24年間リストラなし。お客様満足より社員満足
会社に大切にされている実感があってこそ、社員は力を出せる(後編)[前編を読む]
株式会社日本レーザー 代表取締役社長
近藤 宣之さん
「社長ニコニコ」で社員は言いたいことを言える
社員たちとのコミュニケーションで心がけていることは何ですか。
「社長は社員にとってのサーバント(召使)であれ」ということです。社長の中には偉ぶる人が多いけれど、地位も名誉も金も持っているのに、偉ぶる必要なんてこれっぽっちもありません。 もっと社員とフラットで対等な関係性を築き、リスペクトし合うべきだと私は考えています。もっとも効果的なのは、社長がいつもニコニコ笑顔でいることです。そうすれば、社員も言いたいことを言えるし、社内が活性化します。
例えば、海外インターン生を立て続けに受け入れた時にこんなことがありました。ある日突然、海外インターンに関する全社アンケートとその結果が社内のグループウェアで共有され、「事務局からの総括」として、「経営陣自体にこの施策に関心があったのかは疑問。もしこの試みを続けるとしたら、経営陣の責任・管理下でフォローアップを行うべきである」と結ばれていました。ようするに、「丸投げするのはやめてくれ」という経営陣への批判です。いきなり批判されれば、どんな社長でも心穏やかではないでしょう。しかし私はニコニコして「いやぁ、いいことを言ってくれたね、ありがとう。そんなに担当者の負担になっていたのに、気づけなくて申し訳ないね」とさりげなく立ち話で彼女に言いました。さらに、毎週月曜日に行っている全社会議で全社員の前で、「経営者は、思いつきでやってしまうことがある。個人的には会社の社会貢献の意味もあって、海外インターン生を受け入れるべきだと考えていたけれど、負担がかかってしまうのも確か。立て続けに同じ社員に事務局をやってもらったのは経営者の甘えだった。今後は期間を考慮しつつ、負担が偏らないように手分けしてお願いしていきたい」と話しました。まずは彼女たちが意見を発してくれたことに感謝し、そして自分の考えと、これからの希望を伝えたのです。
社長相手でも臆することなく、言いたいことが言える環境なのですね。
社長がニコニコしていることで社員の意見を引き出し、それを謙虚に受け止めます。平日の水曜と金曜は、17時半から会社のラウンジで常備してある缶ビールを飲んでもいいようになっていて、正社員もパートも嘱託も、みんな分け隔てなく缶ビールを片手に語り合っています。その時間にいることのできない、子供を持つ女性社員たちとは、年に一度は昼食会を開いて対話をするようにしています。そうすることで、普段聞けない話も聞くことができるのです。
かつて正社員だった女性が、夫の海外転勤にともない退職。5年たって帰国後子育てしながら1日4時間のパートで戻ってきました。しばらくしたらフルタイムで働きたいといっています。育休を取った他の女性たちも、「家族みたいだから戻ってきた」と話していました。自分の親や家族は選べませんが、会社は選ぶことができる。会社は、選択できる第二の家族であると思っています。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。