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あの仕事の「ヒト」と「カネ」

【新聞記者】
「書く」ことが好きで管理職への出世の意欲は強くない、ただし能力がないと40代で広告や販売に回されるかも。

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不祥事が続いたり、テレビの威力に押されたり、かつて「無冠の帝王」といわれた新聞も、このところ影響力は低下気味。それでもマスコミの最古参として、あこがれの職業の一つであることには変わりません。とかくデフォルメされて伝えられがちな記者生活の実態とは、どんなものなのでしょうか。(コラムニスト・石田修大)

就職希望ランクで朝日が61位、日経は82位

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日本は新聞が最も読まれている国のひとつである。中でも読売新聞は発行部数が公称1000万部。世界で最も発行部数が多く、ギネスブックにも載っている。

日本経済新聞が2005年末、大学3年生を対象に行った就職希望企業調査によると、男女・文理系合わせた総合ランクで、「通信・情報・教育・出版」関係が100位以内に20社入っており、広い意味でのマスコミ志望は相変わらず健在。新聞・テレビではフジテレビ(18位)、テレビ朝日(42位)、日本テレビ(52位)、TBS(54位)とテレビ会社が上位にランクされ、新聞社で100位以内に入ったのは朝日新聞(61位)、日本経済新聞(82位)だけだった。

志望理由のトップは「仕事が面白そう」だというから、アナウンサーや記者などの活動が画面に映し出されるテレビのほうがわかりやすかったのか。じつは筆者は元新聞記者だが、裁判所の担当記者だった若いころ、六本木でテレビ局の記者と飲みながら、こんな話をしたことを思い出した。「そのへんを歩いている女の子に、あんたが『テレビに出してあげる』と誘えば喜んで付いてくるだろうが、俺が『新聞に出してやる』っていったら逃げ出すだろうな」。

編集局長→局次長→部長→デスク→記者

新聞社の職制や給与体系は一般の企業とさほど変わりはないが、取材のセンターである編集局の職制はシンプルにできているといっていい。編集局長をトップに、数人の局次長が補佐し、その下に政治、経済、社会、地方、外報(外信)、文化(学芸)、家庭(生活)、運動、写真などの取材部と、紙面編集にあたる整理、記事の校正を担当する校閲の各部が配置されている。以下、社会部を例に挙げれば、社会部長の指揮下に数人の次長がいる。「デスク」と通称され、ローテーションで朝夕刊を担当、現場を指揮すると同時に、記者の書いた原稿をチェックする。ほかに部長や次長と同格で、管理業務につかず、取材・執筆に専念する編集委員が何人かいる場合が多い。 次長の下は全員社会部記者の肩書きだが、チーム取材のためキャップと呼ばれるリーダーがいる。チームには本社で企画記事を担当したり、大事件、事故の取材にあたる遊軍のほか、取材先の官庁ごとに記者クラブに詰めるクラブ詰めがある。警視庁、裁判所、国会、宮内庁や厚生労働省、国土交通省など各省庁に記者を配置している。

締め切りに追いまくられて徹夜の執筆も多い

人数の多い警視庁クラブならば、キャップの下にサブキャップがおり、記者は殺人などの刑事部捜査一課、汚職の捜査二課、過激派やスパイ事件の公安部、さらに防犯・交通部などを分担している。昼間は定例会見を取材し、ニュースになる事件はないか、捜査の進展具合はどうか、庁内を聞いて回るが、事件が起これば警視庁の担当部課長や刑事の自宅を夜討ち朝駆けするのはもちろん、事件関係者に取材して、特ダネ競争に走り回る。交代で会社や警視庁に泊まり込む泊まり番があるから、通常の出勤時間はそれほど早くはない。だが、午前10時台から正午過ぎまでと、夕刻から午前1時ころまで、何回も夕刊、朝刊の締め切りがあり、進行中の事件・事故などでは締切時間ごとに最新の原稿に書き換えねばならないから、早朝から深夜まで取材・執筆に追われ、場合によっては徹夜も珍しいことではない。社会部と比べれば、文化部など好きな映画や芝居、音楽漬けで楽そうに思われるが、記事を書くためには都内はもちろん地方まで出かけて多くの作品を見なければならないから、ときにうんざりもしてくる。連載小説を担当し遅筆の作家にあたれば、深夜まで原稿とりに動かねばならず、神経をすり減らすことも多い。

40代で広告や販売に異動していく記者も

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日本初の新聞として『官板バタヒヤ新聞』が刊行されたのは、幕末の1861年。黒船来航を機に外国事情を知るため、オランダ政庁の新聞を翻訳、発行させた。

警視庁など激務のセクションでは、疲労困憊で痩せそうなものだが、現実には太る記者が多い。空いた時間を見つけては1日4回も5回も食事をし、神経を静めるために酒を飲み、しかも夜回りなど車を使うことが多く運動不足になりがちだからだろう。会社では定期検診を実施しているが、忙しさを理由に検診を受けず、若くして急死する例も決してまれではない。人一倍、健康管理を疎かにできない職業である。

もっとも部署にもよるが、インターネットの情報が増えた最近では、ホームページを覗いてネタを見つけ、電話取材で器用に記事に仕立てる記者もあるようだ。そんな記者が増えれば、無意識に記事の盗用をしてしまう可能性もないではない。「記事は足で書け」と中年の先輩が苦虫をつぶすのも無理はない。

平記者として本社、支社、支局など何カ所かを異動し、40代をめどに部次長に昇進して管理職の一員になるか、編集委員として現場に残る。上に近づくほどポストが少なくなるのは、どの世界も同じ。部次長に上がるころから編集局内では処遇しきれず、関連会社に出向したり、出版局、販売局、印刷局、広告局など他局に配属される記者も少なくない。

(数字や記録などは2006年4月現在のものです)

記者を辞めて文章で食べている人は少ない

新聞記者の場合、書くことが好きで志望する人が多いから、管理職への出世意欲は相対的に低いようだが、編集委員として「生涯一記者」の道を進む記者は限られており、論説委員になる人数はさらに少ないから、記者として貫き通すのは簡単ではない。給与は一般に世間相場よりは恵まれている。全国紙でも朝日や日経と毎日などでは格差があり、地方紙でも給与水準の高いところもあるから、一概にはいえない。勤務時間が不規則なため、忙しい職場では時間外手当などが給与の相当部分を占めることもある。かつてはインド特派員が象を買い上げ、必要経費として請求したといったエピソードもあるが、さすがに現在ではそんな無茶は通用しない。新聞記者は文章のプロと思われるが、簡潔明瞭が記事の鉄則で、締切時間に追われて拙速に走りがちだから、応用が利かず、新聞社を辞めて文章で食べている人は案外少ない。記者出身の作家もいるが、在職中記者として有能だった人が思いの外少ないのも、そんな理由からだ。まして文章以外に特別な能力は持たず、頭を下げるのが苦手な人が多いから、退職後のつぶしがきかない職業でもある。

(数字や記録などは2006年3月現在のものです)


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