個人がレジリエンスを高めるためには
レジリエンスは、ビジネスにおいて「困難や逆境を乗り越え回復する力」を意味する言葉です。個人のレジリエンスが高い状態とは、「個人に大きな精神的ストレスを与える出来事があっても、乗り越えられる状態」のことを指します。仕事で壁にぶつかることは避けられませんが、それにより落ち込む期間を少しでも短くするために、自身のレジリエンスを高めることが重要です。個人がレジリエンスを高めるためには、どのようにすればよいのか――心理学では、さまざまな知見が発表されています。
1. レジリエンスを構築するための方法
アメリカ心理学会(American Psychological Association)は、レジリエンスを構築するための方法を公式サイトで紹介しています。同サイトでは「レジリエンスは誰もが学び、高めることができる」としています。
1) 関係性を大切にする
孤立しないことはレジリエンスを維持・向上させる上で重要です。理解ある人との信頼関係があることは、困難やトラブルに見舞われた際、困難をはね返す力となります。
2)目標を設定する
目標を設定することは、自尊心を育み、他の人のつながりを構築することにつながります。途方もない目標ではなく、現実的な目標を立て達成感を感じることは、レジリエンスの向上に有効といえます。
3)健全な考え方をする
なるべく健全な考え方をすることも大切です。変化を受け入れること、楽観的に考えること、つらい経験から何を学んだかを整理することなどが、ポジティブになるためには大切です。
また、肉体とストレスは密接な関係があるため、健康でいることも大切です。適切な栄養、十分な睡眠、水分補給、定期的な運動を取り入れることで、ストレスに強い心と身体をつくれます。
4)誰かに助けを求める
必要なときに誰かに助けを求めることが、レジリエンスを高める上で非常に重要です。場合によっては専門家の力が必要なときもあります。大切なのは、一人ではないと自覚することです。
2. レジリエンスを構成する資質的要因と獲得的要因
平野真理氏(東京大学大学院教育学研究科、研究発表当時)は、自身の研究「レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み」で、レジリエンスの構築には、先天的な性質の強い資質的要因と、後天的に身に付けやすい獲得的要因に分類できるとしています。
1)資質的レジリエンス要因
● 楽観性
物事がうまく進み、良いことが生じるだろうというポジティブな見通しや考え方
● 統御力
自分の体調や体力、および感情やユーモアなど、心身をコントロールする能力
● 社交性
人との関係をうまく取ることや、社会集団における存在感を得られる性質
● 行動力
物事に対して、努力や意欲を持って粘り強く行動できる能力
2) 獲得的レジリエンス要因・問題解決志向
● 課題解決志向
人と意見が衝突した際にも対話で解決できる、嫌な出来事に対し、解決策を考えられる力
● 自己理解
自分自身の考えや、事が起こった際の反応などの特性について理解し把握する力
● 他者心理の理解
他者の心理を表情や言動などから理解できる能力
もともとの性質とみなせる「資質的レジリエンス」はなかなか変えにくいので、後天的に身に付けやすい「獲得的レジリレンス」に着目して、普段の考え方や行動様式を見直していくことが重要といえるでしょう。
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