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あの仕事の「ヒト」と「カネ」

【騎手】
初めて女性騎手がG1レースに出場!
競馬は老若男女が楽しめるエンターテインメントへ

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赤鉛筆と馬券を握りしめ、シニア男性が怒号を飛ばす――かつての競馬場はそんなイメージのある場所だった。しかし今では、家族が公園のような感覚で訪れたり、若い男女がデートで利用したりできる、明るい場所へと変貌。性別や年齢にかかわらずに楽しめるエンターテインメントを目指してきた競馬場の取り組みが効果をあげ、ここ数年で競馬人気は過熱している。その人気の中心的存在といえるのが騎手だ。ターフを颯爽(さっそう)と駆け抜け、多額の賞金を稼ぎ出すスター騎手は、どのような訓練を経て騎手の座にたどり着いたのだろうか。

女性ファンの取り込みでV字回復を見せる競馬産業

かつて競馬産業には長い低迷の時期があった。中央競馬の馬券総売上は1997年をピークに14年連続で減少を続け、1400万人を超えていた来場者も2011年には約600万人にまで減少。だが、前述のような取り組みによって、2011年からV字回復を遂げ、売り上げは前年比103%程度の成長をキープ。来場者数も2018年時点で約630万人と盛り返しを見せる。

もう一つ、女性や若年層の競馬ファンを増やすきっかけとなったのが、2016年2月にJRAで16年ぶりに誕生した女性騎手、藤田菜七子さんの存在だ。当時18歳だった彼女は、デビューから2ヵ月後にJRAで初勝利を収め、2018年6月には31勝を記録。最高レベルのレース「G1」で騎乗する権利を得た。藤田騎手の快進撃は止まらず、2018年8月にはJRA女性騎手として通算35勝で最多勝記録を更新し、同年12月には年間最多勝記録を更新した。2019年2月には、デビュー4年目にして晴れてG1デビュー。G1レースに女性騎手が出場するのは史上初のことだったが、武豊騎手などG1での勝ち経験のあるジョッキーら13人の騎手とともに戦い、5着に食い込む好戦ぶりだった。こうした歴史的な出来事を追い風に、競馬業界はさらに女性ファンを獲得していきたい考えだ。

馬と騎手のドラマチックなレースには
競馬ファンならずとも感動する

馬主、調教師、厩務員。騎手は最後にレースを任される存在

騎手の仕事は言うまでもなく、競馬のレースに出場すること。最大18頭で着順を競い、入賞すると順位に応じて賞金がもらえる。競馬のレースには「平地競争」と「障害レース」、馬がそりを引きながらスピードを競う「ばんえい競馬」という種類に分けられる。多くの人がイメージするのは平地競争だろう。最も有名なレースの一つでもある「日本ダービー」では、18頭で2400メートルを争う。競馬というと賞金の高さが特徴的だが、賞金総額が3億円の「日本ダービー」では、1着馬の賞金は2億円。騎手の取り分は5%のため、勝ち騎手はその1回で1000万円を手にすることとなる。まさに一攫千金の、夢のある職業だ。

レースには、さまざまな関係者が関わることになる。生まれた競走馬を馬主に売る「生産牧場」、馬を買い所有する「馬主」、馬を馬主から預かり鍛え上げる「調教師」、調教師のもとで馬の世話をする「厩務員」。競走馬には最低でもこれだけの人が関わっており、騎手は彼らの期待を背にして最後にレースを任される存在なのだ。

騎手がレースに出られるのは、競走馬をもつ厩舎から依頼があった場合。馬主や調教師は、持ち馬の出走が決まれば、騎手を探すことになる。同じ厩舎に騎手が所属している場合もあるが、基本的には、実力や馬との相性、レース当日のスケジュールなどによって決められる。厩舎から直接依頼が来る代わりに、最近ではJRAのエージェントから騎乗依頼が来ることも増えている。レースへの出場が決まると、騎手は出走する競走馬と実際に走ることで、競走馬の調子や癖などをつかんでいく。騎手には初めて出会った馬と関係性を築いていくことが求められるほか、調教師や厩務員ともうまくコミュニケーションを取っていかなければならない。

「馬と共に生きていきたい」という強い
思いが、厳しい訓練を耐え抜く力となる

騎手になるには、小柄で運動能力が高いこと、馬に乗るのが好きなことが前提条件だ。速く走るためには、騎手の体重は軽い方がいい。騎手養成学校の入学条件にも、制限体重が設けられている。騎手になってからも50キロ前後の体重を維持しなければならず、レース前に体重が増えてしまった場合、絶食を余儀なくされることもある。そのほかに騎手に必要な素養は、闘争心があると同時にフェアな感覚を持ち合わせていること。レースにはかなりの大金がかけられているため、強い闘争心がなければ勝ち続けることはできない。また、競馬は公営のギャンブルであり、自分の着順に人々の金銭事情が左右されるため、不正は絶対に許されない。

