2024 年度 新入社員の初任給調査
東証プライム上場企業 152 社の速報集計
「全学歴引き上げ」は 86.8%、大学卒の水準は 23 万 9078 円
労務行政研究所
民間調査機関の一般財団法人労務行政研究所(理事長:猪股 宏)では現在、今年4
月の新卒入社者の初任給を調査している。このほど、4月10日までにデータを得られた東証プライム
上場企業152社について、速報集計の結果を取りまとめたので紹介する。
-
初任給の改定状況
初任給を「全学歴引き上げ」た企業は86.8%で、昨23年度速報集計時の70.7%から16.1ポイント上昇。「全学歴据え置き」は9.2%となり、昨23年度速報集計時 の26.1%から16.9ポイント低下[図表1] -
初任給の水準
大学卒(一律設定)23万9078円、大学院卒修士25万9228円、短大 卒20万5887円、高校卒(一律設定)19万3427円[図表3] -
大学卒に見る上昇額の分布
23年度から「引き上げ」が89.8%、「据え置き」が10.2%。引き上げた場合の上昇額は「1万~1万2000円未満」と「1万4000~1万6000円未満」がいずれも14.4%で最も多い。引き上げた場合の平均上昇額は1万3746円[図表4、5]
-
調査項目
2024 年度の賃金見直しによって確定された 2024 年 4 月入社者の決定初任給(学歴別)。なお、初任給 は原則として時間外手当と通勤手当を除く、諸手当込みの所定内賃金である。 -
調査時期・方法
3 月下旬に調査票を発送、併せて電話による取材も行い、4月10日までに回答のあった分を集計。 -
調査・集計対象
東証プライム上場企業のうち 1604 社に調査票を発送し、回答のあった 152 社を集計。
1.初任給の改定状況[図表 1]
若年労働力人口の減少に伴う新卒採用競争の激化や、物価上昇に伴う大幅な賃上げ機運の高まりなど、初任給の決定をめぐる状況は大きな転換点にあり、注目を集めている。
2024 年度の初任給を前年度から「全学歴引き上げ」た企業は 86.8%と、昨 23 年度速報集計時の 70.7%から 16.1 ポイント上昇した。一方、「全学歴据え置き」した企業の割合は 9.2%と、同速報集計時の 26.1%から 16.9 ポイント低下した。産業別に見ると、製造業は 91.3%と 9 割以上の企業が全学歴引き上げたのに対し、非製造業は 80.0%と 8 割であった。
2.初任給引き上げ率の推移[図表 2]
過去 10 年間における、初任給を「全学歴引き上げ」た企業の割合(初任給の引き上げ率)の推移を見ると、15 年度は、輸出産業を中心とする企業業績の回復やデフレ脱却に向けた賃上げの政労使合意などを背景として賃上げ基調が顕著となった 14 年度に引き続いて、引き上げを実施する企業が増加し、14 年度の 23.2%から 16.7 ポイント上昇の 39.9%となった。16 年度と 17 年度は引き上げ率が 30%前後で推移したが、18 年度は再び上昇し 39.7%となった。19 年度、20 年度は下降基調ながら 30%台で推移したが、21 年度はコロナ禍による業績不振の影響などを受け17.1%と大幅に低下。しかし、22 年度は一転して 40%台、23 年度は 70%台と、2 年連続で大幅な上昇となった。24 年度はさらに上昇して 86.8%となり、過去 10 年で最多となっている。
ちなみに、初任給を「全学歴据え置き」とした企業は、20 年度の 58.5%から 21 年度には 74.3%と上昇したものの、22 年度は 49.7%、23 年度は 26.1%と大幅に低下し、24 年度は 1 割に満たない 9.2%となっている。
※21 年度以前は「東証 1 部上場企業」、22 年度以降は「東証プライム上場企業」の割合。
3.2024 年度決定初任給の水準および同一企業における上昇額、上昇率[図表 3]
全産業で見た学歴別の初任給水準は、大学卒(初任給に差を設けず、一律設定の場合。以下、一律)23 万 9078 円、大学院卒修士 25 万 9228 円、短大卒 20 万 5887 円、高校卒(一律)19 万 3427 円となった。同一企業における昨 23 年度初任給と比較した上昇率は、大学卒(一律)5.4%、大学院卒修士 5.9%、短大卒 6.2%、高校卒(一律)6.5%である。
4.学歴別決定初任給の改定状況と上昇額[図表 4、5]
大学卒(一律)では、「引き上げ」が 89.8%、「据え置き」が 10.2%となっている。引き上げた場合の上昇額は「1 万~1 万 2000 円未満」と「1 万 4000~1 万 6000 円未満」がいずれも 14.4%で最も多い。引き上げた場合の平均上昇額は 1 万 3746 円となった。
労政時報は、WEBや定期刊行誌を通して、人事部門の実務対応や課題解決をサポートする会員制のデータベースサービスです。1930年に定期刊行誌を創刊して以来、常に時代の変化に合わせて、人事・労務の最新情報を提供し続けています。忙しい人事パーソンの実務をWEB労政時報がサポートします。
(運営・発行:株式会社労務行政、編集:一般財団法人労務行政研究所)
http://www.rosei.jp/
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。