育児休業後、必ず元の職務に復帰させるべきか
企業としては、従業員が育児休業を取得できるようにすることはもちろんのこと、育児休業から復帰する際に、どのような職務に復帰させるかを事前に考えておくことも重要です。育児休業後の雇用管理上の措置については、法律で決まっている部分もあります。育児休業終了後の職務について、原則としてどのようにしなければならないのか、現実的にはどのような対処ができるのかを解説します。

育休復帰後の職務に関する原則
育児休業後の職務は、「現職」か「現職相当職」に復帰させるのが原則です。厚生労働省の指針では、「原則として原職又は原職相当職に復帰させる」ように配慮することを求めています。
現職相当職といえるかは、企業規模、業務内容、配置、雇用管理状況によって異なります。一般的には以下のいずれにも該当していれば、現職相当といえます。育児休業に入る前の元の職務に戻るのであれば問題はありません。
- 復帰後の職制上の地位が休業前と比べて下がっていない
- 休業前と復帰後の職務内容が異ならない
- 勤務する職場・事業所が休業前と復帰後で同じ
しかし、現実的には休業前の部署・職務がなくなっていることもあります。体力の問題による本人の希望によっては、現職復帰や現職相当職に復帰させるのは簡単ではありません。ときにはある程度職務を変更せざるをえない場面も出てくるでしょう。
円満な復帰へのルールづくり
現実的には現職や現職相当職に復帰させるのが困難なケースもあることから、企業や従業員の事情を配慮した上で、円滑に育休復帰するためのルールを作らなければなりません。
就業規則へ規定を盛り込む
就業規則の育児・介護休業規程には、復帰する部署や職務の内容を変更できる旨の規定を設けておくことが必要です。たとえば厚生労働省が作成した育児・介護休業等に関する規則の規定例では、以下のように記載されています。
第28条
- 育児・介護休業後の勤務は、原則として、休業直前の部署及び職務とする。
- 本条第 1 項にかかわらず、本人の希望がある場合及び組織の変更等やむを得ない事情がある場合には、部署及び職務の変更を行うことがある。この場合は、育児休業終了予定日の1カ月前、介護休業終了予定日の2週間前までに正式に決定し通知する。
育児休業は1年や2年もの長期間に及ぶことが珍しくありません。短期間であれば育児休業を取得した従業員のポストを他の従業員でカバーできますが、長期間休む場合は、育児休業を取得した従業員の職務に新たな従業員を配置する必要があります。
また、従来の職務が忙しい部署であった場合、所定外労働や時間外労働の制限、時短勤務の実施が困難なことから、育児休業明けの従業員を配置できないということもあります。
本人の体力、子どもの面倒が見られる家族の存在、保育園の所在地などを理由に本人が部署異動を希望することもあるため、必ずしも休業前と同じように勤務できるとは限りません。そのようなときのためにも、本人の希望や企業の状況によって部署や職務が変更できるよう、就業規則に規定を設け、雇用管理上柔軟な対応を可能にしておく必要があります。
育休取得者のコミュニケーション
育児休業を取得する従業員と、スムーズに職場復帰できるよう、休業中でも円滑なコミュニケーションを取ることが重要です。育児休業終了時には、前任者との業務の引き継ぎが発生することもあるでしょう。また、育児休業終了後の職場に関することや、業務関係の資料を事前に提供し、従業員の復帰後の職務の内容を説明しておくことも必要です。そのためにも、企業としては、育児休業中でも連絡を取って、従業員の状況を把握しておく必要があります。
保育所へ子どもを預けられないなどの事情があれば、法律上最大2年まで育児休業期間を延長することが可能です。そのため、育児休業が1年間の予定であったとしても、休業期間を延長するケースは珍しくありません。また、育児休業(出生時育児休業を含む)制度、育児休業等の申出先、育児休業給付や育児休業期間中の社会保険料の取り扱いなどを従業員に周知することが法律で義務付けられています。
育児休業を取得している従業員とはコミュニケーションを絶やさないようにしたほうがよいでしょう。育児休業中や復帰後の待遇・労働条件の周知については法律上努力義務となっていますが、それだけではなく、従業員の状況を把握し、職場復帰がスムーズにできるように企業として配慮することが大切です。
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