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人事の解説と実例Q&A 掲載日:2021/02/01

不採用通知の方法と理由の伝え方

採用活動の中でも、不採用者に通知を出す際は細心の注意を払わなければなりません。通知の文面や、不採用となった応募者からの問い合わせの対応には万全を期すべきです。
不採用者には丁寧に対応しつつ理由を伝えないのが一般的ですが、不採用者との関係を継続する「タレントプール」を行う企業もあります。

1. 不採用通知の構成

不採用通知の代表的な構成は下記の通りです。

(1)一般的なビジネス文書と同様、頭語・結語・あいさつ文を入れます。
(2)社員募集に応募してもらったことに対するお礼を入れます。
(3)不採用に至った旨を知らせます。書面で理由を述べる必要はありませんが、「慎重に審査を行った結果」「ご期待に添えず大変申し訳ございません」と添えることで、応募者に配慮しつつ、誠実に選考を行ったことを伝えることができます。
(4)文末でも応募者への配慮を表します。

通知方法に関するポイント

(1)郵送の場合

履歴書や職務経歴書、選考の際に提出してもらった作品などを返却する場合は、返却時に不採用通知を同封して郵送するのが一般的です。
郵送する際、差出人欄には社名に加えて部署名も記載します。また、採用の成否はプライバシーに関わるため、封筒の表には「親展」と記載します。

(2)メールの場合

応募者のメールソフトの受信トレイには、多くのメールが届いている可能性があります。その中で応募者の目に留まるよう、メールの件名と差出人名には工夫が必要です。

<メールの件名・差出人例>
件名:【選考結果のご連絡】〇〇〇〇株式会社
差出人:採用グループ
(3)電話の場合

すぐに不採用を知らせる必要があるなどの理由で、電話で不採用を告知する場合も、後からからメールであらためて不採用通知を送っておくことをお勧めします。文章として残しておくことは、トラブルの防止につながります。

2. 不採用の理由を伝える必要はあるか?

不採用通知を出した後、応募者から「なぜ不採用だったのか教えてほしい」と問い合わせが来ることがありますが、理由を詳細に伝える必要はありません。

不採用理由の告知に法的根拠はない

企業側が応募者に対して、不採用の理由を伝えなければならない法的根拠はありません。学生時代の政治活動を理由に不採用とした「慶応大学付属病院事件」における裁判では、以下のような判決が下されています。

労使関係が具体的に発生する前の段階においては、人員の採否を決しようとする企業等の側に、極めて広い裁量判断の自由が認められるべきものであるから、企業等が人員の採否を決するについては、それが企業等の経営上必要とされる限り、原則として、広くあらゆる要素を裁量判断の基礎とすることが許され、かつ、これらの諸要素のうちいずれを重視するかについても、原則として各企業等の自由に任されているものと解さざるをえず、しかも、この自由のうちには、採否決定の理由を明示、公開しないことの自由をも含むもの と認めねばならない。

引用:裁判所 労働事件裁判例 昭和46(ネ)1584  慶応病院看護婦不採用 東京高裁 昭和50年12月22日

応募者との間でトラブルになる可能性がある

応募者から不採用理由について問い合わせがあり、採用担当者が電話で連絡したところ、「電話で済ますのではなく、出向いて説明しろ」と要求されてトラブルになることもあります。
上記で述べたように、不採用理由を伝えなければならない法的根拠はありません。ただし、選考の過程で、応募者が不信感を持った可能性も考えられます。不採用理由の説明を要求された場合は、具体的な説明をするのではなく、選考過程で不服に思うことがなかったかどうかを応募者から聞き取り、関係改善を模索した方が賢明でしょう。

選考基準が漏れる可能性がある

不採用となった詳細な理由を応募者に伝えると、企業の選考基準が外部に漏れるリスクがあります。現在は、個人がSNSを使って発信した情報が、あっという間に拡散されてしまうからです。

特に、新卒採用において選考基準が外部に漏れると、企業の利益を損なうことにつながりかねません。企業は新卒採用で多様な人材を確保したいと考えています。しかし、不採用理由がネット上の掲示板などに書き込まれて選考基準の一端が広まると、選考基準に合った人物像を装う人間が集まってしまう可能性もあります。

人材紹介会社には誠実に伝える
採用側と応募者の間に人材紹介会社が入っている場合は、人材紹介会社の担当者に不採用理由をしっかり伝える方がよいでしょう。

人材紹介会社を通じて中途採用を行う場合、企業側は求めるスキルや実績をある程度明確にし、人材紹介会社に伝えているはずです。それにもかかわらず採用に至らなかったのは、採用担当者と人材紹介会社の担当者の間で、求める人材像についてしっかりすり合わせができていない可能性があります。

不採用となった理由を人材紹介会社の担当者に伝えることで、マッチングの精度を高めることができます。

どうしても回答せざるを得ない場合は
不採用理由を問われ、「お答えできません」と対応することにちゅうちょする場合は、募集要項に即して「弊社が求める人材像に見合っていなかったため」とするか、「多数の応募者の中で相対的に評価させていただいた結果、やむなく不採用になりました」と述べるにとどめます。

3. タレントプールも視野に入れる

不採用・辞退者とのつながりをキープする

採用活動を行い、採否を判断する過程で「タレントプール」という手法を取る企業が増えています。「タレント(才能)」を「プール(蓄積する)」するという意味で、一度不採用になった人や採用を辞退した人と、企業がつながりを保ち続けることを指します。

不採用になった応募者の中には、あともう少しで採用基準を満たせた人材が含まれていることがあります。一度不採用になった応募者の中で、タレントプールのリストに入れておきたいと思った人に対しては、継続してアプローチするとよいでしょう。

タレントプールは、企業・応募者の両方にメリットがあります。企業にとっては、もう少しで採用基準を満たせる、あるいは採用基準を満たしているがタイミングが合わずに辞退された人材をあらかじめ把握でき、選考にかかる工数を減らすことができます。また、人材募集のためにかかるコストを圧縮することも可能です。一方、応募者にとっては企業とつながりを持つことにより、自身のキャリアプランを立てやすくなります。また、別の企業に勤めていても、より良い条件で転職する可能性を広げることができます。

企業が人材をタレントプールしておくには、不採用や採用辞退となった人のデータベースを作り、定期的にコンタクトを取る必要があります。彼らに対し、SNSやメールで情報発信するほか、タレントプールに取り組んでいることをアピールし、関心を持ってもらうことがポイントです。

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この記事ジャンル 選考・面接

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