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あの仕事の「ヒト」と「カネ」

【声優】
作品に命を吹き込むように、声を吹き込む。
憧れの仕事までの狭き門

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幼い頃に見ていたアニメのキャラクターの声は、大人になっても結構覚えているものだ。数十年たった今でも、テレビからふとその人たちの声が聞こえてくると、「あのキャラクターの声だ」とピンとくる。顔も髪型も背丈も知らず、知っているのは「声」だけ。それでも時を超えてその人だと識別できるのだから、声が持つ力は偉大だ。今回は、身近だが実はよく知らない声優の仕事に迫ってみたい。

アニメに洋画にナレーション。声優が活躍できる場は幅広い

声優の仕事は、多くの人が知る通り、声で演技をすること。アニメや洋画の吹き替えの他にもゲームに出てくるキャラクター、テレビ番組やCMのナレーション、ラジオパーソナリティなど、仕事の場は多岐にわたる。声が個性的で滑舌がよければ声優になれると思う人もいるかもしれないが、それはまったくの間違い。発声の技術と同時に演技力が大いに必要な職業なのだ。

声優の仕事場の中心となるのは録音スタジオだ。密室に数本のマイクスタンドが立てられ、大きな画面を見ながら自分の出番が来るごとにマイクの位置まで出ていく。この吹き替え作業を「アテレコ」もしくは「アフレコ」と呼ぶ。自身の体を使って表現する役者とは違い、声優の場合はキャラクターや映画俳優の動きが前提にある。その分、役者よりその世界に入り込むのが大変かもしれない。

声優の実際の仕事は、録音スタジオに出勤し、音響監督やスタッフとの打ち合わせ後にキャラクターを演じ、本番テイクでOKが出れば収録終了となる。収録の進行はとれ高次第のため、録音が長時間になることもある。アニメの場合は、アフレコが行われるまでは「絵」でしかない。絵が同じでも声が変わるとまったく別の性格のように見えるため、原作者や監督が持つイメージをしっかりと受け止め、それを声に乗せて表現することが大切だ。キャラクターの個性を引き出せるかは、声優にかかっているといっても過言ではない。

声だけで作品の世界観を表現するために
高度な技術と感性が必要とされる

洋画の吹き替えの場合は、実際の映像があるため、より繊細な声での演技が必要となる。話される言語によって会話のテンポや口の動きが変わってくるため、アフレコには高度な技術が必要になる。特に、日本で韓流ブームが起こってからは、日本に輸入される韓流ドラマが増え、この分野での需要は増えていると言われている。

しかし、全体で見ると声優志望者に対する案件数は多いとは言いがたく、声優の技術を学んでも必ず仕事にありつけるとは限らない。声優を目指しているのは約30万人といわれるが、実際に声の仕事で食べていけるのは300人程度だという。ベテラン声優になってもオーディションを受けて仕事を得なければならない、非常にシビアな世界なのだ。一方、人気アニメのキャラクターと演じる声優を重ね合わせた熱烈なファンが増加し、アイドルのような人気を集める声優も出てきた。テレビ番組への出演機会も増えるなど、かつては「顔が見えない」存在だった声優のあり方も変化している。

今はコンテンツの時代。声優の仕事は徐々に増えている

声の仕事だけで生計を立てていくのはとても大変だ。派遣労働やアルバイトをしながら、声優の仕事を得ている人たちも少なくない。しかし業界全体で見ると、ゆるやかにではあるが声優の仕事は増えている。アニメが配信されるチャネルは、もはやテレビや銀幕だけではない。サブスクリプション型の動画配信サイトでは次々とオリジナルコンテンツが作られ、アニメや海外作品はますます増えている。コンテンツが増えているということは、声優の仕事も増えるということ。今後も声優が活躍できる場はある程度担保されるだろう。また、「声だけの出演」なので、活躍の場は実年齢によってほとんど影響はない。年を重ねるにつれて若干の声の変化はあるだろうが、顔を出さない分、演じられる役柄はそれほど制限されない。例えば、少女の役を60歳の女性がカメラの前で演じることは難しいが、マイクの前でならそれも十分可能である。

