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【ヨミ】カイコ

解雇

解雇とは?

解雇とは、使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了のことです。普通解雇、整理解雇、諭旨解雇、懲戒解雇の4種類があり、解雇が認められる要件は法律で厳しく制限されています。
解雇の正当性を確保するには、就業規則の解雇事由や懲戒解雇事由に該当することに加えて、解雇の前に注意指導をしても改善が見られないなど、解雇するまでの適切なプロセスが求められます。懲戒解雇をする場合には、弁明の機会を提供したかどうかなどが問われることもあります。また、労働基準法に定める手続きとして、解雇日30日前の解雇予告通知、もしくは解雇予告手当の支払いが必要です。

更新日:2024/01/31

解雇とは

解雇とは、使用者から一方的に労働契約を終了させることです。解雇の有効性の判断は労働契約法で厳しく制限されており、慎重に検討しなければ、解雇が無効となるリスクがあります。

解雇と混同されるものに、退職勧奨があります。退職勧奨とは企業側が従業員に退職を「勧める」ことです。一方的に企業が労働契約を解消する解雇と異なり、退職勧奨は従業員に決定権があります。退職勧奨をした際、従業員が退職しないことを選択すれば、今までどおり働き続けることができます。

解雇の4種類

解雇の種類は、普通解雇、整理解雇、諭旨解雇、懲戒解雇の4種類です。解雇の理由が企業側にあるのか、従業員側にあるのかによって分けられます。

企業側に解雇理由がある
①普通解雇
②整理解雇
従業員側に解雇理由がある
③諭旨解雇
④懲戒解雇

普通解雇

普通解雇は、労働契約が継続できない事情があるときに、労働者側の債務不履行などを理由に、会社側の判断で行われます。普通解雇に該当する理由(解雇事由)には、従業員の能力不足や健康状態の悪化などがあり、一般的には就業規則に記載されます。

ただし、就業規則に記載されている解雇事由に該当しても、解雇の正当性が認められるわけではありません。解雇の理由、状況、解雇に至るプロセスを含め、客観的かつ合理的な理由があるかどうかや、社会通念上相当な判断であるかが問われます。つまり、きちんとした理由があって、やむを得ないと判断できるほど重い場合でなければ、解雇はできないということになります。

整理解雇

整理解雇は、会社が経営不振の際に業務の縮小や経営の立て直しなどを目的として人員整理を行うときに実施します。会社更生手続きにもとづく人員整理や、事業方針の転換による担当業務の消失なども含まれます。一般的には、「リストラ」が整理解雇に該当します。

諭旨解雇

諭旨解雇は、重大な規律違反があった場合に行われます。懲戒処分の一つであり、懲戒解雇の次に重い処分です。

「諭旨(ゆし)」とは趣旨や理由を諭し告げるという意味であり、使用者が労働者と話し合い、両者納得の上で解雇処分を受け入れるのが諭旨解雇の概念です。本来なら懲戒解雇に処すべき事案ですが、本人の反省度合いなど情状を考慮して、処分の度合いをやや緩やかにしています。退職金の一部を支給したり、解雇予告手当を支払ったりすることもあります。

なお、諭旨解雇と似たものに「諭旨退職」があります。諭旨退職は会社側が辞めさせるのではなく、自ら退職するように辞表の提出を促し、従業員に退職を認めさせることを指します。これも懲戒処分の一つです。

懲戒解雇

懲戒解雇とは、企業秩序を乱した従業員に対して行う、最も重い懲戒処分です。従業員を一方的に失職させる処分であり、退職金の一部または全部が支払われません。

労働基準法20条の規定に従って30日前までに解雇予告を行うか、平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。ただし、事前に労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた場合は、解雇予告や解雇予告手当の支払いの義務が免除されます。

なお、一般的には諭旨解雇と懲戒解雇は「懲戒処分」の中でも重い処分です。懲戒処分には、「戒告(かいこく)」「譴責(けんせき)」「減給」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇」「懲戒解雇」などがあり、秩序違反行為の内容や程度の重さによって、処分の重さが異なります。

解雇にあたる正当な理由

解雇は、従業員の生活やその後のキャリアに大きな影響を与えます。解雇が正当なものであると判断されるための条件について、解説します。

普通解雇

普通解雇の事由には、主に従業員の能力不足や適格性の欠如、勤怠不良などがあげられます。

●傷病・健康状態の悪化による労働能力の低下
怪我や病気で働けず、解雇するケースです。ただし、多くの会社では、病気や怪我で業務が行えないときに休職を命じる休職制度を設けており、休職制度を経ず解雇した場合、解雇権の濫用で無効と判断される可能性があります。

