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人事の解説と実例Q&A 掲載日:2023/10/18

新入社員の年次有給休暇は、いつ・何日付与しなければならないか

年次有給休暇は、原則として従業員が入社してから遅くても6ヵ月後には付与する必要があります。この原則に従い、従業員それぞれの入社日に合わせて年次有給休暇の付与日や付与日数を管理していると、残日数や取得状況の管理・把握が煩雑になります。年次有給休暇を付与する基本的なルールを解説するとともに、年次有給休暇の管理の煩雑さを解消する「斉一的取扱い」の方法を紹介します。

年次有給休暇をいつまでに何日付与しなければならないのか

年次有給休暇が発生する要件

入社したばかりの従業員が年次有給休暇を取得するには、以下の要件を満たしている必要があります。

<1年目の従業員>

  • 入社日から6ヵ月間継続して勤務している
  • 入社日から6ヵ月間の全労働日のうち、8割以上出勤している

<2年目以降の従業員>

  • 前回の付与日から1年間継続して勤務している
  • 付与日から直近1年間、全労働日の8割以上出勤している

※全労働日……出勤しなければならない日数。労働の義務がある所定労働日とも言えます

最初に企業が年次有給休暇を付与するのは入社6ヵ月後です。2年目からは、1年目の6ヵ月経過日を基準にして1年ごとに年次有給休暇を付与しなければなりません。

【4月1日に入社した従業員の場合】

最初の年次有給休暇付与:10月1日
以降、毎年10月1日に1年分の年次有給休暇を付与

所定労働日に8割以上出勤しているかどうかという出勤率が問われます。出勤率を計算する際は、「出勤したものとして取り扱う必要がある日」と「全労働日から除いて計算しなければならない日」があるため、注意しなければなりません。

<出勤したものとして取り扱う必要がある日数>

  1. 業務上の負傷・疾病によって療養をするために休業した日
  2. 労働基準法第65条による産前産後休業日
  3. 育児・介護休業法による育児休業や介護休業を取得した日
  4. 年次有給休暇を取得した日

<全労働日から除く日数>

  1. 使用者の責に帰すべき事由で休業した日
  2. ストライキなど正当な争議行為によって労働の提供がまったくなかった日
  3. 休日労働があった日(週1日または4週を通じて4日必要となる法定休日)
  4. 公休、所定休日など法定外の休日、就業規則や雇用契約書で定める休日に労働があった日(法定外休日)

年次有給休暇の付与日数

年次有給休暇は、要件を満たせばすべての労働者に付与されるのが原則です。付与される従業員の対象には、正社員以外にもパート・アルバイトや契約社員といった非正規雇用の従業員も含まれます。

正社員・フルタイムの付与日数

<正社員・フルタイムで勤務する従業員(週の所定労働日数が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上>
勤続期間 6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

勤続期間が長くなるほど年次有給休暇の付与日数は増え、勤続期間6年6ヵ月以上の20日が最大の日数です。勤続期間は、8割以上の出勤率を満たさず年次有給休暇が付与されない年があっても増えていくため、付与日数が勤続期間で計算されているかに注意しなければなりません。

たとえば、従業員が入社して1年6ヵ月経過したときに、病気やケガによる欠勤が多く年次有給休暇が付与されなかったとしても、2年6ヵ月経過したときに直近の1年間の出勤率が8割以上になっていれば、付与される日数は2回目の「11日」ではなく、2年6ヵ月経過時の「12日」が付与されます。

パート・アルバイトの付与日数

「アルバイトには年次有給休暇がない」という認識は誤りです。週に1日のアルバイトであっても、年次有給休暇を付与する必要があります。ただし、週の所定労働日数や年間の所定労働日数が少ない従業員の場合は、その日数に応じて付与日数が少なくなります。

<パート・アルバイトの従業員(週の所定労働時間が30時間未満、かつ、週の所定労働日数が4日以下または年間所定労働日数が216時間以下)>
週所定労働日数 1年間の所定労働日数 勤続期間
6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

斉一的取扱いで、年次有給休暇を管理しやすくする

労働基準法では、年次有給休暇が10日以上付与される労働者には5日以上取得させることが義務となっているため、年5日の取得義務の管理が必要です。また、付与日数や残日数は従業員ごとに異なります。したがって、企業の負担を考えると、管理方法はシンプルなものがよいでしょう。中途採用が多い場合は、入社年月日によってそれぞれ年次有給休暇が付与される日付も日数も異なり、管理が煩雑になります。それを解決するのが「斉一的取扱い」です。

