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【ヨミ】シュウギョウキソク

就業規則

就業規則とは?

就業規則とは、賃金、労働時間、休日・休暇などの労働条件や服務に関する事項など、職場内で労働者が守るべき規律について定めた規則の総称をいいます。企業の健全な事業維持・発展のために重要であり、その内容は法律で定められた記載事項や義務に基づいていなければなりません。
就業規則の法的根拠は、労働基準法第89条の規定にあります。常時10人以上の労働者を使用する使用者は定められた事項の就業規則を作成することが義務付けられています。その後の法改正に応じ、就業規則作成義務に付随する関連事項も変更されています。

更新日:2023/11/22

1. 就業規則の記載内容

絶対的必要記載事項・相対的必要記載事項・任意の記載事項を把握する

就業規則の内容は、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)、社内で制度として設ける場合に記載する必要がある事項(相対的必要記載事項)、記載が任意である事項(任意の記載事項)の三つに区分されます。

参照:就業規則を作成しましょう|厚生労働省

絶対的必要記載事項

どの企業でも必ず記載が必要

絶対的記載事項は、以下の通り大きく三つが挙げられます。

・労働時間関連
始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇
(モデル就業規則の第4章に該当)

・賃金関連
賃金の決定、計算および支払い方法、賃金締め切り日および支払時期、昇給
(モデル就業規則の第6章に該当)
※「支払い方法」「支払時期」の表記は、記者ハンドブック、「経済関係複合語の送り仮名」を参照しています。

・退職関連
退職、解雇、定年に関する事項およびその手続き(解雇の事由を含む)
※退職手当は絶対的必要記載事項ではありません
(モデル就業規則の第7章に該当)

引用:モデル就業規則 p.2 一部表現追記改め|厚生労働省

相対的必要記載事項

当該事業場で定める場合に記載が必要

相対的必要記載事項は、大きく八つに分かれます。

・退職手当
退職手当が適用される労働者の範囲、その決定、計算や支払いの方法、支払時期に関する事項
(モデル就業規則の第8章に該当)

・臨時の賃金・最低賃金額
退職手当を除く臨時の賃金や最低賃金額(※)などに関する事項
(モデル就業規則の第6章に該当)
※最低賃金法における最低賃金ではなく、事業場で独自に定めた一番低い賃金のこと

・ 費用負担
労働者に対し、食費のほか、社宅・寮費などの負担をさせることに関する事項
(モデル就業規則の第6章、第45条に該当)

・ 安全衛生
安全衛生に関する事項
(モデル就業規則の第10章に該当)

・ 職業訓練
職業訓練に関する事項
(モデル就業規則の第11章に該当)

・ 災害補償・業務外の傷病扶助
災害補償や業務外の傷病扶助に関する事項
(モデル就業規則の第10章に該当)

・ 表彰・制裁
表彰や制裁の種類、程度に関する事項
(モデル就業規則の第12章に該当)

・その他、当該事業場の労働者全員に適用される決まりに関する事項

引用:モデル就業規則 p.2-3 一部表現追記改め|厚生労働省

任意の記載事項

労働基準法では特に定められておらず、各企業で任意に記載する事項を指します。以下のような事項が挙げられます。

  • 社是や社訓、会社の理念
  • 就業規則の制定目的や趣旨
  • 入社に関する事項(モデル就業規則の第2章に該当)
  • 人事異動に関する事項
  • 職務区分や職制に関する事項
  • 服務規律や守秘義務などに関する事項(モデル就業規則の第3章に該当)
  • 職務上の発明発見の取り扱いやその対価に関する事項
分類に捉われすぎない

相対的必要記載事項に分類されますが、昨今の法改正に伴い、記載する必要性の高い事項もあります。一例として、受動喫煙防止措置、年1回の健康診断、年1回のストレスチェックなどが挙げられます。

全ての企業において、記載が必要な事項が同じとは限りません。担当者には、上記に挙げた分類に捉われることなく、実務上・法律上で記載が必要な事項は何かを判断して記載することが求められます。

2. 就業規則に関する義務

就業規則には、作成義務・届出義務・周知義務があります。これらに違反した場合の罰則もあるので注意が必要です。

作成義務

労働基準法第89条1項に基づき、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、必ず就業規則を作成することが義務付けられています。ここでは「労働者の人数」と「事業場」がポイントとなります。

