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有賀 誠のHRシャウト!人事部長は“Rock & Roll”
【第13回】メンター&ロールモデル(その1)

株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括

有賀 誠さん

有賀 誠のHRシャウト! 人事部長は“Rock & Roll

人事部長の悩みは尽きません。経営陣からの無理難題、多様化する労務トラブル、バラバラに進んでしまったグループの人事制度……。障壁(Rock)にぶち当たり、揺さぶられる(Roll)日々を生きているのです。しかし、人事部長が悩んでいるようでは、人事部さらには会社全体が元気をなくしてしまいます。常に明るく元気に突き進んでいくにはどうすればいいのか? さまざまな企業で人事の要職を務めてきた有賀誠氏が、日本の人事部長に立ちはだかる悩みを克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。

みんなで前を向いて進もう! 人事部長の毎日はRock & Roll だぜ!――有賀 誠

私は日本鋼管(現JFE)という鉄鋼メーカーで16年間働き、製鉄所での生産管理と本社での企画業務に携わりました。同社での1年先輩の八木洋介氏(株式会社people first代表取締役、元LIXIL副社長、『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社新書)著者)が、私のメンターであり、ロールモデルです。人事のリーダー/実務家として、日本で最も有名な人物ではないでしょうか。今でも「ここで日和っているようでは、八木さんに叱られる!」と、自分を叱咤することがあります。そして、八木さんの言葉は、長年、私の人生&キャリアの座標軸になってくれました。そのいくつかを以下に紹介します。

「理念なきところに戦略なし、戦略なきところに勝利なし」

これは本連載の第6回でも一般論として述べたことですが、志や目指すものがあるからこそ、そのための施策や手法としての戦略が存在し、有効な戦略に基づいて行動するからこそ、まぐれ当たりではなく、継続的な成果を上げることができる、というものです。この言葉は二つのことを教えてくれます。一つは、「(1)理念‐(2)戦略‐(3)施策‐(4)行動‐(5)継続的成果」が一気通貫したものであるべきこと、そしてもう一つは、それが必ず「理念」から始まるということです。

あまりにも当然のことかもしれませんが、翻って考えた時、皆さんはその通りの思考と行動ができているでしょうか。上から言われたから、周りがやっているからなどの理由で、考えることなく、いきなり「ジョブ型人事制度」「同一職種同一賃金」「女性活躍推進」「タレントマネジメント」「HRテクノロジー」「働き方改革」「成果主義の功罪」などの検討・議論をしているということはないでしょうか。これらは、「(3)施策」に過ぎません。そもそも、組織として目指しているものは何だったのでしょう?  まずは「(1)理念」と「(2)戦略」をお忘れなく!

これ以外にも八木さんからは、「志を持っている者はそれを持っていない者には負けない、努力をしている者はそれをしていない者には負けない」「リーダーを自認するなら、会社や部署や上司ではなく、自分を主語にして語れ」といった思想・価値観を叩きこまれました。本連載における前テーマ「人事部とリーダーシップ」の中でご紹介をさせていただいた通りです。これらは、今も私の座標軸となっています。

「志を持っている者はそれを持っていない者には負けない、努力をしている者はそれをしていない者には負けない」

経営に資する人事

ある人材系企業が主催するプログラムで、いろいろな企業の人事部門で働く若手を集め、6回の講義の後、参加者それぞれが(仮想)人事部長就任演説を行って卒業するというワークショップがあります。2年連続でそのオープニングの講義を担当させていただきました。当該講義担当の前任者が上述の八木さんであり、光栄なことに、ここでもバトンを受けたことになります。

「人事に携わる経営リーダー(人事屋ではなく)が考えるべきこと」というテーマで、戦略論のフレームワークを用いて、人や組織について語りました。人事業務に携わる人間の多くが、自己満足のような制度改革(自らのジョブ・セキュリティーのため?)を推進したり、社員を管理しようとしたりします。しかし、人事部門の本来の使命は、ビジネス上の戦略に資する組織を構築し、社員を成長させ、その活躍の舞台を整えることです。そのためにも、目線は「経営」であるべきで、「人事」であってはなりません。これも、まさに八木さんの教えでした。

有賀誠の“Rock & Roll”な一言
われわれのミッションは人々の「活躍の舞台を整えること」
「管理すること」ではな~い!

有賀 誠
有賀 誠
株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括

(ありが・まこと)1981年、日本鋼管(現JFE)入社。製鉄所生産管理、米国事業、本社経営企画管理などに携わる。1997年、日本ゼネラル・モーターズに人事部マネージャーとして入社。部品部門であったデルファイの日本法人を立ち上げ、その後、日本デルファイ取締役副社長兼デルファイ/アジア・パシフィック人事本部長。2003年、ダイムラークライスラー傘下の三菱自動車にて常務執行役員人事本部長。グローバル人事制度の構築および次世代リーダー育成プログラムを手がける。2005年、ユニクロ執行役員(生産およびデザイン担当)を経て、2006年、エディー・バウアー・ジャパン代表取締役社長に就任。その後、人事分野の業務に戻ることを決意し、2009年より日本IBM人事部門理事、2010年より日本ヒューレット・パッカード取締役執行役員人事統括本部長、2016年よりミスミグループ本社統括執行役員人材開発センター長。会社の急成長の裏で遅れていた組織作り、特に社員の健康管理・勤怠管理体制を構築。2018年度には国内800人、グローバル3000人規模の採用を実現した。2019年、ライブハウスを経営する株式会社Doppoの会長に就任。2020年4月から現職。1981年、北海道大学法学部卒。1993年、ミシガン大学経営大学院(MBA)卒。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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