斉一的取扱いとは

「斉一的取扱い」とは、全従業員の年次有給休暇の付与日(基準日)を同じ日に統一する制度です。付与日を統一するには、以下の要件を満たす必要があります。

斉一的取扱いを導入する条件

(1)8割以上の出勤率を計算するにあたって、短縮した期間は、全期間出勤したものとみなして算定する
(2)次年度以降の付与日も、法律上の基準日から繰り上げた期間と同じか、それ以上の期間を繰り上げる
(3)就業規則に付与日や基準日などの取り扱いルールを定め、労働基準監督署に届け出る

斉一的取扱いの具体的な方法

たとえば、4月1日に入社した従業員の最初の付与日が10月1日で、2回目以降の付与日を4月1日に統一するとします。この場合、2年目の付与日は6ヵ月繰り上げることになるため、次の付与日と付与日数は6ヵ月後となる4月1日の「11日」です。以降、毎年4月1日を基準日として付与していきます。

「斉一的取扱い」の方法としては、以下の二つの方法が考えられます。

(1)付与日(基準日)を年始(1月1日)や年度初め(4月1日)に統一する
(2)基準日を入社日から半年後の月初(4月10日に入社した場合でも、付与日を10月10日ではなく10月1日に統一するなど)

(1)の方法は、全従業員の付与日を統一する方法であり、従業員数が多い企業には有効です。中途採用の従業員が多い場合は(2)の方法を採用してもよいでしょう。中途採用では月の初日や賃金締日の翌日に従業員が入社するとは限らないため、同じ月に採用した従業員の付与日を統一できると、管理しやすくなります。

斉一的取扱いの注意点

「斉一的取扱い」のルールを決める際は必ず、労働基準法で定められた基準を下回らないようにしなければなりません。たとえば付与日を年始の1月1日に統一する場合、4月1日に入社した従業員の最初の付与日を1月1日にすることはできません。労働基準法では入社6ヵ月後に付与することが定められており、1月1日では9ヵ月後となってしまうため、労働基準法に反します。最初に10月1日に10日付与し、1月1日に2回目の11日を付与するのが正しい方法です。

従業員に配慮しつつ、管理が簡単な年休付与を

労働基準法の年次有給休暇の付与方法では、従業員は入社して半年が経過しなければ取得することができません。企業としては、入社後すぐに年次有給休暇が取得できるように従業員に配慮しつつ、管理方法をできるだけシンプルな方法にするとよいでしょう。

「斉一的取扱い」により付与日を統一する方法

「斉一的取扱い」では、4月1日から9月30日までに入社した従業員には、統一して10月1日に10日付与し、翌年4月1日に11日付与することで、付与日を統一することが可能です。その後は毎年4月1日に付与していきます。10月1日から3月31日までに入社した従業員には、統一して4月1日に10日付与します。

入社月によって不公平となる部分は残りますが、年次有給休暇の管理の煩雑さを考えると、検討の余地はあるでしょう。

「斉一的取扱い」と「分割付与」を併用して付与日を統一する方法

「斉一的取扱い」と「分割付与」を組み合わせて、1年目は入社時と6ヵ月後に分割して付与し、2回目の付与日から統一する方法があります。この方法では、入社時にすぐ年次有給休暇を付与することができます。ただし、入社月によって付与日が4月と10月の2パターンに分かれ、多少の煩雑さは残ります(「斉一的取扱い」も「分割付与」も労働基準法の付与基準を上回る設計とする必要があるため)。

※分割付与とは
年次有給休暇の一部を前倒しで付与し、残りを入社から6ヵ月以内に付与する方法のこと。入社1年目に限り認められる。2年目の付与日は、最初の付与から1年以内にしなければならない。

(斉一的取扱い・分割付与の併用パターン)
入社月 入社時の付与日数 6カ月経過後の付与日数 斉一的取扱いにより2年目の付与日を統一
4月 4月に5日付与 10月に5日付与 4月から9月までに入社した従業員は4月に2年目の11日付与する
5月 5月に5日付与 11月に5日付与
6月 6月に5日付与 12月に5日付与
7月 7月に5日付与 1月に5日付与
8月 8月に5日付与 2月に5日付与
9月 9月に5日付与 3月に5日付与
10月 10月に5日付与 4月に5日付与 10月から3月までに入社した従業員は10月に2年目の11日付与する
11月 11月に5日付与 5月に5日付与
12月 12月に5日付与 6月に5日付与
1月 1月に5日付与 7月に5日付与
2月 2月に5日付与 8月に5日付与
3月 3月に5日付与 9月に5日付与

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