労働者とは、正社員のほか、パートタイム労働者も含まれます。人数は稼働人数ではなく在籍人数で数え、産休・育休中でも籍があればカウントします。

事業場とは、ある一定の場所で独立して業務を行っている職場のことで、企業単位ではありません。例えば企業全体で10人以上の労働者を雇用していたとしても、各事業場で常時10人未満であれば、作成の義務はないという判断になります。

ただし、就業規則を作成する目的を鑑みて、10人未満である場合も作成するのが望ましいといえます。社員をまとめ、法令を順守しながら企業の秩序を維持していくには就業規則が必要です。個性や特性を生かしながら共通の目標を目指すとき、ルールがあるからこそ力を集中させることができます。さらにルールがあることで、労働者・企業間におけるトラブルを未然に防ぐことにつながります。

周知義務

労働基準法第106条に基づき、就業規則は各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面での交付、電子媒体に記録してモニターで常時確認できるようにするなど、労働者に周知しなければなりません。

イントラネットで閲覧可能にし、URLを定期的に全従業員に通知するといった方法がよいでしょう。一部の労働者に口頭で周知したという場合は、周知義務を果たしたことにはならないため、注意が必要です。

届出義務

労働基準法第89条において、作成義務に加えて届出義務も定められています。原則として、該当する事業場を管轄する労働基準監督署へ提出します。同じ企業内であっても、例えばA事業場ではa労働基準監督署、B事業場ではb労働基準監督署と、管轄が異なれば提出場所も異なります。

ただし、事業場単位としては別でも、本社と同じ就業規則を使用している場合は、「就業規則の本社一括届出」という制度を使うことも可能です。また、電子申請による届け出も可能です。

罰則について

作成義務や届出義務に違反した場合は罰則がある

労働基準法で定められている就業規則の作成義務や届出義務に違反した場合、30万円以下の罰金に処せられるため、注意が必要です。また、労働条件などを変更したのに就業規則を変更しなかったり、変更後に適切な届け出をしなかったりした場合も、同様の罰金が科せられます。

就業規則の作成義務や届出義務に違反していることは、企業と労働者との労働契約が適切に明文化されていないということです。万が一、労働トラブルが発生した際には罰金以上の大きな問題となる可能性があるため、企業としては適切な作成・届け出・周知を徹底する必要があります。

3. 就業規則の効力

就業規則に定める基準が労働基準法に達しない内容は無効

就業規則が効力を持つには、法令および労働協約(労働基準法第92条)に違反していない内容でなければなりません。就業規則の内容が労働基準法の定める基準に達していない場合は、無効になります。また、労働協約は労使が合意の上で締結されるものであるため、就業規則よりも優先されます。労働契約の締結に当たり、就業規則に定める基準に達しない契約内容は無効となり、就業規則の規定が適用されること(同法第93条)と定められています。

また、周知義務が適切に行われていない場合も効力が発生しません。つまり、「就業規則を作成しただけ」「労働者代表から意見を聞いただけ」では効力を発揮しないので、注意が必要です。

就業規則の効力が発生するタイミングは、就業規則が労働者に周知された時期以降、施行期日が定められている場合は該当日、定められていない場合は労働者に周知された日と判断されます。

4. 就業規則作成と届け出について

就業規則は、企業(使用者)が作成するものです。労働者に不利な規則を一方的に作成したり、不利な内容に変更したりすることがないよう、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聞き、その意見を記した書面(意見書)を添付するなどのルールが定められています。

ここからは、就業規則の一般的な作成手順と届け出方法、厚生労働省から提供されている支援ツールを見ていきます。

就業規則作成・届け出の全体の流れ

就業規則の作成から届け出、周知までの一般的な流れは以下の通りです。

  1. 就業規則作成(変更)
  2. 労働者へ通知
  3. 意見書の添付
  4. 所轄労働課基準監督署への届け出
  5. 事業所内へ周知

就業規則における意見書の作成

就業規則は、労働者と使用者の双方が守らなければなりません。労働者が内容について「知らなかった」ということがないように、就業規則の作成および変更をする際には、事業場における労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聞くことが義務付けられています。

また、労働基準監督署に就業規則を届け出る際は、労働組合または労働者の代表となる者の意見内容をまとめて、署名または記名押印した意見書を添付する必要があります。なお、労働者代表などからの意見聴取はあくまでも「意見を聞く」ことがポイントで、「同意」まで必要としてはいません。

