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もう外部に頼るだけじゃない!「研修内製化」の秘訣とは(前編)

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近年、社外の教育ベンダーやコンサルタントに委託していた研修を、自社で内製化しようとする企業が増えている。自社内で研修のプログラムを企画し、社員が講師を務める、「研修内製化」という新たな潮流だ。なぜ、研修を内製化する企業が増えているのか。また、具体的にどのように進めていけばいいのか。「前編」では、そのポイントを整理していく。

なぜ、研修を内製化するのか

社員でなければ教えられないこともある

現在はバブル崩壊後のように、一律に研修を取り止める企業は少なくなっている。グローバル対応、少子高齢化、働き方改革の推進など、経営を取り巻く環境が目まぐるしく変化する状況下、企業が新たな成長戦略を描いて生き残っていくには、人材の強化が必要不可欠だからだ。

研修は将来に向けた投資であるとの見方がある一方で、コストであるという認識の下、費用対効果を求める声も多い。近年は「戦略人事」の重要性が叫ばれているが、人材育成に関する施策も、経営戦略の観点から行われるのは当然のことである。「研修内製化」によってできるだけコストを圧縮し、限られた教育研修予算を最大限に活用しようとするアプローチは正しいと言えるだろう。

ただし、内製化によって見かけ上のコストは削減できても、講師役の社員が日常業務を離れることに伴う機会損失や、内製化によって内部での運用コストが発生するケースもある。そういった見えないコストも考慮に入れた上で、費用対効果のバランスを見ることが重要であり、必ずしも「内製化=コスト削減」とはならないことに留意しなければならない。

さらには、コスト削減だけが、「研修内製化」の目的ではない。例えば、自社の社員が研修の講師を務めるからこそ教えられることもある。多くの企業が人材育成に注力しているが、一般的なビジネスマナーなどとは異なり、現場に即したノウハウや経験談は、外注では教えることが難しい。プレゼンテーション研修を行っている教育ベンダーは数多く存在するが、実際にクライアントに対してプレゼンテーションする際のノウハウは、多くの場合、企業によって内容やロジックが異なる。現場に即した効果的なプレゼンテーションを具体的に教えることができるのはやはり、社内の人間に限られる。それは営業の領域でも同様だ。企業によって、扱っている商品・サービスはさまざま。自社の営業マンだからこそ、顧客によく質問されたり指摘されたりするポイントがわかることもある。

企業によって求められる知識やスキルはまさに多種多様であり、共通なものばかりではない。だからこそ、そうしたノウハウを言語化し、ナレッジとして社内に広く伝授していくことが、人材育成においては不可欠なのだ。このように、コスト削減と現場力強化との両面から、「研修内製化」への関心は高まっていったのである。

「研修内製化」によるメリット・デメリット

内製化するからこそのメリットとは

「研修内製化」にはそのほかにも、さまざまなメリットがある。

(1)自社の状況・ニーズに合った教育が実施できる
第一に、自社の状況やニーズに合った教育を行うことができる点が上げられる。研修会社が提供する汎用的なプログラムと比べると、内製されたプログラムは自社の状況やニーズによりフィットした内容にすることができるからだ。自社の置かれた状況や経営の考え方、仕事の進め方などを熟知した社員が講師を務めることで、より実践的な指導も可能。先進企業の中には「コーポレート・ユニバーシティ(企業内大学)」を設置し、体系的に自社オリジナルの研修を行っているところも多い。前年度の状況や反省を生かし、受講者の反応を見ながら教える内容を変更するなど、柔軟な対応やアレンジが可能だ。

(2)社内講師を務める人材の成長につながる
講師役の社員の成長につながる点も見逃せない。講師を依頼された社員は、教えるために仕事を振り返り、自ら学び直すことになる。また、他人に教えることで、より理解を深めることができる。公の場で人を教え、育てる経験を積むことで、将来、管理職となったときに求められる指導力や人材育成力なども鍛えられるだろう。能力やスキルをさらに高めていくことに意欲的になり、モチベーション向上にもつながると考えられる。

(3)互いに学び合い・教え合う職場風土が醸成される
深い知識やスキル、経験を有し、熱意・意欲の高い先輩社員が講師を務めると、若手社員に「ロールモデル」を提示することにつながる。さらには、「次は自分が教える側に立ち、後輩を育てていきたい」という気持ちを若手社員から引き出し、人材育成の「連鎖」が生まれる。また、講師を経験した社員は人を教え、人を育てることの喜びに気づき、職場でも人材育成について意識を持ち続けるようになる。このように、職場全体で学び合い、教え合う風土が醸成されていく。さらには、研修を通じて講師と受講者、講師同士、受講者同士の間に交流が生まれ、社内コミュニケーションの活発化や、部門間の交流が進むことも期待される。

内製化することにはデメリットもある

一方で、「研修内製化」にはデメリットもある。例えば、自社にない専門知識やスキルへの対応が難しいこと。社外の視点を取り入れないことで、自己満足に陥ってしまうケースもある。また、社員は教育のプロフェッショナルではないので、必ずしも教え方がうまいとは限らない。多忙な社員の場合、講師の仕事が片手間になってしまう可能性もある。社内講師の確保や選定が困難なことや、育成に時間がかかることもあるだろう。人事部以外の社員が講師を務める場合、現場の協力を得られるかどうかも懸念される。


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