「春闘や賃上げの動きによる意識・行動調査」を実施
2025年春闘結果や賃上げの動きをきっかけに、
8割が自身のキャリアや賃金について再考し、4割が行動※
転職・副業など社外に目を向けた行動を始める人も2割超※
※いずれも、2025年春闘結果や賃上げの動きを認知している人を対象とした割合
世界No.1求人サイト*1「Indeed (インディード)」の日本法人であるIndeed Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:淺野 健、以下 Indeed )は、20代~50代のフルタイム勤務の正社員*21,000名を対象に、「春闘や賃上げの動きによる意識・行動調査」を実施しました。
2025年の春闘では、平均賃上げ率が5.37%と過去30年以上で最高水準*3となり、大手企業を中心に初任給の引き上げや月額賃金のベースアップなども相次ぎました。一方で、2024年の実質賃金は3年連続で前年を下回り、2025年も4月まで4か月連続でマイナスとなるなど*4、物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない現状や、物価高そのものへの懸念も見られます。こうした社会的な動向がある中で、日本の労働市場に大きな影響がある春闘の結果は、労働者が自身の待遇やキャリアを見直すきっかけともなり得ます。
そこで Indeed では、全国の20歳~59歳の正社員を対象に、春闘の結果や賃上げの動きを受けて、自身のキャリアにおける意識・行動がどう変化したのかを調査するとともに、春闘の結果が内部労働市場・外部労働市場にどのような影響を与えうるかを調べました。
*1:Comscore 2024年3月総訪問数
*2:2025年3、4月に勤め先で賃金の改定があり、かつ従業員規模が2名以上の企業に勤める正社員
*3:「2025春季生活闘争 第4回回答集計結果」(2025年4月17日 日本労働組合総連合会 発表)
*4:厚生労働省「毎月勤労統計調査」令和7年4月分結果速報
■ 調査結果 主要ポイント
- 正社員の76.1%が2025年3月~5月にかけての賃上げの動きを認知し、43.2%は2025年春闘結果まで認知
<賃上げの動きを認知している人*5(761名)の意識・行動変化>
- 春闘の結果や賃上げの動きを認知している人のうち、79.8%がそれらの動きをきっかけに、自身の賃金やキャリア・働き方等について検討
- 「勤め先における今後のキャリアパス(社内での昇進や昇格の道筋)」について考えた人は54.3%、「転職」について考えた人は47.3%にのぼる。
- 春闘の結果や賃上げの動きを受けて、40.4%が賃金・キャリア・働き方に関して行動を起こす
- 具体的に行動した内容は、自分の現在地の確認(給与明細、給与テーブル、人事制度の確認)を行う人が多く、33.6%にのぼる。
- 一方で、24.3%が「転職活動を始める」「副業を始める・検討する」「世の中の給与水準を調べる」など勤務先の外に目を向けた行動を開始している。
*5:「2025年春闘結果、ならびに賃上げの動きもある程度知っている人」と「2025年春闘結果は知らないが、賃上げの動きはある程度知っている人」を合計した総称
<2025年春闘結果を知った上での、世の中の賃金動向への意識>
全体(1,000名)に、2025年3月時点での主な大手企業の春闘回答結果を示した上で、今後の世の中の賃金動向について聴取すると、
- 2025年春闘結果について、73.5%が「もっと企業は賃金をあげるべきだ」、73.1%が「インフレや物価高に比べて十分ではない」
- 春闘結果や賃上げの動きをふまえた今年の夏のボーナスへの期待は、「昨年よりも増えると思う」が27.9%と限定的。トランプ関税による夏のボーナスへの影響を懸念する人が多い(61.4%)
■ Indeed Hiring Labエコノミスト 青木雄介 コメント
「春闘の賃上げは一部の大企業にとどまり、企業のレピュテーションや広報的目的、政治的配慮によって動いているため、市場代表性に乏しく、必ずしも実際の労働需給を反映していないのではないか」という見方は少なくありません。確かにそうした側面は否定できませんが、今回の調査は、そのような見方では捉えきれない賃上げの波及効果の存在を明らかにしています。
調査では、春闘の結果や賃上げの動きを認知していた人の約4割が、勤務先の賃上げ程度にかかわらず、自身の賃金・キャリア・働き方に関する行動を起こしていることがわかりました。特に、現在の勤務先の外に目を向けた行動(転職活動、副業の検討・開始、他社の給与水準調査など)に動いた人の割合は無視できません。こうした動きは、労働者の期待形成を通じて外部労働市場を活性化させ、企業に対する賃金上昇圧力として作用する可能性があります。
実際、Indeed上で観測される掲載求人賃金の上昇トレンドの一部は、春闘の賃上げ率に端を発する期待の高まりと、より高い賃金の検索、それに応じた求職者の行動変化(例:自発的離職率の上昇)に起因するものと考えられます。
似たような構造は、国際的な研究でも観察されています。たとえばUAW(全米自動車労組)による2023年のストライキが引き起こした賃上げは、他の非組合自動車メーカーの賃上げに影響を与え、かつ自動車産業に比べると軽微ではあるものの製造業全体における賃金交渉スタンスや賃上げ期待に影響を与えたと考えられています。オーストラリアでは労組の存在が非組合企業に賃上げ圧力をもたらしています。
加えて、春闘のような制度的・象徴的な賃上げが、「参照点」として機能し、労働者の行動を促す点は、伝統的なサーチ理論モデルとも整合的に見えます。
このことは、今後春闘がなければ賃金が上がらないことを意味しているわけではありません。インフレや労働市場の逼迫さに対応して、企業が柔軟に常に賃金を見直すことが市場の本来のメカニズムです。しかし、長らくデフレで、名目賃金の変化が限られてきた日本においては、少なくとも初期段階においては、春闘のような制度的イベントが、企業・労働者双方にとって「行動のきっかけ」や「期待形成の基準点」となった点で意義があったと言えるでしょう。
■「春闘や賃上げの動きによる意識・行動調査」概要
- 調査主体: Indeed
- 調査対象:現在就業中の20歳~59歳の正社員男女1,000名(2025年3、4月に勤め先で賃金の改定があり、かつ従業員規模が2名以上の企業に勤める正社員)
- 割付方法:2025年春闘結果と賃上げの動きについての認知度3区分(両方を認知・賃上げの動きのみを認知・いずれも非認知)×年代(20代・30代・40代・50代)4区分の計12セル
- 補正:正社員の性年代人口構成比(10歳刻み)にあわせて事前調査サンプルを補正。その後、補正後の事前調査サンプルにおける、本調査割り付けセルの構成比にあわせて、本調査サンプルの割り付けセル構成比を補正
- 調査方法:インターネット調査
- 調査期間:2025年5月15日(木)~2025年5月19日(月)
※構成比(%)、差分(pt)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合や、少数第1位までの計算とは数値が異なる場合があります。
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(Indeed Japan株式会社/7月4日発表・同社プレスリリースより転載)
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