人事部の実態調査(人事の課題編)
人事部が取り組みたいテーマ、2年連続「人材育成・組織開発」1位
累計13,000社400万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(旧株式会社ラーニングエージェンシー 所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞﨑大輔)および人と組織の未来創りに関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所は、2024年1月15日~3月25日の期間で、企業の人事責任者・人事担当者340名を対象に「人事部の実態調査」を行いました。本レポートでは、人事部が抱えている課題について調査結果を公表いたします。
<背景>
2023年に義務化された人的資本の情報開示を通じ、働く人材の価値向上が企業の価値向上につながると捉える「人的資本経営」の考えがますます注目されています。社員育成の重要度が高まり、経営戦略と連動した人事戦略に取り組む企業が増える一方、何から手を付けてよいかわからないと当社にもお悩みの声が届きます。近年は入社前後のギャップや“配属ガチャ”による若手社員の早期離職、さらには人手不足による優秀な人材の獲得競争の激化など、人材の定着・確保の課題に直面する人事担当者も多くいらっしゃいます。当社では、社員の育成を第一に考える経営者、人事担当者の抱える課題を一緒に解決すべく、まずは実際に人事部がどのような課題を抱いているか実態調査を行いました。
<調査結果の概要>
● 人事部として取り組みたいテーマ「人材育成・組織開発」が2年連続トップ。301名以上の企業では9割超と昨年より割合高まる
● 人材育成・組織開発を推進する上での課題、300名以下企業は「現場社員の育成に割ける時間がない」、301名以上企業は「部署による意識・取り組みの差」がトップの回答に
● 育成環境の課題、「人材要件・教育体系の整備」と回答する割合が最大
● 最も注力して取り組みたい育成階層は「次期管理職」。301名以上の企業は7割を超える結果に
<調査結果の詳細>
1. 人事部として取り組みたいテーマ「人材育成・組織開発」が2年連続トップ。301名以上の企業では9割超と昨年より割合高まる
本調査では、企業の人事責任者・人事担当者340名に、人事部として抱えている課題や、今後取り組みたいことなどの実態調査を行いました。その結果を、従業員が300名以下の企業(以下、『300名以下企業』と記載)と、301名以上の企業(以下、『301名以上企業』と記載)に分けて分析した結果をご紹介します。
初めに、人事部として取り組みたいテーマ(課題)を質問しました。結果、300名以下企業は84.0%、301名以上企業は95.1%が「人材育成・組織開発」と回答する結果となりました。特に301名以上企業は、300名以下企業より11.1ポイント高く、ほとんどの企業が取り組みたいテーマ(課題)と認識していることがわかりました。次いで、「採用」が300名以下企業は67.1%、301名以上企業は72.5%と続きました。 300名以下企業と301名以上企業の差を比較すると、「経営との連動性の向上」が、301名以上企業が300名以下よりも12.7ポイント高くなりました。割合としては高くないものの、大企業の人事部は中小企業よりも、人材戦略を経営の一貫として捉える傾向にあることが示唆できます。
次に、同様の質問を昨年の結果と比較しました。300名以下企業では、順位は変わらないものの「人材育成・組織開発」の割合は昨年の90.1%から6.1ポイント、「労務管理」は29.7%から7.2ポイント減少し、「経営との連動性の向上」の割合は22.5%から3.0ポイント上昇する結果となりました。
一方、301名以上企業では、「人材育成・組織開発」と回答した割合が、昨年の93.7%から1.4ポイント上昇する結果となりました。「採用」も13.6ポイント上昇し、最大の伸び率となりました。301名以上の大企業では、「人材育成・組織開発」や「採用」に関する取り組みを重視する割合が、昨年よりも高まっている傾向が見受けられました。
2. 人材育成・組織開発を推進する上での課題、300名以下企業は「現場社員の育成に割ける時間がない」、301名以上企業は「部署による意識・取り組みの差」がトップの回答に
8割以上の人事部が「人材育成・組織開発」を今後取り組みたいテーマ(課題)として考えていることがわかりましたが、人材育成・組織開発を推進する上でどのような課題があるのでしょうか。
