2022年度、累計163万人超のストレスチェックデータを分析
株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)のストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者163万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っています。
今回は2022年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、およそ41万人の結果を分析し、従業員のストレス度合の変化を調査しました。
■結果の要約
2022年度のストレスチェックでは、以下の特徴がみられました
- 不良な結果となったのは「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」「仕事の質的負担」「仕事の量的負担」
- 良好な結果となったのは「職場のハラスメント」「役割明確さ」「抑うつ感」
- 2021年度より大きく悪化したのは「身体的負担度」「疲労感」
- 2021年度より大きく改善したのは「安定報酬」「役割葛藤」「情緒的負担」
■経年で特に差が生じた5つの尺度
2022年度の結果の中で昨年度よりも差が大きく変化した尺度をご紹介します。その中でも差の大きかった5尺度は以下のとおりです。
括弧内の数値は2021年度にくらべて、どれくらい良好もしくは不良に変化したかを示しています。
【悪化した項目】
① 身体的負担(‐3.0%)
② 疲労感(「ひどく疲れた」-1.7%、「へとへとだ」-2.2%、「だるい」-1.2%)
【よくなった項目】
③ 安定報酬(+2.1%)
④ 役割葛藤(+1.9%)
⑤ 情緒的負担(+1.0%)
以下では、それぞれについて解説します。
1.身体的負担
身体的負担は、設問「からだを大変よく使う仕事だ」への回答状況から算出します。
不良回答をした割合が2021年度にくらべて3.0%増えました。「身体的負担」は業種や職種間での差も大きく、特に2022年度は「生活関連サービス業、娯楽業」(※)で悪化傾向がみられました。生活関連サービス業、娯楽業は、2020年の新型コロナウイルス感染症流行初期に大きなダメージを受け、人員整理を余儀なくされた企業も多い業種です。コロナの制限が徐々に解除されたことで、人手不足に対応しきれなくなり、身体的負担につながったと考えられます。
※日本標準産業分類に基づきます(以下、同じ)。生活関連サービス業、娯楽業は、個人に対して日常生活と関連して技能・技術、または施設を提供するサービスなどが分類されます。
2.疲労感
疲労感は、設問「ひどく疲れた」「へとへとだ」「だるい」の回答状況から算出します。
疲労に関する3つの設問は、2020年度以降、悪化の傾向がみられます。
2022年度からはテレワークが減少傾向にあり、出社率が増えました。コロナ禍のテレワーク勤務や外出自粛により運動不足で体力が落ちたなか、少しずつ出社が増えたことで、働く人の多くが体力的にも疲労を感じていると考えられます。また、社内でのコミュニケーションが苦手な人にとっては、出社となることで対面でのコミュニケーションが増え、精神的な疲労を感じている可能性も示唆されます。
3.安定報酬
安定報酬は、設問「職を失う恐れがある」への回答状況から算出します。
良好回答をした割合が2021年度にくらべて2.1%増えました。
株式会社帝国データバンクが発表している「人手不足に対する企業の動向調査」によると、2022年10月時点で人手不足を感じている企業の割合は、正社員では51.1%、非正社員では31.0%となり、国内で新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年4月以降でそれぞれ最も高くなったとしています。こうした人手不足感の上昇から、企業側でも労働者の退職防止や人材確保のために、働き方改革や人事制度の見直し、学び直し制度の実施など改善を図る企業が増えた可能性があると考えられます。
4.役割葛藤
役割葛藤は、設問「複数の人からお互いに矛盾したことを要求される」への回答状況から算出します。
良好回答をした割合が2021年度にくらべて1.9%増えました。業種別にみても12業種において、前年より良好回答が増えています。
5.情緒的負担
情緒的負担は、「感情面で負担になる仕事だ」への回答状況から算出します。
良好回答をした割合が2021年度にくらべて1.0%増えました。2022年4月から規模を問わず全企業のハラスメント対策が義務化されていることから、アンガーマネジメントや、レジリエンスの研修などを積極的に行う企業も見受けられます。従業員自身が感情を上手く処理できるようになったことで、良好回答が増えたのではないかと考えられます。
■さいごに
2020年~2022年度までの3年間、新型コロナウイルスの影響により、社会は大きく変化しました。2022年度は、人材不足を背景に仕事の負担増による疲労感が増加したものの、企業が退職防止や人材確保のための改善策をとっていることから職を失うリスクは下がりつつあるものと考えられます。
人材不足が深刻化している今、従業員のストレス状況を企業が把握して改善していくことは非常に大切です。ストレスチェックの結果は、個々の従業員や職場の現在のメンタルヘルス傾向を知るうえで、非常に重要なデータとなります。ストレスチェックの結果に課題がある場合は、一次予防として原因を検討し、ぜひ職場環境改善に活かしていただきたいです。
■調査対象
調査対象:
ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2020年度~2022年度受検者
対象受検者数:
410,352人(2022年度)
324,624人(2021年度)
240,275人(2020年度)
199,290人(2019年度)
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社ドクタートラスト / 8月1日発表・同社プレスリリースより転載)