週休3日制
週休3日制とは?
週休3日制とは、1週間の休日が3日となる働き方のことです。全従業員に週休3日制が適用されるケースのほか、社員の希望によって選択する選択的週休3日制があります。週休3日制の形態としては、所定労働時間の減少に応じて給与・仕事量が減るもの、休日以外の日の1日の労働時間を増やして給与は変わらないもの、所定労働時間が減少しても給与が変わらないものの三つの種類に分けられます。
日本では、ヤフーが2016年に選択的週休3日制の導入を発表したのをきっかけに注目を集めました。さらに政府が2023年6月にまとめた「こども未来戦略」に選択的週休3日制について盛り込んだことで、多様な働き方を支える制度として広まりつつあります。
1. 週休3日制の分類
週休3日制は、その名の通り1週間の休日が3日となる制度です。週休3日制の中でも、労働時間と給与額の変動の方法で種類が分けられます。
完全週休3日制とは?
1週間に3日間の休日とする休日制度が「完全週休3日制」です。この制度の導入にあたっては、労働時間と給与の変動をどうするかがポイントになります。
現在、企業が全従業員に対して週休3日制を導入する場合、以下の対応が考えられます。
- 給与減額型:所定労働時間の減少に応じて給与と仕事量が減る
- 給与維持型:生産性を上げることで所定労働時間が減っても、給与や仕事量は変動しない
- 総労働時間維持型:1日の労働時間を延長することで、1週間の総労働時間を変えない。そのため、給与・仕事量は変わらない
※働き方・休み方改革取組事例集|厚生労働省の分類に基づく
「給与減額型」は、所定労働時間の変動にあわせて給与と仕事量が減るタイプです。ノーワーク・ノーペイの原則に基づくもので、考え方は時短勤務制度とほぼ共通しています。
二つ目の「給与維持型」は、所定労働時間は減るものの、生産性を上げることで給与や仕事量には変動がないタイプです。時間当たりの給与が上昇するため、休日の増加以上のモチベーションアップを図ることが期待できます。
最後の「総労働時間維持型」は、1日の労働時間を延長することで、休みが増えても1週間の総労働時間は変わらないタイプです。変形労働時間制と同じ考え方であり、総労働時間が維持されるため、給与・仕事量は変わりません。
どのタイプが適しているかは、企業の判断によって異なります。給与減少型は、時短勤務制度と同様であり、総労働時間維持型は変形労働時間制を用いたものです。給与維持型は、労働時間を短縮しても給与は変わらないため、労働者にとって有利な型です。
「給与維持型」週休3日制への高いハードル
週休3日制として、給与や仕事量を変えずに休みだけ増やす「給与維持型」を採用する場合、大きな問題となるのが生産性です。週休2日制と比較した場合、週休3日制の給与維持型では、労働時間が一気に20%削減されます。全社的に給与維持型の週休3日制を導入するとなれば、社内の業務効率化を図り、通常業務がこれまで通り維持できるように人員配置や業務フローを見直すことが必要です。
以前の高度経済成長期の日本では、週6日・48時間勤務が標準でした。この時期に週休2日を大手で初めて導入したのが松下電器産業(現パナソニックホールディングス)です。給与を減らさずに休みを増やすことに対して疑問の声も多くあがりましたが、業務効率化に取り組み、導入表明から5年後に週休2日制を実現させています。
給与維持型の週休3日制は、求職者にとって大きな魅力となり、採用においても訴求力を高めることになるでしょう。生産性向上と人材確保という観点から、高いハードルを越えようと、パイロット的に週休3日制をテスト的に導入する企業も見られます。直近では、2019年と2020年に日本マイクロソフトが試験的に導入し、大きな注目を集めました。
- 【参考】
- 週休2日「松下電器起源説」を追う|日本経済新聞
- 実現可能!? リモートワークでの週休 3 日制導入|Microsoft for business
- 「週勤 4 日 & 週休 3 日」を柱とする自社実践プロジェクト「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」の 効果測定結果を公開|News Center Japan
選択的週休3日制とは?
完全週休3日制と比べて、導入のしやすさから注目を集めているのが「選択的週休3日制」です。「選択的」という名称の通り、希望する労働者にのみ週休3日制を適用します。本人の希望によって選択できる点がポイントといえます。
選択的週休3日制は2021年6月に閣議決定された、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)に盛り込まれたことをきっかけに、働き方の多様化を実現する施策の一つとして注目を集めています。
希望者がライフスタイルに合わせて週休3日制を選択できることから、以下のメリットが考えられます。
- 育児や介護との両立
- 大学での学び直し(リカレント教育)
- 兼業や副業促進による働き方の多様性
「1日8時間で週4日勤務」というように、総労働時間の短縮を行う場合は、短時間正社員制度と同様の手順で導入を進めることが可能です。
2. 週休3日制が注目される背景
週休3日制が世間で大きく注目を集めたのは、2016年にヤフーが導入を発表したことがきっかけでした。その後、2021年の「経済財政運営と改革の基本方針2021」で、育児や介護との両立や地方との二拠点生活の活用として選択的週休3日制が盛り込まれ、さらに2023年の「こども未来戦略方針」にも取り上げられたことから、働き方の多様化・柔軟化を実現する施策として注目されています。
こども未来戦略方針では、選択的週休3日制が仕事と育児を両立する労働者に対してメリットがあるとされ、普及に取り組むと言及しました。少子化対策の一環として育児をしながら働き続けられる選択肢を増やすことは、企業の人材確保・人材育成の課題ともつながっています。
3. 週休3日制の企業事例
リクルート:総労働時間維持型
リクルートでは、年間休日が増える「週休約3日制」を導入しています。2021年4月からの新制度では、これまでの年間休日130日に15日加え、合計で年間145日の休日の取得が可能になりました。これを年間でならすと週休2.8日となり、週休約3日制と呼ばれています。
「公園のように出入り自由な会社」を掲げる同社では、休みを1週間に3日と固定するのではなく、個人の事情に合わせて自由に選択できる同制度を導入しました。なお、1日の所定労働時間は7.5時間から8時間に増加しています。
ユニクロ:総労働時間維持型
ユニクロが導入しているのは、変形労働時間制を用いた、1日10時間×週4日勤務のフルタイム契約です。土日祝を含む週4日勤務し、平日3日を休日とする形式です。給与は週休2日のフルタイムと同額となっており、店舗勤務の従業員の柔軟な働き方をサポートしています。
ヤフー:給与減額型
ヤフー株式会社では、2017年より介護や育児と仕事の両立を目的とし「えらべる勤務制度」を導入しています。土日の休日にプラスして、週1日休暇を取得できるというものです。
「えらべる勤務制度」では、制度利用による休暇分は無給となるものの、月単位で申請や変更(曜日変更、解除)が可能であり、例えば、小学校の夏休みにあわせて8月のみ制度を利用するなど、従業員の事情にあった働き方をサポートしています。
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