シニア・アントレプレナー
シニア・アントレプレナーとは?
「シニア・アントレプレナー」とは、60歳前後のシニア世代になって会社を興したり、NPO・NGOなどを立ち上げたりする起業家(アントレプレナー)のことです。企業人として長く勤めた会社員が、定年を契機に「豊富な経験を活かして社会貢献がしたい」と踏み切るケースが増えています。労働人口が減少に転じるなか、シニア世代による起業を支援する取り組みも官・民それぞれに広がっています。
改正高年法施行がシニア起業を促進か
利益拡大にこだわらず社会貢献を重視
総務省の「就業構造基本調査」で起業家の年齢層別割合の推移をみると、60歳以上の年齢で起業した人の割合は1979年の7%から2007年には27%と、じつに4倍近く増えています。しかも07年に限れば、60歳以上の起業家の割合は他のどの年代より大きくなっています。シニア・アントレプレナー増加の主な要因は、高齢化の進行に加えて、ITの発達などで起業に必要な設備負担が軽減されたこと、そして何よりも若い年代に比べて経験や人脈、資金の蓄積が潤沢で、起業を実現しやすいことにあると考えられます。
リクルートワークス研究所の大久保幸夫所長は、今年4月にスタートする改正高年齢者雇用安定法がこうした傾向に弾みをつけるのではないかと述べています。65歳まで希望者全員を雇用することを企業に義務付ける同法が施行されれば、人件費負担を少しでも軽減しようと、賃金引き下げなど労働条件の変更に動く企業も増えるでしょう。そうなると、気力・体力ともに十分なシニアの中には「労働条件が変わるなら、いっそ起業して自分の能力をとことん活かしてみたい」という発想から、雇用継続より起業の道を選ぶ人たちが現れるのではないかと予測されるわけです(ダイヤモンド・オンライン2013年2月15日付配信)
シニア・アントレプレナー向けの公的な融資制度「シニア起業家資金」を運営する日本政策金融公庫の調査(12年度)によると、シニア起業の特徴は「ローン返済や教育費の支出もほぼ終えているので、利益拡大にこだわらず、社会貢献を重視する傾向がある」点だといいます。同調査の結果からシニア・アントレプレナーが選んだ開業業種をみると、最も割合が多いのは医療・福祉(22.1%)で、次いでサービス業(17.9%)、飲食店・宿泊業(14.7%)となっています。開業動機については「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」が51.1%で最も多く、「社会の役に立つ仕事がしたかった」と「年齢・性別に関係なく仕事がしたかった」(いずれも36.2%)が続いています。半数以上は年金などほかの収入があるためか、収入に対する考え方として「できるだけ多く」と答えたシニア起業家の割合は26.6%、若い世代をはるかに下回っています。
こうしたシニア世代の起業を促進するために、企業としては何ができるのでしょうか。上述の調査で、シニア起業家の斯業経験年数(現在の事業に関連する仕事の経験年数)をみると、平均で17.8年と他の年代層より長く、分布では「30年以上」の割合が最も高くなっています。前職の勤務先での長い経験が起業に活かされていることは間違いありません。その意味では、競業制限規定や兼務禁止規定といった社内規定の緩和が進めば、自社OB・OGによる退社後の起業が促進される可能性は十分にあります。
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