300名以下企業では「現場社員の現業が忙しく、育成に割ける時間(育成施策を受ける時間)がない」と回答した割合が61.3%と最も高くなりました。次に「人材育成・組織開発を推進するメンバーの知識が不足している」が59.3%、「人材育成・組織開発を推進するメンバーの人手、時間が不足している」が58.2%と続きました。
301名以上企業では「部署によって育成への意識や取り組みに差がある」と回答した割合が75.3%となりました。この割合は300名以下企業よりも21.2ポイント高く、最大の差となりました。次に、「現場社員の現業が忙しく、育成に割ける時間(育成施策を受ける時間)がない」が73.2%、「人材育成・組織開発を推進するメンバーの人手、時間が不足している」が70.1%と続きました。
3. 育成環境の課題、「人材要件・教育体系の整備」と回答する割合が最大
さらに、育成環境の整備について、どこに課題を感じるか質問しました。 300名以下企業では、「人材要件・教育体系の整備」が48.5%と最も高く、次に「評価制度の見直し」が41.6%、「キャリア開発の仕組みづくり」が39.0%と続きました。
301名以上企業では、「人材要件・教育体系の整備」が61.8%と最も高く、300名以下企業と同様の結果に。次に、「キャリア開発の仕組みづくり」が59.8%、「社員満足度の向上」が52.9%と続きました。
従業員数関係なく、人材要件・教育体系の整備に最も課題を感じていることがわかりました。
4. 最も注力して取り組みたい育成階層は「次期管理職」。301名以上の企業は7割を超える結果に
最後に、特に注力して取り組みたい育成の対象を質問しました。
300名以下企業では、「次期管理職」が61.9%と最も高く、次に「中堅社員全般(25歳~35歳かつ役職がついていない社員)」が60.6%、「リーダー(現場でプロジェクト等を推進する役割をもつ社員)」が56.3%と続きました。
301名以上企業では、「次期管理職」が74.5%と最も高く、その割合は300名以下企業よりも12.6ポイント高くなりました。次に、「中堅社員全般(25歳~35歳かつ役職が付いていない社員)」が58.8%、「既任管理職」が57.9%と続きました。
<まとめ>
本調査結果より、人事部の取り組みたいテーマは2年連続「人材育成・組織開発」がトップとなりました。特に301名以上の大企業では9割以上の人事部が「人材育成・組織開発」を取り組みたいテーマと回答しており、300名以下の中小企業よりも課題として認識している企業の割合が高いことが明らかになりました。
「人材育成・組織開発」を推進する上で、どのような課題があるか質問したところ、300名以下の中小企業では「現業が忙しく育成にかける時間がない」と回答した企業が6割に達し、育成時間の捻出に課題を抱えていることがわかりました。一方、301名以上の企業では、7割以上が「部署により育成の意識・取り組みに差がある」と回答し、全社を巻き込み育成施策を実施する難しさを感じていることが推察できました。
社員の育成を推進するためには、育成の環境を整備することが重要となりますが、育成環境の整備においては、企業規模に関わらず「人材要件・教育体系の整備」が最大の課題であることが明らかとなりました。人材要件・教育体系を構築するためには、経営方針を深く理解し、経営と連動した体系づくりが求められます。そのためには、まずは経営の方向性を明確に言語化した上で、育成施策への落とし込みを推進すること。さらには、落とし込んだ育成施策を全社に共有する場を計画的に作っていくことが重要でしょう。
<調査概要>
調査対象者 当社サービスを活用している企業の人事責任者・人事担当者
調査時期 2024年1月15日~2024年3月25日
調査方法 Webでのアンケート調査
サンプル数 340人
属性
(1)業種
情報通信業 102人(30.0%)
サービス業(他に分類されないもの) 55人(16.2%)
製造業 48人(14.1%)
卸売業,小売業 43人(12.6%)
建設業 15人(4.4%)
金融業,保険業 11人(3.2%)
不動産業,物品賃貸業 9人(2.6%)
運輸業,郵便業 8人(2.4%)
学術研究,専門・技術サービス業 8人(2.4%)
医療,福祉 4人(1.2%)
生活関連サービス業,娯楽業 4人(1.2%)
電気・ガス・熱供給・水道業 4人(1.2%)
教育,学習支援業 3人(0.9%)
複合サービス事業 3人(0.9%)
公務 2人(0.6%)
宿泊業,飲食サービス業 2人(0.6%)
農業,林業 2人(0.6%)
鉱業,採石業,砂利採取業1人(0.3%)
その他 16人(4.7%)
本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(ALL DIFFERENT株式会社/ 5月24日発表・同社プレスリリースより転載)