ISO29990
ISO29990とは?
「ISO29990」とは、国際標準化機構(ISO)によって、2010年9月1日に発行された『非公式教育・訓練のための学習サービス―サービス事業者を対象とした基本的要求事項』の略称。非公式教育・訓練分野における世界初の国際規格で、学習塾や各種専門学校、民間職業訓練施設などが、これを指針として、学習サービスの品質向上と継続的改善に取り組むことを目的としています。
学習サービスの質を保証する国際規格
「求職者支援制度」への対応にも有利
労働市場の国際化やグローバル人材の世界的な需要増を背景に、教育訓練サービスの質を国際的に保証し、標準化を図ろうとする動きが進んでいます。ISOでは2006年に加盟国のドイツからの提案を受けて、「人材育成と非公式教育サービス」に関する専門委員会を設置。訓練の品質の保証と向上を図るためのしくみづくりに向けて、具体的な検討が続けられてきました。その集大成として発行されたのが国際規格のISO29990、すなわち「非公式教育・訓練のための学習サービス―サービス事業者向け基本的要求事項」です。
この規格には、二つの要件――(1)学習サービスのプログラムとプロセスに関する要求事項と、(2)サービス事業者のマネジメントに関する要求事項が規定されています。これらを満たすことで、提供される学習サービスの品質の管理と事業者の経営の管理が担保されるしくみです。具体的には、それぞれ次のような要求事項から成り立っています。
(1) 学習サービスのプログラムとプロセスに関する要求事項
利用者の教育訓練ニーズの把握、適切なカリキュラムの策定、最適な学習環境の確保、学習者からのモニタリング、教育事業者による評価など
(2)サービス事業者のマネジメントに関する要求事項
経営管理責任体制の整備、事業計画の作成・記録、予防処置・是正処置の確立、財務管理・リスク管理、人事管理、内部監査など
民間の教育事業者は、ISO29990をマネジメントシステムの構築・運用のためのツールとして有効活用することで、教育訓練サービスの品質・管理が保証されていることを強く訴えることができます。したがって受講者、参加者からの信頼性向上はもちろん、競合他社との差別化や組織内における透明性の確保、社員のモチベーションアップ、市場の国際化などの面で、認証取得のメリットは非常に大きいと考えられます。
現在、国際規格化の提案国であるドイツを中心にEU各国で認証取得事例が増えているISO29990ですが、日本国内においても、本年10月から実施される「求職者支援制度」が導入の呼び水のひとつに。厚生労働省が、民間の職業訓練の質を担保する目的で、ISO29990規格を踏まえた教育サービス事業者の評価基準を策定し、公的訓練を委託する事業者の選定に活用する方針を打ち出しているため、職業訓練校などを中心に関心が高まっています。
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