求人票
求人票とは?
求人票とは、求人情報を掲載するために作成するものです。ハローワークや大学に出す求人票や、求人広告媒体に出す求人票などが代表的です。テンプレートによって異なる項目もありますが、法律で記載するべき労働条件などが定められており、職業安定法や労働基準法などを理解した上で記載する必要があります。また、性別や年齢といった法律で禁止されている表記にも注意が必要です。魅力的な求人票を作成するには、求職者のニーズの把握が欠かせません。
求人票とは
求人票とは、求人を出す際に作成するもの全般を指す呼び方です。ハローワークや大学・専門学校・高校の就職課に提出する求人票や、求人広告媒体に出す求人票、転職エージェントに出す求人票などがあります。
求人票の役割
求人票は、企業がどのような人材を募集しているのかを求職者に伝えるために作成します。求人票への記載義務がある業務内容や契約期間などの労働条件のほか、人材に求めるスキル・経験などを記載することで、求職者とのマッチングを図ります。
労働条件はいつ明示すべきか
企業が労働者の募集を行う場合、労働基準法に基づき、労働条件の明示が義務付けられています。
- 業務内容
- 契約期間
- 就業場所
- 試用期間
- 就業時間
- 休憩時間
- 休日
- 時間外労働(所定労働時間を超える労働の有無)
- 賃金
- 加入保険(健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険の適用の有無)
- 受動喫煙防止措置
- 派遣労働者の場合は派遣労働者として雇用しようとする旨などの雇用形態
- 募集者の氏名(会社名など)
求人票によっては、記載できる欄が小さく、詳細まで書ききれないケースがあります。そのような場合は、簡潔に記載して「詳細は面談でお話します」などとすることも可能ですが、初回の面接時には、労働条件の詳細を伝える必要があります。
また、求人票に記載した労働条件の内容から変更がある場合は、速やかに求職者へ変更内容を明示しなければなりません。明示の方法は文書によるものが望ましいとされています。
2024年4月:募集時に明示すべき項目が3点追加
職業安定法施行規則が改正されたことにより、2024年4月から、企業が労働者を募集する際に明示するべき項目が追加されました。以下の通り、業務内容、就業場所については変更の範囲を記載する必要があります。また、有期雇用契約の場合、契約期間を明示するとともに、契約を更新する場合の基準や通算契約期間・更新の上限回数などについての記載も必要です。「変更の範囲」は、雇用した直後のことだけではなく、業務内容の変更や配置転換などの今後の見込みも含まれます。
- 業務内容:(雇い入れ直後)法人営業 (変更の範囲)製造業務を除く当社の業務全般
- 就業場所:(雇い入れ直後)東京本社 (変更の範囲)本社および全国の支社
- 契約期間:期間の定めあり(2024年4月1日~2025年3月31日)
契約の更新 有(契約期間満了時の業務量、勤務成績により判断)
更新の上限:あり(通算契約期間の上限は4年/更新回数の上限は3回)
※通算契約期間や更新回数の上限がない場合は、記載しなくても問題ありません。
求人票に記載すべき内容
求人票に記載する項目は、フォーマットによって多少異なりますが、最低限記載するべき内容は共通しています。
業務内容
募集する求人の業務内容について記載します。業務を具体的にわかりやすく伝えることで、業務の魅力が伝わりやすくなります。たとえば、営業職の場合、業務内容を「営業」とだけ記載するのではなく、顧客の属性や取り扱う製品、営業の流れなどを詳しく記載すれば、求職者もイメージしやすいでしょう。
契約期間
求人の労働契約期間を記載します。期間の定めがある「有期契約」と、期間の定めがない「無期契約」があります。有期雇用の場合は、契約期間を明示するとともに、契約更新の有無や更新の上限の有無を記載します。
就業場所
就業場所について具体的に記載します。複数の拠点がある場合、求職者が誤解しないよう、どの場所で働くかをしっかりと記載します。就業場所について、将来的に転勤等の可能性がある場合は、今後の見込みも合わせて記載しなければなりません。
試用期間
試用期間の有無と、ある場合にはその期間について記載します。
就業時間
働く時間について記載します。「9:00~18:00」のように、始業・終業時刻を明確に記載します。フレックスタイム制を導入している企業で、コアタイムが定められている場合は、その旨も記載します。
休憩時間/休日
休憩時間について、「12:00~13:00」のように明確に記載します。休日は、土日などの毎週の休みのほか、夏季休暇・年末年始休暇について記載します。
時間外労働
時間外労働の有無について記載します。時間外労働がある場合は、時間数は月の平均時間で問題ありません。裁量労働制を採用している場合は、「企画業務型裁量労働制により、〇時間働いたものとみなされます」といった記載が必要です。
賃金
時給、月給、年俸制といった給与形態を記載します。なお、固定残業代がある場合は基本給や時給に含めずに、分けて記載します。その際、固定残業時間・固定残業代、超過した場合に別途残業代を支給する旨を記載する必要があります。
加入保険
雇用保険や健康保険の加入について記載します。採用となった従業員が、社会保険のすべて(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)に加入する場合は、「社会保険完備」と記載します。
受動喫煙防止措置
就業場所における受動喫煙防止の取り組みについて明示する項目です。「屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)」のように記載します。
求人票に記載してはいけない内容
求人票には、男女雇用機会均等法などの法律的観点から、記載してはいけない項目が複数あります。
性別を限定する書き方
「女性限定」「男性募集」のように、性別を限定する表記は男女雇用機会均等法により禁じられています。また、「看護婦」「保母」「〇〇レディ」のような性別を想起させる職種の書き方も禁止事項に該当します。この点を踏まえ、求人票では以下のような書き方にします。
- 主婦(夫)歓迎
- 営業マン(男女)、営業職
- ホールスタッフ ※ウェイターはNG
- 女性活躍中 ※採用にかかる意思ではなく、現場の現状を表す
なお、業務の遂行上、一方の性でなければいけない必要性がある職務については、適用除外職として表記が認められています。
