企業の雇用管理改善が生産性向上・業績向上に効果的であることを実証~今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業(平成27年度)(厚生労働省)
厚生労働省では、このたび、「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業」の報告をとりまとめましたので公表します。 近年、景気の緩やかな回復基調に伴い、有効求人倍率が上昇傾向にある中において、特に中小企業の多くで人材不足が常態化することが予想されま す。そのため、企業の労働条件や職場環境等の改善の取り組みと、労働生産性及び業績の向上との関連性を把握し、雇用管理改善等による有効なミスマッチ解消 のあり方について検討することを目的に本調査研究事業を行いました。
厚生労働省は、本報告をホームページに公表するとともに、今後の施策に活用していきます。
<調査結果からのメッセージ>
●雇用管理改善の取組は、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながる
- 本調査の分析結果は、雇用管理改善の取組が、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながることを示している
- ただし、それには企業の取組において以下の観点が重要。また、行政の役割も重要である
【企業】
●経営においては、「従業員満足度」と「顧客満足度」の両方を重視するのが重要
- 経営方針として「顧客満足度」を重視している企業は多いが、「従業員満足度」を上位に挙げる企業は必ずしも多くない
- だが、調査結果は、業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いに対して、どちらかだけでなく、両方を追求することの効果が高いことを示している
- 経営者は、自社の経営方針を従業員に浸透させることが望ましい
●雇用管理改善に、継続的取り組むことが大事
- 分析結果は、雇用管理改善の取組期間が短い企業よりも、継続的に取り組んでいる企業で、業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いが高いことを示している
- つまり、継続的に取り組むことで雇用管理改善の結果は出る
- ヒアリング調査でも、たとえ効果が明示的でなくとも継続的に取り組むこと、 また、計画的に取り組むことの重要性が示唆された
【行政】
●表彰・認定は、取組を推進する効果がある
- 企業が雇用管理改善に継続的に取り組むことに対して、行政としても支援すべきである
- 取組企業を表彰・認定することは、取組の推進につながる
<調査結果のポイント>
1.企業の雇用管理改善と業績、人材確保との関係
-「雇用管理改善への取組」を進めるのはどのような「経営方針」の企業か
●「雇用管理改善への取組」の度合いと、企業の「経営方針」の間には関係性が見られた
- 経営方針として「従業員満足度」や「顧客満足度」を重視している企業は、そうでない企業に比べて、雇用管理に関する各種施策を実施している割合が高い
- 中でも、「従業員満足度」「顧客満足度」の両方を重視している企業(以下、「従業員・顧客満足度重視企業」)での実施率が高く、「10年以上前から実施」など早期から取り組んでいる
-「雇用管理改善への取組」と「人事目標の達成度合い」
●「雇用管理改善への取組」と「人事目標の達成度合い」の間には関係性が見られた
- 雇用管理改善に「10年以上前から実施」しているなど、早期から実施している企業で、人事目標の達成度合いが高い傾向が見られたことから、両者には関係性があるが、雇用管理改善が効果を現すには(5年、10年などの)時間が必要なことが示唆された。
-「雇用管理改善への取組」と「業績向上・人材確保」の関係
●「雇用管理改善への取組」と「業績向上・人材確保」には因果関係があることが示唆された
- 雇用管理改善を「10年以上前から実施」している企業では、5年前の業績が総じて良い。また、「10年以上前から実施」しているなど、早期から実施している企業での現状の業績が総じて良い。これらのことは、雇用管理改善への取組と、業績の向上に因果関係があることを示唆していると考えられる
- また、雇用管理改善に取り組んでいる企業、特により早期から取り組んでいる企業において、正社員が「量(人数)・質ともに確保できている」とする割合が高く、人材が確保できている
-「人事目標の達成度合い」と「業績向上・人材確保」の関係
●雇用管理改善は、「人事目標の達成度合い」を高め、それが「業績向上・人材確保」につながることが示唆された
- 人事目標の達成度合いが高い企業において、売上高営業利益率が「増加傾向」にある企業の割合が高い。また、正社員が「量(人数)・質ともに確保できている」とする企業の割合も高い
- 雇用管理改善は、人事目標の達成度合いを高め、それが業績の向上・人材確保につながることが示唆された
2.雇用管理改善に取り組む企業(従業員・顧客満足度重視企業)の特徴
- 雇用管理改善に取り組む企業(従業員・顧客満足度重視企業)は、「経営ビジョンがあり、従業員に浸透している」、「会社として地域の事業に参加している」、「採用では、会社の理念に合う人材であるかどうかを考慮している」という企業の割合が高い
- また、「企業の競争力の源泉は従業員一人一人の働きにある」、「社業の発展のためには従業員全体の育成や処遇を大切にするべき」、「必要な人材は社内で育成・活用」との考え方が強い
- 従業員1人あたりの年間教育訓練費が総じて大きい
3.働きやすい職場環境の整備に関する表彰・認定等の効果について
- 「従業員・顧客満足度重視企業」では、それ以外の企業に比べて、働きやすい職場環境の整備に関する表彰・認定等を受けることによる何らかの効果があったと考えている割合が高い
- 効果としては、「従業員に働きやすい職場の環境の整備に関する意識が高まった」「従業員の意欲・士気が向上した」「従業員の定着率が向上した」「新卒採用の応募が増加した」「業務の質が向上した」「職場環境・人間関係が改善された」などが挙げられている
- 表彰・認定は、働きやすい職場環境整備に取り組んだ結果、与えられるものであるが、ヒアリング調査からも、これを受けることで、意識が高まり、より環境整備が進んだり、ひいては定着率の向上などの人事成果につながることが示唆された
目次・本論(PDF:1,608KB)
各論第1章 事業の概要(PDF:943KB)
各論第2章 アンケート調査(PDF:2,200KB)
各論第3章 ヒアリング調査(PDF:2,798KB)
巻末資料(PDF:2,000KB)
【照会先】
職業安定局雇用政策課
課長 中井 雅之
中央労働市場情報官 森川 直哉
(代表電話)03(5253)1111(内線5672)
(直通電話)03(3595)3290
雇用開発部雇用開発企画課
課長 北條 憲一
課長補佐 百崎 諭
(代表電話)03(5253)1111(内線5330)
(直通電話)03(3502)1718
◆ 詳しくはこちらをご覧ください。
(厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp// 6月20日発表・報道発表より転載)