新卒採用支援サービス市場に関する調査を実施(2020年)
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の新卒採用支援サービス市場を調査し、各種サービス別の市場動向、参入事業者の動向、将来展望を明らかにした。
2018年度の新卒採用支援サービスの市場規模は前年度比5.7%増の1,252億6,200万円
~若手人材獲得競争の激化と採用活動の効率化・省力化に対する需要の高まりにより、新卒採用支援サービスは引き続き拡大~
1.市場概況
2018年度の新卒採用支援サービス市場規模は、前年度比5.7%増の1,252億6,200万円であった。
将来的な労働力・人材不足を背景に、企業の新卒採用意欲は依然として高く、学生優位の売り手市場が続いている。学生にとっては、過度な就職活動をしなくても内定を獲得し易い状況になっているため、就職情報サイトや合同企業説明会への登録者・参加者数は減少しており、学生の就職活動量(説明会への訪問回数や企業へのエントリー登録件数等)は減少傾向にある。さらに、学生の売り手市場によって学生の就職志望先は、より認知度の高い大手企業や有名企業に集中することとなり、中小企業や地方企業の多くは厳しい新卒採用活動を強いられている。
新卒採用活動が有利とされる大手企業では、インターンシップの準備と対応、本選考活動、採用した新入社員の受け入れなどに加え、学生の囲い込みや内定辞退の回避に向けて、学生への早期アプローチや繋ぎ止めの施策など、採用活動に関連する業務は増加しており、その期間も長期化している。さらに、就職情報サイトや合同企業説明会からの膨大な学生のエントリー登録の集中により、スクリーニング(学生の選別)にかかる業務量の増加や選別の精度が課題となっている。
一方、新卒採用活動に苦慮している中小企業や地方企業の多くでは、就職情報サイトに依存しない“ナビ離れ”の動きが加速しており、新卒紹介サービスの利用や中小企業向けの採用直結型のマッチングイベントへの参加など、採用効率の期待できる採用支援サービスへ需要が移行している。
こうした企業の新卒採用活動における課題解決に向けて、新卒採用支援サービスに対する需要はより一層高まり、さらには採用手法やサービスに対する需要の多様化が進展している。
2.注目トピック
通年採用への移行で需要の多様化が進む採用支援サービス
2019年4月に、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)と大学側で開催された産学協議会において、これまでの新卒一括採用を見直し、通年採用の導入を広げていくことが合意された。この合意を受けて、今後、新卒一括採用から通年採用への移行が本格化していくことで、既卒・第二新卒や外国籍人材(外国人学生)に対する採用活動がより活発になることが予想される。
既卒・第二新卒に対する採用需要は、新卒採用に苦慮している中小企業や地方企業などを中心に、新卒採用計画の未達分を補完することを目的に高まっており、こうした採用需要に対応すべく新卒採用支援事業者では、新卒領域でのサービス展開に加え、既卒者や第二新卒などの20代若手人材を対象にした採用支援サービスを新たに開始・注力するケースが増えている。
外国籍人材(外国人学生)に対しては、近年、日本人大学新卒者の確保が困難な職種・職務、例えば、機電系・IT系のエンジニアといった情報処理分野の技術開発職、日本語以外での言語力・コミュニケーション力が求められる貿易業務、翻訳・通訳、海外業務といった職種において採用需要が高まっている。また、訪日外国人客数が急速に増加する状況を受けて、宿泊業や小売業、飲食・サービス業などを中心に、旺盛なインバウンド需要の取り込みに向けて、訪日外国人との円滑なコミュニケーション(接客)によって満足度の向上、或いは機会損失を回避すべく、外国人学生を採用・活用するケースも増えている。このように日本企業の外国人学生に対する採用意欲が拡大しているなか、外国人学生向けの採用支援サービスに対する需要は、今後より一層高まっていくとみる。
3.将来展望
2019年度の新卒採用支援サービスの市場規模は前年度比2.7%増の1,286億4,300万円の見込み、2020年度は同0.4%減の1,281億2,900万円を予測する。
学生優位の売り手市場が続くなか、企業の採用部門における採用活動に関連する業務は増加しており、さらに、働き方改革関連法の施行によって採用業務の効率化も求められていることから、採用活動の効率化・省力化に対する需要はより一層高まっていくとみられ、新卒採用支援サービスの需要は拡大していくと考える。
一方で、新型コロナウィルスの感染拡大への対策として、2020年3月開催の合同企業説明会などのイベントの多くが開催自粛(中止・延期)になったことでイベント・セミナー市場の減少が見込まれ、その影響によって2020年度の新卒採用支援サービス市場全体は減少に転じるものと予測する。
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(株式会社矢野経済研究所 / 4月10日発表・同社プレスリリースより転載)