【人事労務管理の視点から見る】
ネット上の誹謗中傷対策

事例4. 投稿記事の炎上トラブル

従業員の不祥事がきっかけで、会社を誹謗中傷するような投稿記事等が広まり炎上してしまった場合、例えば、飲食店の従業員が食品を保管している冷蔵庫に入って寝転がっている写真をSNSに投稿したことで、会社への批判的な投稿が相次いだ場合、会社としてはどのような対応が必要でしょうか。

1. 炎上のおそろしさ

投稿記事の炎上トラブル

近年、会社の従業員やその関係者がSNS上に不適切な投稿を行い、それが拡散され、投稿者本人や投稿者が在籍する会社等が非難にさらされる炎上トラブルが非常に多くなっています。投稿者が在籍する店舗や事業所が閉鎖に追い込まれたり、不買運動等が実際に生じているケースもあり、会社として無視できない状況となってきています。また、会社の対応の悪さからさらに炎上してしまう2次炎上といった事態もあり、会社として事前の対策とともに、万が一に備え、事後的な対策を講じられるようにしておく必要があります。

2. 炎上への対応の要否の見極め・対応方法

そもそも炎上に対して会社として何かしらの対応をする必要があるのでしょうか。かかる点については、従業員の投稿した内容が、(1)自社の商品・サービスに関するものであるか否か、(2)個人の生命・身体に影響を及ぼす問題であるか否か、(3)代表者や役員等の重要な立場にある人が関係しているか否か、(4)会社に非がある事柄か否か、(5)刑事責任等を問われるような違法性がある内容であるか否か、(6)公表しないことで逆に非難を浴びる可能性があるか否か等といった観点から、対応の要否につき判断をする必要があります。

本事例では、従業員の投稿した内容は、飲食店のサービスに関するものであり、また不衛生であって個人の身体(健康)に影響を及ぼすような問題でありますから、基本的に会社として何らかの対応を必要とされる事案であると考えられます。

会社としては、早急に事実関係の調査をし、HPや炎上の状況によってはプレスリリースによって公表を行うことが考えられますが、その際には、事実関係の説明や謝罪のみではなく、投稿をした従業員の社内での処分や、事後的な対応(食材の廃棄、店舗の一時的な閉鎖等)、再発防止策(従業員教育等)について言及することが肝要です。

3. 従業員教育等の事前対策

炎上を未然に防ぐための対策としては、従業員教育・研修の実施の他、就業規則への規定の明確化、懲戒処分の運用方針の策定、SNSガイドライン等の策定を行うことが考えられます。

従業員教育・研修の実際の際には、具体的な事例を挙げながら、不適切な投稿を行った場合に、民事上の責任(不法行為に基づく損害賠償責任)や刑事上の責任(名誉毀損罪、侮辱罪、威力業務妨害罪等)が成立し得ること、マスコミ等により報道された場合、会社の信用・イメージが失墜するおそれがあること等を重点的に説明する必要があります。

以上のような炎上対策を行うことで、対内的に懲戒処分を行う際には、従業員教育を行い注意指導をしていたにもかかわらず、不適切な投稿をしたとして、懲戒処分を厳格にすることが考えられますし、懲戒処分や損害賠償請求等で裁判に発展した場合や、マスコミ等により報道された場合等の対外的な場面においても会社の行ってきた対応への理解(会社に非がない、あるいは少ない)を求めることにも資すると思われます。

『ビジネスガイド』は、昭和40年5月創刊の労働・社会保険の官庁手続、人事労務の法律実務を中心とした月刊誌(毎月10日発売)です。企業の総務・人事・労務担当者や社会保険労務士等を読者対象とし、労基法・労災保険・雇用保険・健康保険・公的年金にまつわる手続実務、助成金の改正内容と申請手続、法改正に対応した就業規則の見直し方、労働関係裁判例の実務への影響、人事・賃金制度の構築等について、最新かつ正確な情報をもとに解説しています。ここでは、同誌のご協力により、2017年8月号の記事「事例でわかる 人事労務管理の視点から見るネット上の誹謗中傷対策」を掲載します。『ビジネスガイド』の詳細は日本法令ホームページへ。

【執筆者略歴】
◎瀬戸 賀司(せと よしつか) 中央大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院卒業。平成26年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)経営法曹会議会員。企業法務の中で、主に使用者側の労働問題を取り扱う。労働組合対応として多くの団体交渉に立ち会う。

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