【消費生活相談員】
ネットトラブルで泣き寝入りさせない 消費生活領域に精通した消費者のミカタ
インターネットを通じて私たちは、いろいろな商品を簡単に購入することが可能になった。SNSではインフルエンサーが薦める商品に簡単にアクセスでき、ECサイトのレコメンドは自分に合った商品をどんどん紹介してくれる。一方で、購買チャネルの多様化により、事業者と消費者の間で発生する問題が複雑化している。WEBで商品を買ったら迷惑メールが届くようになった、海外から身に覚えのない荷物が届いた、「1ヵ月無料お試し」に登録したが解約方法が複雑すぎるなど、トラブルは枚挙にいとまがない。こういったトラブルを解決に導く職業が、消費生活相談員。情報社会の中で健全な市場をつくり上げる、消費者のミカタだ。
携帯電話・スマホの普及によって、消費者トラブルが増加
独立行政法人国民生活センターによると、2018年度の消費生活相談件数は991,575件で、前年の941,341件から5万件ほど増加した。相談件数のピークは2004年度で、2018年度の倍以上となる約192万件だった。2001年から2004年にかけて爆発的に相談が増えた理由の一つは、「携帯電話の普及」。ビジネスパーソンだけでなく主婦や中高生など、利用者の裾野が広がったことで、クリックしただけでいきなり料金を請求する手口やオンラインゲームでの課金トラブルなど、新手の悪質業者が横行したのだ。現在は当時よりも相談件数が半減しているが、消費者の消費リテラシーが向上していることが大きいだろう。その陰には、消費生活相談員の働きがある。
一般的に「消費生活相談員」と呼ばれる職は、「消費生活専門相談員」「消費生活アドバイザー」「消費生活コンサルタント」の三つ。それぞれ、国民生活センター、一般財団法人日本産業協会、一般財団法人日本消費者協会と、実施機関が異なる。「消費生活専門相談員」は簡単に言うと、消費者に向き合う人たちのこと。基本的に国民生活センターや各都道府県にある消費生活センターで直接、消費者からの相談を受ける。また、相談員の指導や人材開発にもあたる。(2018年度からは消費者安全法の改正案に基づき、国家資格として新たに「消費生活相談員資格試験」が始まった。これに合格することで、消費生活専門相談員も同時に認定されるようになった)。「消費生活アドバイザー」は、企業など組織側に所属する人に適した資格。消費者・企業・行政の架け橋として、消費者の意向を企業経営や行政に反映させる役割を担う。「消費生活コンサルタント」は規模がやや小さくなるが、消費者問題の歴史や背景、法律知識についての理解を深め、事業者と消費者間の格差を埋めるための情報発信を行う。
あまり実情が知られていない仕事をピックアップし、やりがいや収入、その仕事に就く方法などを、エピソードとともに紹介します。