育休中、社会保険料がどのように免除されるか
従業員が育児休業を取得した際、その期間中の社会保険料は、企業と従業員の負担分がともに免除されます。しかし、従業員が月の途中で育児休業を開始し、月の途中で育児休業から復帰することも多いでしょう。また、育児休業期間の途中で1日や2日などの短期間勤務するケースもあります。
育児休業期間中の社会保険料の免除について、さまざまなケースを挙げて解説します。
育休期間中の社会保険料の免除
育児休業期間中の社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険)は、所定の手続きをすることによって企業と従業員の負担分がともに免除されます。
いつからいつまで免除されるか
育児休業期間中の社会保険料の免除は、育児休業を開始した日の属する月から、終了する日の翌日が属する月の前月までです。例えば、従業員が4月15日から12月14日まで育児休業を取得した場合、4月分から11月分までの保険料が免除されます。社会保険料は月単位で徴収することとなっているため、保険料を日割り計算する必要はありません。
判断のポイントは、月の末日が育児休業期間に含まれるかどうかです。育児休業を開始した場合、月末まで育児休業期間が続いていればその月の保険料は免除されます。育児休業期間の終了日が11月29日など、月末が含まれない場合は、その月は保険料の免除期間には含まれません。
ただし、育児休業を開始した日と終了した日が同じ月にある場合は例外です。育児休業開始日が含まれる月に14日以上育児休業を取得していれば、育児休業期間に月末が含まれていなくても保険料が免除されます。
企業の給与計算の実務上は、社会保険料の免除対象月と給与から控除する月との間に1ヵ月のずれが生じることに注意しなければなりません。社会保険料は前月分の保険料を当月支払う給与から控除するため、育児休業開始時は「開始した日の属する月」の翌月に支払う給与から保険料を徴収しないことになります。育児休業終了時は、「終了する日の翌日が属する月」の翌月に支払う給与から、保険料の徴収を再開します。
賞与の社会保険料の免除
賞与についても、賞与を支払った月の月末が育児休業の対象期間に含まれていれば、社会保険料が免除されます。ただし、「賞与を支払った月の末日を含む、連続した1ヵ月を超える育児休業」を取得していなければ免除されないことになっているため、2週間など短期間で育児休業を取得している従業員がいる場合には注意が必要です。
終了日の翌日が末日・1日となるケース
免除期間は「終了する日の翌日が属する月の前月まで」であり、月末や1日に育児休業から復帰するケースでは注意が必要です。例えば、従業員が11月30日に育児休業を終了した場合、終了日の翌日(復帰日)は12月1日となり、11月分までが免除の対象になります。一方、11月29日が育児休業終了日であれば、免除期間は11月30日(復帰日)の属する月の前月、つまり、10月分までが免除の対象になります。
①育児休業終了日 | ②復帰日(①の翌日) | ③免除期間(②の属する月の前月) |
---|---|---|
11月30日の場合 | 12月1日 | 11月分まで |
11月29日の場合 | 11月30日 | 10月分まで |
また、育児休業を実際に開始する日が月末で、当日が会社の休日にあたり、開始月に労働日がなかったとしても、開始月の社会保険料は免除されます。ただし、育児休業取得日(育児休業期間)が休日だけとなっているケースでは育児休業を取得したことにならないため、育児休業期間中に労働日が含まれている必要があります。
途中に就労日があるケース
就労日が当初から予定されていたのか、臨時的に出勤することになったのかによって判断は異なります。育児・介護休業法では、労使の合意があれば一時的・臨時的に就労することが認められており、一般的には、臨時で出勤したとしても直ちに育児休業に戻るのであれば、育児休業は継続していると考えられます。このとき、育児休業期間中の保険料は免除されます。
しかし、育児休業期間中に就労日があり、当初から就労することが予定されているケースでは、一度復職したと解される可能性があるため注意が必要です。一度育児休業期間が終了したとみなされれば、そこで免除期間が終わることになります。
なお、一度復職した場合も、月の末日が育児休業期間に含まれるのかどうかが判断のポイントです。月の途中で一度復職しても、同じ月内に再度育児休業を開始していれば、その月の月末が育児休業期間に含まれる限り、その月の保険料も免除されます。
理由や状況によっては、育児休業期間が中断されたことになるのか、継続しているといえるのかの判断が異なる可能性があるため、月末に出勤した場合など、判断に迷うときには年金事務所(健康保険組合に加入する企業の場合は健康保険組合)で相談するのがよいでしょう。
育休期間中の労働保険料の免除
育児休業期間中の社会保険料の免除は有給・無給を問わないため、休業期間中に基本給が支払われていたとしても免除の対象になります。一方、雇用保険は免除の取り扱いがないため、育児休業が有給であれば通常通り給与を支払い、雇用保険料を給与から控除します。育児休業期間中が無給であれば、そもそも保険料が発生しません。有給にすると従業員が育児休業給付金を受給できないため、育児休業期間中は無給とし、雇用保険の育児休業給付金を受給するのが一般的です。
しかし、従業員が育児休業給付金を受給した場合、収入が手取り額の80%程度に減少してしまうことになります。収入減少を理由に育児休業取得を希望しない従業員がいた場合、育児休業の取得率を向上させるために、育児休業期間中でも給与を支払う企業も多くあります。
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