ダンバー数
ダンバー数とは?
「ダンバー数」とは、人が親密な関係性を維持できる人数のこと。1993年に英国の人類学者ロビン・ダンバーが霊長類の脳サイズと社会集団の大きさを考慮し、人が安定した人間関係を築けるのは150人が上限との理論を展開しました。ダンバー数が対象とするのは、現在も継続的に交流している人や、助け合える関係性にある人のみです。「互いに名前を知っているだけの相手」や「昔の知り合いだが今は交流がない人」は含まれません。さらにダンバーは 5人・15人・50人・150人・500人・1500人と同心円状に人間関係の層を示し、外側に行くほど関係の濃度が下がるとしています。
「全員と親しい」は不可能!?
150人の“認知の壁”を乗り越える組織デザイン
スタートアップが急成長すると「30人の壁」「50人の壁」「100人の壁」にぶつかると言われています。社員数が二桁だった頃は社員の顔と名前が一致していたけれど、100人を超えると覚えるのが難しくなる。分業が進み縦割り構造ができることで、コミュニケーションをとるのが難しくなるからです。今まで全員に届いていた社内連絡についていけない人が現れるのも、このタイミング。ダンバー数が言うところの「150人が上限」という理論と重なります。
ただし、150人を超えた瞬間に組織が機能不全を起こすわけではありません。重要なのは「濃い関係を保つべき範囲をデザインすること」。米国のとある広告会社では、本社全体が1000人規模になっても、事業部の最大人数を常に120〜150人以下に区分し、同じフロア内にメンバーを配置しています。困りごとがあったとき、誰に聞けばよいかが分かる状態を維持し、規模が大きくなっても仕事仲間との親しい関係性を継続できるよう設計しているのです。
ただし、ダンバー数における「150人」という数字は万能ではありません。近年の研究では、リモートワークが中心で顔を合わせる頻度が低い企業や、多言語・多文化のチームでは、実感としてのダンバー数が100人程度に下がる傾向があることが分かっています。逆に、濃密なコミュニケーションが社風となっている企業では、200人規模でも一体感があると感じられることもあります。認知の壁は固定ではなく、コミュニケーションの方法や文化的背景によって変わる可能性があるのです。
ダンバーが示した同心円モデルを組織デザインに生かすなら、階層ごとに直径を小さく保つ仕掛けを用意することが有効でしょう。例えば、最も内側の5人にはメンターやバディ制度で濃い関わりを作り、15人の層はプロジェクトごとの関係で緊密に連携する。50人の層では四半期ごとの共有会を設け、150人の層には全社集会でビジョンを共有する。このように同心円上の濃淡を意識したコミュニケーションを設計することで、認知の壁を乗り越えることができるかもしれません。
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