サービスエンジニア、「指示されたことを的確に行うことが必要だが、現場対応も積極的に行うことが望まれる」と94%が回答。反面、お客様への関心が薄い傾向~2016年『サービスエンジニアとしての意識』調査:ジェック
本調査は、株式会社ジェックが担当したサービスエンジニアのための対人能力強化コース(ファン客創造編)において、サービスエンジニア自身の意識傾向を確認し成長の方向を知るために、研修開始冒頭に実施しているものです。設問では、「サービスエンジニアの5つの意識」を問い、回答は「そう思う」「わからない」「そう思わない」の三択式です。
本報告では、サービスエンジニアの特徴及び回答傾向と併せて、研修現場での傾向やマネジメントのポイントについてご紹介します。
【サービスエンジニアの特徴】
I. 技術を高めてお客様に役に立つことには高いプライドを持っている
反面、機械への対応に目が向き過ぎて、お客様への関心が薄い傾向が推察される
サービスエンジニアは、技術でお客様のお役に立っていこうという強い想いがある傾向が見られます。そこにはサービスエンジニアとしてのプライドがあるようです。
特に、臨機応変に対応することに意識が高く、技術に対しては、現状維持より高いレベルの技術を身に着けようとしていることが伺えます。
1. 「エンジニアの仕事は、指示されたことを的確に行うことも必要だが、現場対応も積極的に行うことが望まれる。」に「そう思う」と答えた方が94%
2. 「沢山の技術を身に付けることや資格取得は、対応レベルを上げ、結果としてエンジニアとしての信用を勝ち取ることにつながる。」に「そう思う」と答えた方が84%
3. 「機械は情報の宝庫である。機械を見ると、お客様の業務の変化まで見えてくる。」に「そう思う」と答えた方は47%、「わからない」が40%
上記3で「わからない」と回答した方の背景として、「機械から業務の情報を得ようとしたことがない」「そのような事を考えたことがない」というものがあると推察されます。機械は直す対象であり、それ以上の関心がなかったと考えられます。
4. 「何よりプロらしく機械に対応していくことで、お客様は満足・感動する。」に「そう思う」と答えた方が47%、「そう思はない」は37%
回答率は分かれていますが、若干「そう思う」が多い傾向で、機械の対応をすることでお客様からの評価が出るという意識が高めであると推察できます。
しかしながら、プロらしく対応することは重要ですが、それだけがお客様の満足・感動につながるとは限らず、むしろ接客での態度が影響する事も増えてきていることを認識していく必要があります。
5. 「機械が壊れて苦情が起きたときは、機械が直るとお客様の感情は収まる。だから、少しでも早く機械を直しに向かった方がよい。」に「そう思う」と答えた方が66%、「そう思わない」が22%
機械を直すことを優先することは、エンジニアとしてのプライドではありますし、お客様にとっても、少しでも早く使えるようになることは望ましいことではあります。
しかし、機械が直るだけではお客様の怒りの感情は収まらないことが多々あります。
また、「お客様の感情を収めるために機械を早く直しに行く」という考えでは、お客様への対応がおざなりになるなど、態度が悪くなる恐れがあります。このことによりお客様が感情を害し「直せば良いというものではない!」という怒りに繋がる可能性があります。
II. 提案やアドバイスについて必要性を感じているものの、具体的な行動では躊躇や戸惑いが感じられる
提案活動をすることが「(お客様を無視した)良くない事」という認識は少なくなってきていると推察できます。お客様企業での提案活動の定着が進んでいると推察されます。
また、提案を受けるお客様にも、予防保全の考え方が定着してきていると推察されます。そのため、予防保全の提案やアドバイスをおこなう回数も増えてきていると考えられます。
このような活動は「壊れたから直す」という受け身の対応から、「壊れないように働きかける」能動的な対応へ、サービスエンジニアの意識が変革してきている事が起因していると考えられます。
1. 「新商品の紹介くらいはしてもよいが、販売までしようとすると、お客様との関係が悪くなる。」に「そう思う」と答えた方が10%、「そう思わない」は66%
2. 「機械が壊れないようにメンテナンスすることは、もちろんエンジニアの仕事であるが、壊れない環境(利用者・設置場所など)を作り上げることもエンジニアの仕事である。」に「そう思う」と答えた方が88%
3. 「提案の際に「お客様の業務が~のように良くなります」などという表現は、誇張であり、避けた方がよい。」に「そう思わない」と答えた方は41%、「わからない」は40%
上記3で、お客様の業務への影響を伝えることを否定する回答は19%と少ないですが、良し悪しを判断できていない人が40%と高い割合を占めています。
このことから、提案の際顧客メリットを訴求することの重要性を知らないサービスエンジニアが多いことが推察できます。
III. コミュニケーションの基本については、知識不足による不安が大きい
コミュニケーションに関する設問に対しては、回答が分かれる傾向があり、特に「わからない」を選ぶ割合も多い傾向が見られました。
「何が良いことなのか判断ができない」状態であると推察されます。
1. 「最初はそこそこの印象の方が、後ほど結果を出したときにお客様に一目置かれやすい。」に「そう思わない」と答えた方が61%、「わからない」は25%
2. 「初対面でも趣味などの個人的な話を交わせた方が親しみがわき、良い関係が築ける。」に「そう思う」と答えた方が57%、「わからない」は21%
3. 「コミュニケーション力は持って生まれたものであり、コミュニケーションが不向きな人もいる。」に「そう思う」と答えた方が55%、「そう思わない」は28%
コミュニケーション力は磨くことができる力です。しかし、「不向き」と決めつけてしまうと、磨くことをあきらめてしまうか、何か失敗すると不向きなことを理由にしてしまう可能性があります。
<まとめ> マネジメントのポイント
■あるべき姿を具体的に合意すること
調査結果にもでているように、お客様先での立ち居振る舞いについては、何が良いか判断できないエンジニアが多いという状況です。
このような状況下でより効果的に結果を出していくために、上司がメンバーと「何をしたら良いのか」具体的な行動についての合意が必要です。良くありがちな指示として、
・「CSアンケート結果を上げること」
・「報告の際には、分かりやすく説明すること」
・「保守契約を提案すること」
など、結果や曖昧な行動のみになることがあります。
・何をしたらCSアンケートの結果が上がるのか?