- 次に掲げる職務に従事する労働者に係る場合
- 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務
- 守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務
- A及びBに掲げるもののほか、宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上、その他の業務の性質上、男女のいずれかのみに従事させることについてA、Bと同程度の必要性があると認められる職務
(業務の正常な遂行上、一方の性でなければならない職務に限られます。単に、一方の性に適していると考えられているだけでは該当しません。)
- 労働基準法第 61 条第1項(深夜業)、第 64 条の2(坑内業務の就業制限)もしくは第 64 条の3第2項(危険有害業務の就業制限)の規定により女性を就業させることができず、または保健師助産師看護師法第3条の規定(助産師は女子をいう)により男性を就業させることができないことから、通常の業務を遂行するために、労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与えまたは均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合
- 風俗、風習等の相違により男女のいずれかが能力を発揮し難い海外での勤務が必要な場合、その他特別の事情により労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与え、または均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合
- 【参考】
- 男女均等な採用選考ルール|厚生労働省
年齢による不当な制限
年齢制限は採用活動では原則として禁止されています。ただし、長期勤続によるキャリア形成のため、若年者を期間の定めなく募集・採用する場合など「年齢制限に合理的な理由があると認められる」場合は例外です。その場合は、以下の条件を満たす必要があります。
- 対象者の職業経験について不問とすること
- 新規学卒者以外の者にあっては、新規学卒者と同等の処遇であること
- 「35歳未満の方を募集(職務経験不問)」
※上述の書き方の場合、対象者の職業経験については不問にする必要があります。 - 「40歳未満の方を募集(簿記2級以上所持者)」
※簿記のような実務経験が必要な資格でなければ記載が可能です。
【年齢を記載するのがNGな例】
- 有期労働契約に年齢制限をしている: 「35歳未満の方を募集(契約期間6ヶ月)」
- 職務経験と年齢制限の両方を記載している: 「40歳未満の方を募集(□□業務の経験のある方)」
- 下限年齢を設定している: 「20歳以上35歳未満の方を募集」
応募者が集まる求人票をつくるポイント
求人票を作成しても、なかなか人が集まらないのは採用活動でよくある悩みです。魅力的な求人票を作るには、以下のポイントをおさえ、会社と仕事についてアピールすることが大切です。
・どのような会社なのか
企業規模、ビジョン、業界、将来性、など自社の強みをもとに、どのような会社なのかを会社紹介として簡潔に記載します。何をしている会社なのかをわかりやすく伝えることが、応募者の興味を引くきっかけになります。
・どんな仕事をするのか
業務内容を具体的に書くことで仕事のイメージが伝わります。例えば、エンジニアの募集の場合は、使用言語や開発環境といった情報を追加するなど、職種に合わせて求人票を作成します。
・どんな人に来てほしいか
求めるスキル、経験、人物像などを記載します。自社内の人材要件は詳細に定義していても、求人票にはポイントを絞って記載すると良いでしょう。スキルや経験は、「必須要件」「歓迎要件」にわけると、自社が求める人材像が伝わりやすくなります。
新卒学生のニーズとは
新卒採用では、学生の多様な価値観を把握することが重要です。新卒学生への実態調査アンケートなどが、学生が何を重視して企業を選んでいるのか、動向を把握するのに役立ちます。
たとえば、就活サイト「ONE CAREER」を運営する株式会社ワンキャリアが実施した25卒実態調査では、約4割の学生が「転職」を視野にいれつつ最初のキャリアを選択しています。終身雇用が崩れつつある中で、他社でも通用するポータブルスキルや経験が獲得できる企業への就職を目指していると考えられます。また、4割の学生が「給与」を重視していると回答しています。
将来性だけでなく、福利厚生も重要事項の一つです。就活サイト「キャリタス就活」を運営する株式会社キャリタスの25卒実態調査では、福利厚生を「重視する」と答えた学生は9割以上に上ります。若手が活躍できる場やキャリアモデルを示すと同時に、会社として新卒学生をサポートする環境をアピールすることが重要です。
中途人材のニーズとは
中途採用でも、同様に動向調査が役立ちます。マイナビの転職同行調査2024年版では、11.5%が転職の理由として「給与が低かったから」と回答。転職先を決めた理由でも、「給与が良い」が14.1%と最多で、「給与」が大きな転職理由となっていることがわかります。求人の条件を決めるときは、職種や役職の相場感をもとに設定することが重要といえます。
さらに、「休日や残業時間が適性範囲内で生活にゆとりができる」というのも、転職先を決める大きな要因となっています。全体では、10.0%と給与条件に次いで大きな理由です。月の平均残業時間を記載したり、リモートワークなどの柔軟な働き方ができる制度を記載したりすることは、自社のアピールにつながります。
求人票のテンプレート・書式文例
最後に、求人票の作成の際に参考になるテンプレート・書式文例を紹介します。
求人申込書(様式)│厚生労働省
ハローワークに載せる求人票のテンプレート、書き方が紹介されています。「フルタイム」「パートタイム」の区分や、就業場所の書き方など、基本的な記載方法が網羅されています。
「求人票」の資料・書式文例│日本の人事部
法的規制によるNG表現や、求人票の魅力的な書き方など、さまざまな資料が紹介されています。求人票だけではなく、作る際に活用できるヒアリングシートなど採用の実務で役立つ情報が掲載されています。
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