ただし、就業規則を労働者にとって不利益に変更する場合には、労働者の代表の意見を十分に聞く必要があります。さらに、変更の理由および内容が合理的なものとなるよう、慎重に検討することが求められます。

就業規則作成の参考情報

厚生労働省によるモデル就業規則

就業規則の作成に当たっては、厚生労働省による「モデル就業規則」が参考になります。必要な記載事項を漏れなく定めるために事前に確認しておくとよいでしょう。

モデル就業規則における主な記載事項は以下の通りです。

  • 総則
  • 採用、異動など
  • 服務規律
  • 労働時間、休憩および休日
  • 休暇など
  • 賃金
  • 定年、退職および解雇
  • 退職金
  • 無期労働契約への転換
  • 安全衛生および災害補償
  • 職業訓練
  • 表彰および制裁
  • 公益通報者保護
  • 副業・兼業

ただし、これらはあくまでもモデルであり、各企業の実態に見合った適切な事項を明記することが大切です。特に労働時間や賃金などは、企業内で十分に検討する必要があります。

また、モデル就業規則は主に通常の労働者へ適用することを想定して作成されています。パート労働者や有期雇用労働者などへ適用する場合は、状況に応じて適用の可否を検討します。場合によっては、別の就業規則を作成することも必要です。

就業規則作成支援ツール

このほか、厚生労働省が提供している「就業規則作成支援ツール」もあります。スタートアップ企業などで、初めて就業規則を作成する場合に役立つので、活用してみることをお勧めします。使用に当たっては、過去の作成を記録できるユーザー登録が便利です(登録しなくても使用することは可能)。

5. 就業規則を変更する際の注意点

不利益な条件を一方的に押しつけない

就業規則を変更する際に、使用者の一方的な就業規則変更により、不利益な労働条件を課すことは原則禁止されています。

合理性が認められる場合に限り、あくまでも例外的に不利益変更が認められることもありますが、企業側が何の説明もなしに一方的に変更すると、法令はクリアしても紛争のもとになるケースがあります。事前に労働者の意見を聞き、十分な理解を得てから変更することが望ましいといえます。

トラブルを予防するために

就業規則をつくる際は、トラブルを未然に防ぐためにも、あいまいな部分を排除し、明確かつ詳細に定めるよう配慮することが重要です。例えば、特別休暇に対する有給・無給、有効期限などを詳細に記載することで、労働者・企業双方が円満に就業規則を順守することにつながります。

また、実現性についても配慮し、身の丈に合った内容で作成することが大切です。就業規則は変更できないものではないため、自社に適した就業規則になっているか、見直すタイミングを設けるのも一案です。

ただし、変更箇所をまとめて届け出ることはできません。変更の都度必ず届け出る必要があるので、注意が必要です。

6. 社会情勢の変化を踏まえて適切な就業規則の変更を

働き方改革関連法に伴うモデル就業規則の変更

働き方改革関連法の施行に伴い、2019年4月1日から年次有給休暇の5日取得が義務付けられました。これに基づき、厚生労働省が提示するモデル就業規則(第22条第5項)にも、以下のように追記されています。

5 第1項又は第2項の年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。

引用:モデル就業規則|厚生労働省労働基準局監督課

また、労働安全衛生法の改正により、2019年4月から労働時間を客観的に把握することが義務化されました。これを受けて、モデル就業規則にも以下の通り追記されています。

労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業及び終業の時刻を記録しなければならない。

引用:モデル就業規則第17条|厚生労働省労働基準局監督課

モデル就業規則は法律改正に付随して追記修正が行われることがあるので、自社の就業規則がモデル就業規則を参考にしている場合は注意しなければなりません。

情勢に即した対応を

昨今では新型コロナウイルス感染症の影響もあり、雇用状況が大きく変動した企業が少なくありません。その結果、現状の就業規則の内容に無理や矛盾が生じている可能性も出てきています。

実状と就業規則との間に乖離がある状態のままにしておくと、労働者と企業との間で大きなトラブルに発展するリスクを抱えることになります。就業規則は労働者と企業とがお互いの権利を守り、義務を果たすために必要なものです。また、企業の業績向上においても重要な役割を果たすことを踏まえ、適切かつ迅速な対応を取る必要があります。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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