・「分かりやすく説明」とは、どのような対応か?
・提案の仕方は?タイミングは?
これらのことを、具体的に合意します。
上司が答えを指示するのではなく、メンバーが考え、上司がアドバイスをすることで、最終的に合意することが重要です。具体的な行動が分かると実践への原動力になります。
■小さな成功や成長を認めること
機械への関心が高かったサービスエンジニアが、お客様の業務などにまで目を向けて活動するようになるには、考え方、視点、発想(想像)、行動・・すべてに変化が必要になります。これらが上手くかみ合った際に、より良い結果が生まれるので、すぐに結果が出ない場合ももちろんあります。最終的に望んでいるような結果が出ていない時でも、何かしらの変化がサービスエンジニアには出ているはずで、その「いつもと違う」状況にサービスエンジニアが戸惑っていることも事実です。その戸惑いを上司がフォローすることが、実践の継続に繋がります。
良い意味でいつもと違う行動をとるメンバーがいたら、その変化を認めて褒めてください。
■提案活動は、会社都合ではなく、サービスエンジニアの本来業務である
提案活動を推進する企業も増えてきていますが、提案活動が「サービスエンジニアの本来業務である」ことをしっかりと伝えて、その上で指示をしてください。
「サービスエンジニアはお客様の傍にいるのだから、保守を取ること」のような指示では、会社都合で余計な仕事を押しつけられたという心理を誘発する可能性があります。
また、とりあえず提案をしても断られることが増える可能性もあります。すると「お客様は提案を望んでいない」という提案活動そのものへの否定的な心理に追い込んでしまう可能性があります。実際、調査結果でも提案に対しては、具体的な行動に対して躊躇が見られる結果になっています。提案活動は、お客様の業務をより良くするためにおこなうことであり、機械を通じてお客様の業務を支援しているサービスエンジニアの本来業務であることを、まず共有することが必要です。
■サービスエンジニアとしての意識調査の概要■
【調査名称】サービスエンジニア意識調査
【調査対象】ジェック主催「サービスエンジニアのための対人能力強化コース・ファン客創造編」及びジェックが担当した各社サービスエンジニア研修の受講者
【設問概要】本調査は、サービスエンジニアの「5つの意識」に関して、「そう思う」「わからない」「そうは思わない」の3択で回答を求めます。正解・不正解の結果により、ジェックが考える“エンジニアとしてもつべき考え方・意識および所属する組織の風土”の調査することを目的としています。
設問数50問。結果を5つの意識に分類し、各25点満点。
回答は、WEB形式またはマークシート形式
【調査時期】2011年2月~2015年12月に実施、データ数1,252名
□サービスエンジニアの「5つの意識」とは□
I.仕事の基本意識:お客様、自分の仕事、自分をしっかり見つめ、大切にしようとする意識
II.エンジニアの基本意識:サービスエンジニアとして誇りを持ち、組織を活用して実践しようとする
意識
III.専門技術に対する意識:プロのサービスエンジニアとして現状に甘えず、専門技術を磨き続けようとする意識
IV.対人能力に対する意識:コミュニケーションを大切にし、お客様の真の要望を汲み取り、適切な状況対応をしようとする意識
V.ファン客を創っていく意識:お客様の信頼関係を築きながら、新たなファン客をもどんどん増やそうとする意識
【発行元/著者】
株式会社ジェック サービス価値創造支援チーム 近藤美由紀
【本調査に関するお問い合わせ先】
株式会社ジェック 診断推進チーム(担当:中村・安藤 )
〒170-6020 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60ビル20階
TEL:03-3986-6365 FAX:03-3982-5894 E-mail:marketing_support@jecc-net.co.jp
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社ジェック http://www.jecc-net.co.jp / 4月12日発表・同社プレスリリースより転載)