する可能性があります。

休職制度があれば、定められた期間内にうつ病が治らず復職できないときは、退職(当然退職・自然退職)とすることができます。しかし、就業規則に定めがないと、休職期間満了で退職とすることは困難です。従業員から退職を拒否された場合、企業は不完全な労務提供を理由に解雇を検討することになります。

休職期間満了までにうつ病が治らない場合、従業員側の理由によって労務ができないことになるため、解雇できないわけではありません。しかし、解雇は労働契約法16条でその是非を判断することになるため、企業の対応が、企業規模、雇用形態、他の職種への変更の可能性など総合的な判断によって、その解雇が社会的に認められる程度にあるのかが求められます。

休職期間満了時に解雇するのであれば、同規模・同業種の他社の休職期間を参考にして休職期間を定め、収入面や復職のための措置や配慮について労働者に説明し、最終的に復職不可となった場合に解雇に踏み切るべきです。休職に入る前に、よく話し合い、本人の意向を踏まえて決めておくとよいでしょう。

休職を繰り返す従業員に対する復職の判断

復職して、再度休職に至った場合、もう一度復職させるかを検討する必要があります。

メンタルヘルス不調を抱える従業員が復職したときの対応

うつ病などのメンタルヘルス不調は、一見治ったように見えても再発することが多くあります。休職から復職しても再び欠勤を繰り返すケースもあるため、産業医のアドバイスを受けて、本調子に戻るまで配置転換や職務軽減などの措置も検討するとよいでしょう。

休職により従業員は、休職期間中の収入、職場復帰の可能性など多くの不安を抱えます。企業には不安を取り除くための配慮や説明義務を果たすことが求められます。また復職後に何の対応もしなければ、再発・病状悪化を招き、労働契約法5条の安全配慮義務の点で民事上の責任を問われる可能性があります。

主治医が「投薬により就業可能」と判断しているのであれば、配置転換や業務軽減措置を検討しなければなりません。ただし、賃金が減額されれば、労働契約法上の労働条件の不利益変更に該当する可能性もあるため、注意が必要です。

また、本人が勤務できると考えていると、配置転換や業務軽減の措置などの業務命令が無効であることを主張し、労使トラブルに発展する可能性もあります。本人への説明と同意を得ることが何よりも重要です。

従業員の同意を得て主治医と話をすることが可能なら、うつ病の状況や勤務する際の注意点などを情報共有する場を設けるとよいでしょう。従業員の状態によっては業務遂行能力が判断できる産業医と面談し、再度休職を命じることも検討する必要があります。

再度休職を命じる規定を設ける

メンタル不調では、病気が再発するケースがあります。そのため、再度休職が命じられるように、就業規則を整備する必要があります。「従業員が復職後6ヵ月以内に同一または類似の事由で通常の労務提供ができない事情が発生したときは、復職を取り消し、休職させる」「再休職の期間は、復職前の残期間とする」など、復職を取り消す規定を設けることが一般的です。再休職を命じられる規定を設けなければ、ルール上は休職を繰り返すことが可能になり、不都合が生じます。

再度休職した場合も、復職前の休職期間の延長と考え、復職前と通算した期間で復職できなければ、退職とすることができます。うつ病などのメンタル疾患は再発する可能性があることを念頭に置いて、短い期間ではなく、復職の判断基準として「6ヵ月」や「1年」など、ある程度長期間で設けるとよいでしょう。

復職可能な判断基準を設ける

私傷病による休職は、従業員の労務提供を免除し、休職期間中に治療に専念する期間です。期間中、従業員は治療に専念しなければなりません。しかし、うつ病などの精神疾患の場合、どの程度なら治癒といえるのか、どの程度なら復職が可能であるかを判断することは難しいでしょう。

休職をしてもうつ病が治らずに再度休職するようなことがあれば、就業規則に定めた休職制度に則って、最終的には退職や解雇も検討しなければなりません。復職の際は診断書の提出を求めるのが一般的ですが、「短時間勤務や軽易な作業であれば就労可能」「3ヵ月は軽作業に限定した勤務が必要」などと記載されている場合もあります。企業として明確な復職基準がなければ、復職の可否の根拠を従業員に説明できません。

治癒の基準を「従来の健康な状態と同様の通常勤務が可能な程度の状態にまで回復すること」などと基準を定め、以下のように具体的な基準を定めることも考えられます。その際、産業医との面談などを実施し、業務遂行能力を判断してもらうとよいでしょう。産業医がいない企業の場合、各都道府県にある産業保健総合支援センターでリワーク支援について相談することも可能です。

<判断基準の例>
  • 労働者が十分な意欲を示している
  • 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
  • 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
  • 業務に必要な作業ができる
  • 作業による疲労が翌日までに十分回復する
  • 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
  • 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している

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人事担当Aさん
東京都 / 繊維製品・アパレル・服飾(従業員数 1001~3000人)
投稿日:2020/12/25 17:42 ID:QA-0099482 その他 回答終了 回答数 3 件
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この記事ジャンル メンタルヘルス

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