新入社員の入社後コンディション推移調査
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区 代表取締役社長:藤島 敬太郎 以下、当社)は、2015年4月から2021年2月に取得した約2万3千名のデータ合計約20万件を対象に、新入社員の入社後のコンディションの推移とそれらの年度変化について分析し、その結果を公表しました。
1.調査背景と結果のポイント
未曽有の環境変化のなか、新たに社会人になった人たち、なろうとする人たちがいます。彼・彼女たちが組織の一員となっていく過程は、果たしてこれまでと同じものなのでしょうか。また、新入社員の受け入れを行う職場はどのような心構えをしておけばよいのでしょうか。
本リリースでは、約6年間にわたり収集した新入社員のコンディションデータの分析結果のご紹介をするとともに、2021年度の新入社員を受け入れるポイントについて考察します。
■調査結果より一部抜粋
●年度の後半になるにつれて徐々にコンディションが良好な社員の割合が減少している。また、入社後3カ月間におけるコンディション悪化回数が多いほどその後も悪化する傾向にある。
⇒一般的には、入社後3ヶ月(4~6月)のケアが重要視されており、調査結果でもその重要性が示されたが、入社後3ヶ月での状態悪化者のコンディションはそれ以降も悪化する傾向があるため、年間を通したケアが必要であるといえる。
●2020年は、例年に比べて同月比較でのコンディションが良好な社員の割合が多く、悪化する社員の割合が少ないことが分かる。
⇒2020年度の新入社員が新型コロナウイルス感染症対策による就業環境の変化の影響を強く受けたことを表している。
●2020年は、「働く環境」や「周囲のサポート」に関する負担感が例年に比べて上昇しにくい傾向がある。また4月の「成長実感」の値が例年に比べて相対的に低く、5月以降も大きな変動は見られない。
⇒2020年の大きな環境変化は、負担感についてはポジティブな影響を与えた一方で、入社直後に経験すべき「成長実感」を十分に得ることができないというネガティブな影響ももたらした可能性がある。
2.調査担当研究員のコメント 2021年度入社の新入社員受け入れのポイント
テレワークが浸透した企業も多いなかで迎える2021年度入社の新入社員受け入れの2つのポイントを解説します。
1点目は、新入社員の入社後適応期間(オンボーディング期間)と経験のデザインの見直しです。先行研究で入社3年目までの支援の重要性は多く語られてきました。2020年はこれまで1年目に想定していた経験ができず2年目以降で経験することになります。これは自律的に働けるまでに必要な期間が長くなることを意味します。入社2年目以降の経験のデザインを再検討する必要があるでしょう。入社後適応期間の経験のデザイン見直しにあたっての重要な観点は、新たな働き方にともない、若手社員が新たに力を発揮できる仕事も生まれていることです。そうした側面にも目を向けながら、成長の定義や、成長に向けた経験のデザインについても合わせて見直しを行う必要があるでしょう。
2点目は、人事データの積極活用です。テレワークなど新入社員の状況が見えにくい環境では、コンディションを把握するサーベイ結果などの人事データは個人や集団の状況を可視化し、その状況に至った要因を把握する有用なツールとなり得ます。また人事データを用いて個々人の状態をきめ細かく把握することは、昨今の若者の「自分のことを理解し、自分にあった丁寧な指導やフォローをしてほしい」という価値観にも沿うものといえます。これまで経営や人事部門のみが全体施策の検討のために利用していた人事データを、職場の上司が職場でのマネジメントツールとして活用することをお勧めします。
以上のように、2021年度入社の新入社員の受け入れには、職場や働き方の変化を踏まえた育成プランの設計と関係者の巻き込み、互いの価値観を理解し合うための時間をかけた「働きかけ」や「支援」が鍵となりそうです。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ / 3月26日発表・同社プレスリリースより転載)