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お笑い芸人

売れる芸人と売れない芸人では
年収10倍以上の格差社会。
吉本興業35歳以下の平均は芸歴7年、
稼ぎは年280万円ほど。

モーニングショーやバラエティ番組の司会者、レポーター、クイズ番組の回答者、さらにCM出演と、テレビはお笑い芸人で埋め尽くされた感があります。中には、長者番付に名を連ね、国から表彰までされる売れっ子もいて、それを見て若者が養成学校に押しかけていますが、さて、このブーム、いつまで続くのでしょうか。(コラムニスト・石田修大)

NHKを辞めてお笑い芸人に転身した青年も

ビートたけしやタモリ、明石家さんまをはじめ笑福亭鶴瓶、島田紳助やダウンタウン、とんねるず、爆笑問題、ナインティナイン、ロンドンブーツ1号2号、さらにはオセロ、友近、ヒロシ、レイザーラモンHGなどなど、テレビでよく見かけるお笑いタレントを上げればキリがない。話術や才能に感心する芸人もあるが、中には学芸会の余興程度の一発芸で、何が面白いのか首をかしげる人たちも少なくない。

イメージ

なんばグランド花月(かげつ)は、吉本興業の本拠地とも言える劇場。略称NGK。吉本新喜劇がここで公演され、連日ほぼ満席である。

なんばグランド花月(かげつ)は、吉本興業の本拠地とも言える劇場。略称NGK。吉本新喜劇がここで公演され、連日ほぼ満席である。

それでも若い世代のお笑い志向は強く、NHKのディレクターという職を捨ててまで、お笑いの世界に飛び込む青年まで現れた。大学時代に友人とアマチュア漫才コンビを結成した山田和史さんは、NHKに入社し札幌放送局でのど自慢やドキュメンタリー番組を担当していた。仕事の傍ら、同じく朝日放送のディレクターになった相方と組んで、漫才の選手権大会M1グランプリに挑戦、アマチュアでは異例の準決勝に進出した。

ところが準決勝出場に際して上司に仕事か漫才かの選択を迫られると、5年勤めたNHKを退社してしまった。相方はディレクターのままのため、その後はコンビを凍結して一人で舞台に挑戦している。アマチュア時代は本業のNHKネタで売ったが、それだけでは売れず、収入はゼロに近いため芸人仲間の家を泊まり歩く生活という。

芸人養成学校の年間授業料は30万~60万円

お笑い芸人といえば、かつては落語家や漫才師の弟子になり、5年、10年と芸を磨いて人気を得、テレビなどに進出した。しかし、テレビ中心のお笑いブームの昨今では、お笑い芸人養成学校で学び、コンクールに入賞したり、オーディションに合格してプロの道を切り開いていくケースが目立つ。このため大手芸能プロダクションが運営する養成学校には、毎年、入学希望者が殺到している状態という。 吉本興業が1982年に開校した吉本総合芸能学院NSC(New Star Creation)は、1期生のダウンタウン、トミーズをはじめ、今田耕司、ナインティナイン、次長課長、友近ら、また95年開校の同学院東京校からは品川庄司ら売れっ子タレントを送り出している。NSCの在籍期間は1年、入学金10万円、授業料は年間30万円で、ネタ指導や発声、演技、トーク、業界用語などを指導、各種演芸コンクールやラジオ番組出演のオーディションなども行われる。入学希望者激増で、募集人数500人から550人に増やして対応しているという。 一方、1992年に関東で初の若手お笑い芸人養成学校として開校されたプロダクション人力舎のスクールJCAも、シティボーイズ、光浦靖子らを輩出している。こちらも養成期間は1年で、現役のタレントやライター、ディレクターらを講師に迎え、芸人としての基礎を教え込む。入学金、授業料など込みで年間60万円。 このほか松竹芸能やワタナベプロダクションなども養成学校を運営しているから、いくらテレビがお笑い芸人だらけとはいっても、卒業してもタレントになれる保証はない。自らネタを練り、各種コンクールで入賞することも必要だし、オーディションに合格してプロダクションの経営する劇場や各種イベントに出演、わずかな出演料を手にする日常に耐えなければならない。

売れっ子になると年収3億~4億円も稼ぐ

したがって、売れっ子になるまではアルバイトで生活費を稼ぐのが一般的。吉本興業に所属するコメディアン土肥ポン太はコンビでスタートしたが、相方が公務員になると言い出してコンビを解散、ピン芸人として再出発した。売れない時期にやっていた八百屋のアルバイトが高じて自ら八百屋を経営、タレント収入より八百屋の稼ぎの方が多いことを、芸人仲間のネタにされているほど。

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吉本興業の始まりは吉本吉兵衛・せい夫婦による寄席経営であった。1980年前後の漫才ブームで、演芸界では一人勝ちの状態となる。

お笑いタレントの収入は人気次第で、ピンからキリまでの隔たりが大きい。最近MBSテレビの深夜バラエティ番組で、35歳以下の吉本の芸人122人にアンケートした結果を報じた。それによると、平均年齢27.8歳、芸歴7年で、平均年収は279万599円。700万円以上の芸人が17人いる半面、50万円未満が29人と、10倍~20倍の格差があるのは、この業界では当然のことだ。

売れてナンボの世界だから、テレビに出ずっぱりの芸人ともなれば、億単位の年収を稼ぐ。2005年度の芸能人長者番付のトップ10のうち、3位、4位にとんねるずの石橋貴明(納税額1億5291万円)、木梨憲武(1億3500万円)、5位、7位にダウンタウンの浜田雅功(1億2528万円)、松本人志(1億738万円)、さらに8、9位に爆笑問題の太田光(1億639万円)、田中裕二(1億176万円)と、3組6人が入っている。推定年収は3億円弱から4億円以上という。

芸術選奨で文科大臣賞を受賞した爆笑問題

おまけに爆笑問題の2人はこの春、放送部門で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。バラエティ畑からは初の受賞といい、授賞理由は「10年以上も成長しながら抜群の安定感を見せている」から。太田は「国に褒められるような芸人じゃない。何が評価されたのかは謎」とコメントしたが、まさに笑いが止まらないに違いない。 テレビが彼らを必要とする限り、まだしばらくはお笑い芸人の全盛時代は続きそうだ。しかし、司会者として自分の番組を持つトップクラスは別として、テレビではじっくり芸を見せる時間はないし、そんな芸もないまま、キャラクターだけで人気が先行するケースも多い。 彼らを支持しているのは移り気な若者や子供だから、新しいキャラクターが登場すれば、忘れ去られるのも早い。大半の芸人は、いっときテレビ画面をにぎわせて消えていく運命なのだが、それでも養成学校が繁盛しているのは、人気者こそがヒーローという価値観が広がり、とにかくテレビに出たいという志向が強いせいだろう。

(数字や記録などは2006年4月現在のものです)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

あの仕事の「ヒト」と「カネ」

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