ASTD2014International Conference & Expo
[ 取材・レポート ] 株式会社ヒューマンバリュー 主任研究員 川口大輔
2014年5月4日~7日に、米国ワシントンD.C.にて、「ASTD2014 International Conference & Expo(ICE)」が開催されました。このコンファレンスでは、毎年世界各国から集まった先駆的企業やプラクティショナー、教育機関・行政体のリーダーたちが、現在直面している課題やこれからの人材・組織開発のあり方について、組織の枠を超えて多くの人と学び合います。本レポートでは、ASTD2014の様子・雰囲気、また現地でどのような議論が行われていたのかを紹介することを通して、グローバルの人材・組織開発の動向を探っていけたらと思います。
ASTD2014 International Conference & Expo の概要報告
■ASTDとは
ASTDは、American Society for Training and Developmentの略称で、企業や政府などの人材開発・組織開発の支援をミッションとし、米国ヴァージニア州アレクサンドリアに本部を置く会員制組織であり、1943年に設立されました。世界126カ国に41,000人の会員を持つ、人材開発&トレーニングに関する世界最大級の組織です。
■ASTD International Conference & Expo(ASTD国際会議)とは
ASTD International Conference & Expo(ASTD国際会議)は、ASTDが年に一度開催している人材開発や組織開発に関する世界で一番大きなイベントです。2014年は、ワシントンD.C.にて開催され、4日間で3つの基調講演と350以上のコンカレント・セッション、EXPOのブースも300以上出展されました。参加者は、米国だけではなく欧州、アジア、南米、中東など世界92ヶ国から約10,500人を数えました。
日程 | 2014年5月4日(日)~7日(水) |
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場所 | 米国ワシントンD.C. ウォルター E ワシントン・コンベンション・センター |
セッション数 | 約400件
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基調講演 |
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コンテント・トラック (9カテゴリー) |
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インダストリー・トラック (3カテゴリー) |
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■ASTD2013 International Conference &Expo開催実績
- 参加人数:10,500名以上
- 海外からの参加:2,250名
- 参加国数:92ヵ国
- 参加者の多い国の状況:韓国…256名、カナダ…250名、中国…197名、日本…136名、ブラジル…105名
2014年 | 10,500名 |
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2013年 | 9,000名 |
2012年 | 9,000名 |
2011年 | 8,500名 |
2010年 | 8,000~9,000名 |
2009年 | 8,000名 |
2008年 | 10,000名 |
2014年 | 2013年 | 2012年 | 2011年 | 2010年 | |
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韓国 | 256名 | 387名 | 384名 | 451名 | 390名 |
カナダ | 250名 | 235名 | 188名 | 214名 | 202名 |
日本 | 136名 | 172名 | 146名 | 119名 | 103名 |
世界中の人材・組織開発の実践家・研究者たちがワシントンD.C.に集う
今年のASTDは、5年ぶりのワシントンD.C.のコンベンション・センターでの開催でした。ワシントンD.C.は米国の首都として政治・金融・文化の中心となる街として日本人にも人気があり、ASTD本部があるアレクサンドリアにも隣接しています。コンファレンスの参加者の中にも、セッションの合間にホワイトハウスやスミソニアン博物館等を訪れる方も多かったようです。
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今年は、ここ数年で最高の10,500名(前年から1,500名増加)の人々が参加したこともあり、例年以上に活気にあふれたコンファレンスとなりました。コンファレンスは日曜日から水曜日までの4日間の開催です。毎日のセッションは朝8時くらいから夕方5時くらいまで行われ、基調講演に加えて、毎日3つ程度のコンカレント・セッションに参加します。ひとつの時間帯に20以上のセッションが同時並行で行われるので、どれに出ようか迷いながら、参加するのもASTDの醍醐味です。今年は特にニューロサイエンス(神経科学)を取り扱ったセッションの人気が高く、中には満席で部屋に入れないものもありました。
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セッションの風景
(多くのセッションはグループワークを取り入れ
インタラクティブに行われる)
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インターナショナル・オリエンテーション
(海外からの初参加の人向けの説明会)
以前はセッションのハンドアウトを紙で配布していましたが、今はASTDのサイトから誰でも気軽にダウンロードできるので、スライドを眺めているだけでも世界の潮流に触れることができます。専用のアプリもあり、iPad等を持ち歩きながら参加する人も増えています。セッションの合間には、EXPOに参加したり、ASTDのブックストアを訪れたりします。今年のEXPOには、300以上のブースが出展し、にぎわっていました。
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大勢の人でにぎわうEXPO
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ブックストア
(基調講演者のサインイベントも行われる。
アリアナ・ハフィントン氏のサイン会は長蛇の列)
また、政府関係者が集まるガバメント・パビリオン、海外からの参加者が集うグローバル・ビレッジといったスペースがあり、世界各国から来た参加者がコーヒーやスナックを片手に会話したり、写真を撮影したりして、交流の輪を広げていました。特にグローバル・ビレッジは、例年以上に広いスペースが設置されていて、海外からの参加者の増加が肌身で感じられました。
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グローバル・ビレッジ
(世界各国からの参加者が集う)
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グローバル・ビレッジ
(世界各国からの参加者が集う)
ASTDからATD(Association for Talent Development)へ
そして今年は、会期中の5月6日(火)にCEOのトニー・ビンガム氏より、ASTDが名称をATD(Association for Talent Development)へと変更するとのビッグニュースの発表がありました。ASTDの委員会では、数年前から名称の変更について検討を重ねていたようですが、自分たちの貢献領域が「トレーニング」を超えて、人々のタレントや能力を最大限に高めるという観点からより幅広い分野へと広がってきたこと、またASTDのコミュニティがアメリカ一国ではなくグローバルに広がってきているといった背景から、「Association for Talent Development」という名称になったようです。トニー・ビンガム氏は、冒頭の挨拶の中で、「Change」というキーワードを投げかけていましたが、これは人材・組織開発に携わる私たち自身がが、ミッションや目的を今一度見直し、変革していこうとの意志の込められたものだったように思います。 名称変更のアナウンスがあった翌日には、コンファレンスの飾りつけがすべて「ATD」に変えられているといった力の入れようでした。名称変更については、よりグローバルなコミュニティへの成長への期待から、参加者にも好意的に受け止められていたようです。
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ATDへの名称の変更を発表する
トニー・ビンガムCEO
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発表翌日には会場の装飾も
すべてATDに
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