同一労働同一賃金に対応した、年休などの法定福利厚生・手当について
雇用形態による不合理な待遇差を解消し、公正な待遇の実現を目指すのが「同一労働同一賃金」です。賃金だけでなく、福利厚生や手当なども、同一の条件下で働いている正規労働者と非正規労働者の間で待遇差が生じないようにしなければなりません。
1. 法定福利厚生・手当とは
福利厚生や手当は、労働基準法などの法律で定められたものと、企業が独自に設ける法定外のものに分けられます。
- 社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)
- 労働保険(労災保険・雇用保険)
- 法定休暇(年次有給休暇、産前産後休暇、育児休業など)
- 所定の労働時間を超えたときに支給される手当:残業手当、深夜残業手当、休日出勤手当
- 雇用者側の都合で労働者を休業させたときに支給される手当:休業手当
社会保険への加入が義務付けられている事業所に雇用されている労働者は、正規・非正規雇用(パート・アルバイト・契約社員など)にかかわらず、1ヵ月の労働時間などで所定の要件を満たす場合、社会保険に加入しなければなりません。
一方、法定休暇や法定手当は労働基準法などで取得基準が設けられており、正規労働者だけでなく、非正規労働者にも適用されます。
- 【参考】
- 残業とは|日本の人事部
2. 同一労働同一賃金にかかわる法定福利厚生・手当
同一労働同一賃金の下で、法定の福利厚生や手当をどのように扱えばよいのでしょうか。
年次有給休暇
労働基準法第39条では、年次有給休暇について「雇用を開始した日から数えて6ヵ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、有給休暇を与える」と定められています。正規労働者、非正規労働者に関係なく取得することができます。具体的に付与される有給休暇の日数は、労働時間と所定労働日数によって決まります。
(1)1週間の所定労働時間が30時間以上、かつ1週間の所定労働日数が5日以上であり、1年間の所定労働日数が217日以上の労働者
(2)1週間の所定労働時間が30時間未満、かつ1週間の所定労働日数が4日以下の労働者
※引用:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省
(1)のケースは正規労働者、(2)のケースはパートやアルバイトなどの短時間労働者が当てはまることが多いですが、非正規労働者であっても①のケースに当てはまる場合は、(1)が適用されなければなりません。
年次有給休暇は労働時間と所定労働日数を基準に付与されるものです。非正規労働者であることを理由にこの基準を無視することは、労働基準法に反することになり、同一労働同一賃金以前の問題です。
- 【参考】
- 有給休暇とは|日本の人事部
休業手当
労働者の意思とは関係なく使用者側の都合で休ませる場合、休業手当を支給する必要があります。労働基準法第26条では、以下のように休業手当の取得基準が定められています。正規・非正規雇用に関係なく、すべての労働者に該当します。
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
非正規労働者であることを理由にこの基準を無視することは、年次有給休暇と同様、労働基準法に違反することになります。
- 【参考】
- 休業手当とは|日本の人事部
正規労働者が法定基準以上の法定福利厚生・手当を付与されている場合
非正規労働者であっても、労働基準法に照らし合わせて法定基準を満たす休暇や手当を与えなければなりません。
では、同じ企業で働く正規労働者が法定基準以上の休暇や手当を付与されている場合、非正規労働者には法定基準に即した休暇や手当を与えればよいのでしょうか。
労働基準法ではなく、同一労働同一賃金の違反に注意
パートタイム・有期雇用労働法では、同一企業で働く正規労働者と非正規労働者の間における賃金や賞与をはじめとするあらゆる待遇について、第8条に「職務内容(責任の程度も含む)や職務内容・配置の変更範囲などに応じた待遇をすること(均衡待遇)」、第9条に「労働内容などが同じであれば同じ待遇をすること(均等待遇)」と規定されています。
つまり、正規労働者と同じ仕事をしているのに、非正規雇用労働者であることを理由に待遇に差がある状態は、法に違反していることになるのです。
正規労働者と同じ仕事をしている非正規労働者であれば、年次有給休暇や休業手当なども同じだけ付与されなければなりません。
3. 派遣労働者においても派遣先の労働者との待遇差に注意が必要
ここでは、使用者に直接雇用されている非正規労働者について説明しましたが、派遣労働者についても派遣先の労働者との間で「同一労働同一賃金」が守られなければなりません。派遣労働者は派遣元との労働契約になるため、派遣元が派遣先企業と調整し、派遣労働者と派遣先企業の労働者との間に不合理な差が生まれないよう努める必要があります。
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