それでは、声優に求められる適性やスキルはどのようなものなのだろうか。アニメに洋画、ナレーションなど、活躍の幅が広いことは前述の通りだが、どの領域で仕事をするにしても必要なのは演技力と表現力だ。顔が見えない分、感情を声に乗せるしかない。しかし、オーバーな演技になってしまうと作品を壊してしまう。そのため声優たちは、下積み時代はもちろんのこと、ベテランになっても発声や演技のレッスンやトレーニングといった訓練を欠かさない。脚本から、キャラクターの気持ちを読み取るためには、感受性も大切になるだろう。また、声優は多くのスタッフや共演者たちと関わりながら働いている。自分がこうしたい、自分が目立ちたいという自分本位な考えではこの仕事は成立しない。原作者や監督が望むものをしっかりと汲み取り、ときには声のプロとして意見も言う。協調性や双方向のコミュニケーションができる人がのぞましいだろう。

声優になるためには、声優養成学校に入学し、卒業後は声優事務所に所属するというフローがもっとも一般的だ。声優事務所が養成学校を運営しているケースも珍しくないが、卒業すれば自動的に所属できる学校ばかりではなく、所属するためにはオーディションを受けなければならないことが多い。晴れて事務所に入ることができても、事務所の中にはランクがあり、見習いのような立場からスタートする。事務所によっては「既定の実績を残さないと退所」というシビアな規約が設けられているところもあり、定期的に仕事を獲得できていないと、事務所にい続けることすら難しくなってしまう。下積み時代にさまざまな仕事を経験して実績をつくると「正所属」という立場になることができる。

声優のギャラは、ランクに応じて決まる

映像コンテンツが増えているといっても、たくさんのライバルの中で仕事を取り続けるためには、オーディションへの積極的な挑戦が必要となる。声優のオーディションには、前述の「事務所に所属するためのオーディション」と「作品ごとのオーディション」がある。新しいアニメが制作されることになると、多くの場合は制作側から声優事務所に声をかける。前者では、面接と演技審査が行われることが多く、後者では、役のイメージに合うセリフを渡されて、順番に演技をしていくのが一般的だ。原作者や監督が同席し、「役のイメージに合うか」が審査されている。

実際に声優業で生計を立てられるのは
ほんの一握り。シビアな競争社会だ

気になる声優のギャラだが、経験や実績に応じたランクによって金額は多少変わってくる。新人の場合、1本の出演で15,000円程度。次のランクになると、30分ほどの作品・番組で15,000円から45,000円。この場合、週に1本のレギュラー番組があってもひと月あたりの報酬は6万円ほど。一般的に、アニメや映画よりナレーションや企業案件の方がギャラは高いため、定期的にそういった仕事を得られていれば、声の仕事だけで食べていくことも可能だろう。人気声優や有名俳優になると「ノーランク」と呼ばれ、ギャラは一気に引き上がる。その名の通り上限がつかず、都度交渉となるため、年収1,000万円を超えることもあるという。いずれにしても、声優は狭き門。「絶対に夢をかなえるんだ」という信念を持ち、訓練や下積み時代を生き抜かないことには仕事にありつけない。演技力なども必要だが、前向きに努力し続ける姿勢がもっとも大切な素養かもしれない。

この仕事のポイント

やりがい多様なキャラクターの人生を生きることができる。声優の仕事を通していろいろな価値観に触れ合い、人間的にも成長できる環境は魅力の一つだろう。また、テレビや映画など影響範囲も大きいため、自分が関わった作品が評価されると充足感を得ることができる。
就く方法声優養成学校に通うことが一般的だが、必須ではない。仕事を得るためには、事務所に所属するためのオーディションを受けるか、作品ごとのオーディションを受ける。いずれも競争率は高い。
必要な適性・能力声だけで感情を表さなければならないため、演技力と表現力は欠かせない。また、多くのスタッフや共演者と関わるため、協調性も必要。そして、狭き門をくぐり抜けるための前向きな姿勢がないと、この世界で生き抜くことは難しいかもしれない。
収入「ノーランク」と呼ばれる人気声優になると、年収1,000万円を超すこともある。下積みや中堅の場合は、一番組あたり15,000円から45,000円ほど。アルバイトなどと両立している声優も多い。

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