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気象予報士

国家資格が宝の持ち腐れになるかも?
民間お天気ビジネスの拡大はこれから。

就職難の時代に少しでも有利にと、さまざまな資格取得が注目されています。中でも、10年ほど前に設けられた国家資格「気象予報士」はテレビのお天気キャスター人気も預かって、このところ受験者が増える一方。でも、今や5000人を超える資格所有者の就職先は、思いのほか狭き門のようです。(コラムニスト・石田修大)

10年間に約8万人が受験、5223人が合格

天気予報は従来気象庁が独占的に行っていたが、1993年の気象業務法の改正を機に自由化が進められ、気象庁が観測・予測データなどを公開、許可を受けた民間業者が特定契約者以外にも広く予報を行えるようになった。同時に民間気象情報の質を確保するため気象予報士が誕生、気象の予想は国家試験に合格した気象予報士に限定された。

小倉義光『一般気象学』

気象予報士試験のバイブルと言われる小倉義光『一般気象学』。高校程度の用語で気象学を説く

国家試験では大気の力学、気象の変動、法規、長期予報、気象災害など予報業務に関する一般、専門知識を問う学科試験と、局地的な気象の予報、台風等緊急時における対応など記述式の実技試験とが行われる。受験資格に制限はなく、11400円(2004年度改訂)の受験手数料を払えば誰でも受験できる。

94年8月の第1回試験には約2800人が受験、初回だけに気象会社に務めている人なども多く、合格者は500人、合格率は18.0%と高かった。以後、1月と8月の年2回、試験が行われているが、2004年8月までの10年間に約8万人が受験、5223人が合格し、平均合格率は6.6%になっている。

民間会社に就職して仕事をするのが一般的

気象予報士として仕事をするには、国家試験に合格したうえで気象庁長官に登録しなければならないが、2004年11月現在、合格者のうち5008人が気象予報士として登録している。だが、予報士として登録しただけで、すぐに仕事ができるわけではない。局地予報などを出そうとすれば、気象業務支援センターを介して気象庁の観測データを買わねばならず、独自の観測機器なども必要になるから、相当な資金が必要になる。しかも国家試験合格程度の知識では精度の高い予報を出すことは不可能で、経験と工夫が不可欠だ。

このため、現実には民間気象会社などに就職して、気象予報士としての仕事をすることになるが、これがかなりの狭き門だという。

個人的に予報を行うのは自由だが、業務として気象予報をするには気象庁長官の許可が必要。予報業務の許可を得た事業者には日本気象協会、ウェザーニューズなど大小の民間気象業者をはじめ、テレビ東京、北海道放送、テレビ新広島などのテレビ局、日立市(天気相談所)、広島市(江波山気象館)など地方自治体のほか、木原実事務所、石井和子(東京放送)らお天気キャスターやアナウンサー個人も含まれている。

多くの気象予報士が仕事をするには、とりあえずこれらの組織に所属するわけだが、具体的には(1)民間気象会社に就職(2)お天気キャスターとして働く(3)派遣社員として働く――などが考えられる。

民間気象会社では、契約企業へのポイント予報や商品開発などのコンサルタント、レジャー施設や新聞・放送などマスメディアへの情報提供などを行っている。予報士としては広範な活動が期待できる職場だが、景気低迷の現在、採用人数は絞られており、入社は容易ではない。

お天気キャスターになる人はほんの一握り

テレビ局のお天気キャスターには森田正光、木原実ら予報業務の許可を得てプロの予報士として活躍している人たち、石原良純、乾貴美子らタレントのほか、テレビ局の社員であるアナウンサー、さらには気象会社から派遣された人など、さまざまなパターンがある。タレントになるのはもちろん、テレビ局や気象会社に就職するのも容易ではないから、キャスターへの道もまた遠いと言える。

気象庁

東京・大手町の気象庁。明治8年に設立された東京気象台が、昭和31年、気象庁となった

最も簡単なのは派遣社員やアルバイトとして気象会社などで働く方法だろうが、採用は極めて少なく、仮に働くことができても、予報士としての仕事より雑用が中心ということになりかねず、せっかくの資格を生かせるかどうかは不確定だ。

このほかストレートに気象庁の予報官になる、あるいは住民向けに天気相談を実施している地方自治体で働く道もあるが、予報官になるには、国家公務員試験に合格するか、気象大学校を卒業するしかない。この場合、気象予報士の資格は必要ないが、それ以上に難しい試験が控えているわけだ。一方、地方自治体では気象予報専門の職員を採用することはまずなく、外部の専門家に任せたり、自治体職員に気象予報士の資格を取らせるケースが圧倒的だ。

市場規模はいまだ300億円台にとどまる

こう見てくると、せっかく国家試験に合格して気象予報士の資格を手にしても、宝の持ち腐れになりかねない。実際、毎年500人ほども誕生する気象予報士に対して、受け入れ側のキャパシティは極めて小さいのが実情だ。気象予報士会でも、活躍の場を広げるため、さまざまな試みを続けているが、にわかに仕事が増える見込みはありそうもない。

天気予報の自由化といっても、予報を全面的に民間に任せているアメリカと比べて制限が多い、気象庁の観測データ購入費などが高額で新規参入の障害になっている、天気予報を有料で買う習慣が根付いていないことなどが、民間お天気ビジネス拡大のネックになっている。この10年で民間事業者は急速に増えたものの、市場規模は1000億円と期待されながら300億円台でとどまっているという。

しかし気象予報士が誕生してわずか10年余。一般にはお天気キャスターの存在くらいしか知られておらず、まだまだこれからの職業と言える。地球温暖化による異常気象などが茶の間の話題になる昨今でもあり、今後予想される社会や産業界の多様な需要に、お天気ビジネスがどこまできめ細かなサービスで応えられるか。気象予報士の将来が、曇りのち晴れになることを期待したい。

(文中敬称略。数字や記録などは2005年3月現在のものです)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

あの仕事の「ヒト」と「カネ」

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この記事ジャンル 中途採用

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