レース中はかなりのスピードが出るため、命をかけてレースに参加していると言っても過言ではない。時速70キロものスピードが出る馬の背中に乗りバランスを取るのは、予想以上に難しいのだ。落馬したり馬に蹴られたりして重傷を負うこともあれば、死亡事故も起きている。互いに闘争心を持ちながらも、冷静に周囲の状況を把握するための広い視野が必要だ。

まずはJRAか地方競馬の騎手養成学校受験に向けた努力を

現在中央競馬には、東西あわせて約130名の騎手が在籍している(そのうち女性騎手は前出の藤田騎手のみ)。騎手になるために最も一般的な手段は、養成学校を卒業し、国家資格である騎手免許試験に合格することだ。中央競馬と地方競馬それぞれに養成学校があり、騎手養成学校を卒業することで騎手免許の試験を受ける権利を得られる。養成学校は、千葉県白井市にある日本中央競馬会の「JRA競馬学校」と、栃木県那須塩原市にある地方競馬全国協議会の「地方競馬教養センター」の2校。前者が3年、後者が2年の就学年数となっており、どちらも倍率が高く狭き門となっている。JRA競馬学校の場合、毎年150人ほどの受検者に対し、合格者は10人前後。地方競馬教養センターの倍率も同程度だ。

競馬学校の入学条件は、20歳未満であることと、体重が46キロ以下(誕生日によって多少異なる)であること。また、視力は裸眼で「0.8以上」で、色別力、聴力、健康状態に支障がないことも条件となる。危険と隣り合わせの職業であるだけに、身体的な条件がかなり大きい。第1次試験では、身体検査、運動機能検査、学科試験、集団面接が行われる。体重測定で応募資格の制限体重を超えていれば、その時点で不合格という厳しさだ。第2次試験は、3泊4日の合宿形式で審査される。内容は、身体検査に加え、実際に馬に乗る騎乗適性検査や運動機能検査、保護者面接など。この時点では騎手さながらに騎乗する必要はなく、未経験でも問題はない。

騎手養成学校では、基礎体力訓練、騎乗技術、厩舎作業、学科(競馬関係の法律、仕組み、馬学、競争理論)などを学ぶ。特徴的なのは時間帯だ。実際の厩舎での調教は早朝3時に始まる。少しでも朝の早さに身体を慣らすため、寮での起床は5時40分、夏時間は4時40分となっている。2年生からは「実践課程」となり、東西のトレーニングセンターで厩舎スタッフとして住み込みながら、騎手としての生活を体になじませていく。卒業直前には模擬レースも行われ、卒業後には国家資格である騎手免許試験を受検する、という流れだ。晴れて免許を取得したら、JRAの場合は茨城県の美浦か滋賀県の栗東にあるトレーニングセンターに所属し、そこが勤務地となる。地方競馬の場合は、全国に所在する15ヵ所いずれかの地方競馬場に所属する。

騎手の収入は、5位以内に贈られる賞金に加え、レースに騎乗することで支払われる「騎乗手当て」と「騎手奨励手当て」が中心となる。賞金の騎手の取り分は1位で5%。数億円規模のJRAのレースで勝つと数千万円が手に入るが、地方競馬の場合は、賞金総額が1億円を超えるレースは限られており、数百万円、数十万円というものもある。例えば、賞金20万円のレースで優勝すると、賞金は1万円。そのため地方競馬の騎手は、トップクラスでも年収600万円ほどと言われている。一方、JRAの騎手は平均年収が1000万円程度、実力のある騎手は2000万円を超えることもある。待遇にこれだけの差があるため、多くの人は養成学校を受験する時点でJRAを第一希望に据え、合格しなかった場合に地方競馬を受けているようだ。しかし、JRAも地方競馬もどちらも狭き門。お金をモチベーションにしていては、厳しい訓練を耐え抜けないだろう。「馬と共に生きていきたい」という強い思いが、もっとも騎手に必要なものかもしれない。

この仕事のポイント

やりがい自分の走りによって多くの人の金銭事情を左右するプレッシャーを乗り越え、配当に関わる3着以内に入ること。また、競走馬と一心同体になって、馬の特長を活かした走りができたとき。
就く方法JRAまたは地方競馬が運営する騎手養成学校に入学して、座学と実践を学ぶのが騎手への入り口として一般的。卒業後は国家資格である騎手免許試験を受検することになる。
必要な適性・能力体格が小柄で高い運動能力を有していることが前提条件。多くの関係者と関わるため、高いコミュニケーション能力があり、レースに勝つための闘争心と事故防止のためのフェアな精神を併せ持っていることも必要。
収入レースの賞金(騎手の取り分は5%)、騎乗手当て、騎手奨励手当てが騎手の収入となる。JRAの騎手は平均年収が1000万円ほど、地方競馬の騎手は500~600万円ほど。JRAの場合、実力のある騎手は年間2000万円以上を稼ぐことも珍しくない。

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