●能力不足・成績不良・適格性の欠如
職務遂行能力が不足しているために解雇するケースです。勤務成績が著しく悪い、スキルが足りない、適格性に欠けるなどが主な原因です。ただし、会社にも教育の義務があるため、安易に能力不足や成績不良で解雇するのは危険です。解雇の正当性を巡っては、従業員の能力を向上させるために、教育機会を提供したかが問われることがあります。

●職務懈怠・勤怠不良
無断欠勤、勤務態度の不良、違法行為などが該当します。勤務態度の改善指導、始末書の提出など、段階的な指導・注意をしても改善されない場合に、解雇となります。

●職場規律違反・不正行為・業務命令違反
「経費精算の不正行為」「職場の業務命令を聞かない」といったことも解雇事由に該当します。改善・注意指導をしても改善されない場合は、就業規則に従い、戒告や譴責(けんせき)、減給などの処分をします。それでも改善されない場合に解雇に踏み切ります。

解雇の正当性を判断する上では、上述の解雇事由に該当することは当然ながら、解雇に至るまでのプロセスも重要です。

●就業規則に解雇事由の定めがあること解雇事由に該当すること
●段階を踏んだ注意・指導を実施していること
●解雇予告するか、または解雇予告手当の支払いをすること
●従業員に解雇を通知すること

整理解雇

整理解雇の場合、経営悪化という理由だけではなく、業績悪化を回避するための努力の有無なども問われます。整理解雇を行う際、以下の整理解雇の4要件を満たすことが重要です。

●人員整理の必要性
企業がどうしても人員を整理しなければならない経営上の理由が必要です。経営不振を打開するための努力や、解雇しなければならないほどのやむを得ない理由が求められます。

●解雇回避努力義務の履行
整理解雇を行う以前に、希望退職者の募集、役員報酬のカット、出向、配置転換、一時帰休の実施など、解雇回避の努力を尽くしている必要があります。

●被解雇者選定の合理性
解雇の人選基準が評価者の主観に左右されず、合理的かつ公平であることが求められます。

●解雇手続きの妥当性
解雇の対象者や、労働組合または労働者の過半数を代表する者と十分に協議し、納得を得るための努力を尽くしていることが求められます。

過去の判例(東京地裁平成30年10月31日判決)では、業務提携により担当業務が無くなり整理解雇する際、解雇前に会社側が行った解雇回避努力義務の履行が争点となったことがあります。結果として、会社側が従業員に他のポジションの案内や部署異動の提案を行ったにもかかわらず、従業員が真摯(しんし)に対応しなかったことが確認され、整理解雇が有効とされました。

なお、中小企業では整理解雇の4要件を満たすことが現実的に困難という実情があります。「配置転換したくても職場がない」「一時帰休させるほど企業体力がない」など、大企業のように段階的な雇用調整を行う余裕がない企業が少なくありません。近年では、何かが欠けていても四つを総合的に考慮した結果、相当と認められれば整理解雇を有効とする判例も増えてきています。

諭旨解雇

諭旨解雇は、懲戒処分に該当する事案でありながら、処分をやや緩やかにしたものです。本来であれば懲戒解雇となってもおかしくない処罰であるため、情状を勘案して退職届を出すように勧告し、従わない場合には懲戒解雇となります。

事由としては、パワハラや横領など、重大な就業規則違反や不正行為が考えられます。本人の反省度合い、過去の会社への貢献度合いを鑑み、諭旨解雇とするケースが多く見られます。

懲戒解雇

業務上の横領、経歴詐称、無断欠席、ハラスメント行為など、会社の秩序を著しく害するケースや、著しく損害を与えるケースが懲戒解雇に該当します。たとえば、顧客の個人情報を故意に持ち出し不正に流出させる個人情報漏洩(ろうえい)は、懲戒解雇の対象になり得ます。

ただし、就業規則に懲戒解雇の規定があり、解雇に至るプロセスに正当性が確保されていることが求められます。懲戒解雇の決定を下す前に、十分な調査と事実確認を行い、当事者に弁明の機会を与える必要があります。さらに、企業が懲戒権を公正に行使したと認められるためには、懲戒委員会を開き処分内容を決定することもポイントです。

普通解雇する際の手順

普通解雇を行う際の、企業側に求められるプロセスについて解説します。正当性を巡っては、解雇事由が客観的に合理的かどうか、社会通念上相当かどうかという点が確認されます。解雇に踏み切る前に、注意指導や改善指導を行っているか、解雇するほどであるかを、慎重に判断しなければなりません。

