震災後の帰宅困難に備え マニュアル作成や備蓄計画を
「いつ起きてもおかしくない」と言われている、首都直下地震や南海トラフ地震。東京都による首都直下地震などの被害想定では、都内で最大517万人の帰宅困難者が出るとされる。実際に震災が発生した場合、従業員の安全を守るために企業にはどのような対策が求められるのだろうか。
東日本大震災の際は、大勢の人が徒歩で帰宅した。都市防災などを研究する東京大学大学院工学系研究科の廣井悠准教授の調査によると、当時の成功体験をもとに、多くの人が「次に同じ状況になっても、同じように帰る」と回答したという。しかし、首都直下地震を想定したシミュレーションでは、都内で働く人々が一斉に帰ると、1㎡、つまり電話ボックス程度の面積に6人が密集している状態があちらこちらで発生すると想定される。転倒してケガをする人が出たり、車道が渋滞して緊急車両が通れなくなったりすることもあるだろう。
そこで東京都は、震災が起こった場合に一斉帰宅を抑制する取り組みを推奨。2018年、「東京都一斉帰宅抑制推進企業認定制度」を創設した。都内に本社または事業所があり、積極的に一斉帰宅抑制対策を進める企業49社を推進企業に認定。このうち、特に優れた取り組みをしている企業として、アスクル株式会社や森ビル株式会社など12社をモデル企業に選定している。モデル企業の一つ、精密加工装置の株式会社ディスコは、地震発生後、本社で過ごせるように全従業員分の3日分の飲料水と食料を備蓄。また、従業員に会社近隣への居住を推進し、自宅に食料を備蓄するとインセンティブを支給するなどしている。(株式会社ディスコHPより)
大きな地震が平日の昼間に東京で発生した場合、帰宅困難者が多数発生し、混乱する確率はかなり高くなる。近年BCPを定める企業は増えているが、そのような事態を想定した上で、帰宅困難者対策の計画とマニュアルも作成する必要があるだろう。
(『日本の人事部』編集部)