問題行動の把握および注意指導

能力不足や職務怠慢、不良行為などの事由に対して、まずは注意指導を行います。先に行うべきは口頭での注意指導です。その際、「〇〇について口頭で指導した」という指導内容や労働者の反応・発言を正確に記録に残すことが、適切なプロセスを経ていることの証拠になります。口頭ではなくメールやチャットツールを活用することも有効です。

問題行動が改善されない場合、書面通知を行います。この際、従業員の問題について、事実を明確に示していることが重要です。能力不足の場合は、研修など教育の機会を提供します。能力不足の部分や問題行動について、期日を設けて状況を観察します。

懲戒処分

通常の注意指導でも改善が見られない場合、「戒告」「譴責(けんせき)」といった懲戒処分を行います。

戒告は、口頭によって注意を行う最も軽い懲戒処分のことですが、人事考課の判断に大きな影響を与えます。

譴責(けんせき)は、従業員に始末書を提出させて厳重注意を行うことをいいます。問題行動を繰り返さないように、労働者に約束させることが目的です。

退職勧奨

懲戒処分をしても改善されない場合、退職勧奨により、労働者の自主的な退職を促します。あくまで退職を勧めるだけなので、退職を強要することはできません。

たとえ注意指導や懲戒処分を行っていても、退職勧奨は従業員にとって精神的なショックは大きいでしょう。個別の面談の場を設け、理由を丁寧に説明します。回答期限を設定し、従業員に考える時間を与えることも重要です。退職に応じた場合の退職時期・退職金などの条件を明確にし、場合によっては退職金の割り増しや転職先のあっせんといった特別措置を行うこともあります。

退職勧奨を行う際は、退職強要とならないように以下の点に注意します。行き過ぎた退職勧奨は、不法行為と判断される可能性があります。

【退職強要となる一例】
●短期間のうちに何度も面談を行う
●長時間の面談を行う
●相手を圧迫するような強い言葉遣いをする
●本人が退職を拒否しているにもかかわらず、退職勧奨を執拗に続ける

労働者が退職勧奨を拒否した場合、教育体制や企業側の指導に不十分な点がなかったかを確認し、指導からやり直します。退職勧奨は時間がかかるものの、適切なプロセスを踏み、労働者との合意のもとに退職が決定すれば、解雇の正当性を巡るトラブルを避けることができます。

解雇予告

ここまでのステップを経ても状況が改善しない場合、普通解雇を行います。

●解雇予告通知書
原則として、解雇日の30日前までに予告し、従業員に交付します。

●解雇予告手当
30日前に解雇予告を行わず、解雇予告手当を支払って即日解雇とするケースもあります。社員を解雇予告から30日在籍させることで、問題行動が発生するリスクがある場合などが該当します。

なお、「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」は、その事由について事前に労働基準監督署へ申請し、解雇予告除外認定を受けることによって、予告・予告手当なしに解雇することが可能です。ただし、普通解雇で解雇予告除外認定を受けるケースは考えられません。懲戒解雇であったとしても、認定には2週間程度の時間がかかる上に、必ずしも除外認定が認められるわけではありません。

退職後の手続き

解雇した従業員が退職したあと、離職票の送付や社会保険の資格喪失手続き等を行います。

●ハローワークへの手続き
ハローワークに対して、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出します。期限は雇用保険の資格喪失日(退職日の翌日)の翌日から10日以内です。ハローワークで離職票が発行されたら、従業員に郵送や手渡しで交付します。

●社会保険の資格喪失手続き
解雇日から6日以内(資格喪失日から5日以内)に、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を管轄の年金事務所に提出します。

●解雇理由通知書
労働者から退職の理由について証明書を請求された場合には、遅滞なく交付する必要があります。(労働基準法22条1項)

●退職金の支払い
懲戒解雇とは異なり、普通解雇では退職金を支給することが一般的です。

解雇について定めた法律

解雇について定めたさまざまな法律を確認します。

労働基準法、労働契約法

「原則30日前までに予告する」といった、解雇の基本的なルールは労働基準法に定められています。ただし、労働基準法はあくまで手続きを定めたものであり、解雇の正当性の判断とは関係ありません。

●使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。(労働基準法20条1項)

解雇の正当性は労働契約法で判断します。懲戒解雇の場合は、客観的合理性、社会通念上の相当性が求められるため、普通解雇よりもさらに一段ハードルが高くなっています。

●使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。(労働契約法15条)
●解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。(労働契約法16条)

そもそも解雇できない場合

以下に該当する場合は、解雇が法律で禁じられています。

<労働基準法>
●業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
●産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
●労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

<労働組合法>
●労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇

<男女雇用機会均等法>
●労働者の性別を理由とする解雇
●女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業を取得したことなどを理由とする解雇

<育児・介護休業法>
●労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、または育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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